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ホテルニューグランド  本館耐震改修工事

このプロジェクトは関東大震災後、国際港都市である横浜における外国人向けホテルとして昭和2年に竣工した、横浜のリージェントホテルとして市民に長く愛されているクラシックホテルの改修工事。
その先人たちの思い・美学を受け継ぎ、歴史的価値を保存・継承するために、今後50年・100年先を見据えた施設づくりを目的に改修工事を行った。内外観の姿、素材を変えることなく、建物の耐震性・機能向上を図ることであることをコンセプトとしている。

所在地 神奈川県横浜市中区山下町
発注者 (株)ホテル、ニューグランド
延床面積 9,994.602m2
構造・階数 SRC造+RC造 一部S造
地上6階 屋上1階
工期 1期:2014年6月~2014年 9月(本館)
2期:2016年6月~2016年10月(本館)
3期(予定):2018年2月~2019年4月(新館)

「歴史的価値の保存・継承」と「耐震化」の併立を実現する漆喰天井の改修技術

本プロジェクトでは、歴史的建造物の保存部位に指定されている伝統ある内外観を維持しつつ安全性を高めるため、現代の建築では少なくなった漆喰天井の耐震対策と躯体の耐震補強が主眼となった。2階宴会場とロビーの天井は、国土交通省告示に規定する「特定天井」には該当しないがお客様と従業員の安全を考え耐震対策を行うこととなる。漆喰天井を壊して新しく造り替えるのではなく当時の工法と材料を継承しつつ耐震化を図る、という大命題の回答として下記のような工法を新たに開発した。開発の過程では、既存調査・工法検討・実験と解析・施工試験を何度も繰返し、歴史的建築物の一般的な保存の考え方を確認しながら技術的確証を得て実施工とした。 建物の耐震補強については、歴史的価値の保存・継承の方針に鑑み、補強部材の設置位置を慎重に選定している。改修にあたっては耐震改修促進法にもとづく横浜市の耐震改修計画認定を取得し、全ての工事が完了した後、横浜市耐震改修済証と基準適合認定建築物(あん震マーク)の認定を取得し来館者への安全安心をアピールしている。 (松原 正芳/清水建設)

既存天井の事前現況調査

喰天井については図面資料が全く無かったため、室内からの3次元点群測量やX線透過撮影、コアサンプリングなどの手法を活用し現況を数値化した。

井内の人が入れない部分については、技術研究所で開発した3Dスキャナーを搭載した遠隔操作ロボットを活用。点群測量結果からBIMデータを作成し、既存部材の位置を確認。

改修方法の検討

天井面

下地処理した天井面に補強用メッシュシートを貼り付け、天井を一体化。

生かし取りしたレリーフは補強・補修した後、当時と同じように石膏接着およびトンボを用いて留め付け、復旧する。現代の最先端の素材を使用しているが、取付工法は当時と同じ考え方を継承している。

天井裏

部固定金物により天井を周辺躯体と一体化。メッシュシートと貫通ボルトにより天井を一体化すると同時にワイヤーにより落下に対するフェイルセーフを図っている(特許出願中)。BIMを活用し、全スパンにわたって補強位置を事前に検証した。

実証実験

天井の一部を正確に再現した試験体に大規模地震を想定した振動を加え、設計通りの性能を保有していることを確認。

施工

生かし取りした石膏レリーフ。すべてのパーツを慎重に取外し、裏打ち補強・補修をした後に再取付。

天井内の端部固定金物、補強ワイヤーとアングルピース。

レリーフの復旧取付け。レーザー計測によって既存設置位置をプロットしてから既存と同じ位置に取付けた。