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共同印刷株式会社 本社

創業の地である文京区小石川に2022年4月より稼働した共同印刷の本社である。周囲には桜の名所である播磨坂や小石川植物園に代表される景観豊かな土地が広がる。敷地内の建物群は、80年来当社が設計施工を担当している。
新本社建替計画は、擁壁と既存建物の改修、居ながら工事を行うための部分的な解体工事といった複雑な施工課題に対し、当社の総合力で応えたプロジェクト。ロングライフな空間と骨格、共同印刷ならではのワークプレイスを構築し、同社の創業時のスピリットを継承した次の100年を生き抜く新本社を完成させた。

所在地 東京都文京区
建築主 共同印刷株式会社
延床面積 32,986.74m2
構造・階数 RC造一部S造/地上7階・塔屋1階
工期 2020年3月~
2022年3月(Ⅰ期工事)
2023年11月(Ⅱ期工事)

歴史ある創業地、事業再編と企業資産再構築に向けて

既存の建物群は、昭和初期には“東洋一の印刷デパート”と称され、直線的な近代建築である本館と特徴的な円弧形状の1号館は地域の象徴的な建物であり、建物群が面する千川通りが通称「共同印刷通り」と呼ばれるほどの存在感を放っていた。新本社には当時の面影を残しつつ、適切な余地と緑地、遊休地を創出し、事業再編と企業資産の再構築に寄与することが求められた。


昭和初期植物園より望む         

  • 直線的な近代建築の本館

  • 特徴的な円弧形状の1号館

(出典:共同印刷百二十年史)

ロングライフな空間と骨格を目指して

新本社の設計においては、少なくともこれまでの80年と同等の時間を利用いただく建築を目指す覚悟で臨んだ。あえて高層化を避け、既存緑地を残すように描いた外壁面のカーブと、水平に広がる列柱の連続により、外観の存在感を高め、将来の人員増を見据えた広々としたオフィスと免震構造によるロングライフな骨格と空間構成を追求した。中央を吹抜空間が貫き、研究開発エリアや食堂も備えたダイナミックな階構成の建築である。

建備一体の外装システム

建築を覆う外装は、1.8mピッチに配置され、7.2mごとに鉛直荷重を支持する外殻柱「外装兼用PCa柱」で構成している。ガラス面までの奥行きを確保した台形形状のファサードは眺望を確保しつつ、外部からの熱負荷を効率的に低減。厚みの薄いPCCW(Precast Concrete Curtain Wall)の裏側スペースはダクトを立下げ、空調空気をブラインド外側の床下から吹く「簡易エアフローウィンドウシステム」によるペリメータレス化を図っている。


コラムレスなペリメーター部

柱型のない執務室空間

外装兼用PCa柱により、室内側はコラムレスな執務室空間となっており、組織割の変化にも柔軟に適応可能なオフィス空間となっている。放射空調とデシカント空調機による床吹出空調、簡易エアフローなどの工夫によりZEB Ready を実現し、経済産業省のZEBリーディングオーナー登録を受けた民間企業の本社建築としては国内最大規模である。

多様なつながりを生み出す”CORE”

建物中央の空間は、コーポレートブランドである「TOMOWEL」(ともに良い関係を築く)という信念のもと、組織の壁を突き破り、多様なつながりを生み出す”CORE”となるよう計画。基準階は「パス内蔵分散コア」により、無駄な専有通路を最小化し、360°どこでも同様な環境の構築が可能なオフィス空間を実現している。


コアとなる空間は、互いがよく見えるだけではなく、より変化に富むことに価値があると考え、デジタルデザインにて視線交錯量とその変化量を算出し、補足的に効果の検証を行った。

125年の時を超え、緑豊かな小石川の新たなシンボルへ

創業125年の共同印刷本社として、重要な知識や情報を伝達していく、印刷業の本質を建築の空間にも表現することを目論んだ。創業時から利用されてきたもの、企業理念が込められた貴重品を調査し、新本社への転用、活用を行った。


(出典:共同印刷百二十年史)

旧1号館の上部に刻印された日本印刷史上の人物(称徳天皇・吉備真備)が最先端の印刷工程を見守るという構図のレリーフと旧本館のランタンと鉄製扉。
風雪によって朽ちることがないよう、1階のホワイエに設置した。

新本社の外部空間からは播磨坂や小石川植物園を望ことができ、都心部でありながら豊かな緑が残された大変貴重な環境であることを再認識させられる。それらの豊かな環境と連続するように、地上部と屋上部を合わせて敷地面積の15%以上という広大な緑地を創出する計画を行った。