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大本山永平寺「親禅の宿」柏樹關

柏樹關は、永平寺の準聖地である門前に建設する宿泊施設である。 旅館と宿坊の中間に位置する「親禅の宿」をコンセプトに、坐禅など体験を通じて、禅の心に触れることができる建築を目指した。深山幽谷の豊かな自然を生かし、伝統美の継承、禅の空間、陰翳礼賛、地産地消というキーワードで展開しながら設計を進め、永平寺参道の賑わいの回帰と、地方創生を目指した。

所在地 福井県吉田郡永平寺町
建築主 大本山永平寺
延床面積 1,976.31m2
構造・階数 木造、RC造/地上3階
工期 2018年3月~2019年5月

官・寺一体となった地方創生 

永平寺は福井県を代表する観光地であるが、近年参拝客が激減しピーク時の年間約150万人から、約50万人にまで落ち込んでいる。そこで、福井県、永平寺町、大本山永平寺が三者共同の事業「永平寺門前再構築プロジェクト」を発足、協力・連携して門前再構築を図り「地方創生」を推進することとなった。永平寺に残存する1600年代の古地図に基づき、県は永平寺川の河川改修工事、永平寺町は参道改修工事を担当。永平寺は、門前に宿泊施設を建設することとなった。


永平寺境内と門前

参道整備と柏樹關

配置図

伝統美の継承

渡水橋を渡った先にある玄関棟は、永平寺大庫院のイメージを踏襲した木造建築とし、エントランスホールは、伝統的な木架構を見せた開放的な空間としている。ホールの正面には、大庫院から魚鼓を移設しシンボルとしている。 RC造の宿泊棟についても、瓦屋根、庇、格子、障子など和風のデザインを継承した。               


渡水橋から見た玄関棟          

玄関棟のエントランスホール(正面が魚鼓)

玄関棟出入口

参道から見た宿泊棟

禅の空間

道元禅師の歌「峰の色 渓のひびきも皆ながら わが釈迦牟尼仏の声とすがたと」にあるように、建物の中にいても山々の峰の色や谷川の響きが感じ取れることが「禅の空間」と考え、建築と自然の一体化を図り、「親禅の宿」を目指した。18室の客室はすべて永平寺川に面して設け、川のせせらぎや、山並みに触れることが出来るようにしている。また玄関棟にある「開也の間」では、禅の庭を眺めながら、坐禅や写経を体験できる。


開也の間から「禅の庭」を見る

周辺の自然と調和する「禅の庭」

道元禅師の生涯を伝える禅ギャラリー
永平寺川のせせらぎが聞こえる客室

陰翳礼賛

玄関ホール、客室、廊下、大浴場などの内部空間は、日本人の美意識について論じた谷崎潤一郎の「陰翳礼賛」の思想の元、自然光とのバランスを考慮し、宿泊施設として必要な明るさを確保しながら、陰翳を生かした照明計画としている。清らかな自然光と、廻り込む柔らかな光により、深みのある陰影を生みだし、禅の心に触れる体験を演出した。


自然光の天井からの回り込みを生かした客室          

陰翳を生かした宿泊棟廊下         

陰と陽の対比により深山幽谷を表現した大浴場         

地産地消

木造建築の構造材、造作材、家具、サインには、永平寺杉などご本山からの支給材をそれぞれの特性を生かしながら適材適所に使用した。木材以外にも、越前瓦(屋根)、越前焼(洗面器)、越前和紙(客室アート)、越前漆器(客室サイン)を建物の随所に使用し、徹底的な地産地消により地域貢献を図った。


食事処「水仙」:格子壁は杉、天井ルーバーは桧、共に永平寺産

カウンター天板は永平寺銀杏

越前和紙(漆塗)のフロントカウンター

越前漆器の客室サイン         

越前焼の洗面器(客室)         

客室飾り棚の越前和紙のアート         

越前瓦の屋根