食品工場

株式会社お菓子の香梅様 阿蘇西原工場

安心・安全品質の合理化された食品工場
建設地

熊本県阿蘇郡西原村

竣工 2019年1月
延床面積 6,336m2
生産・出荷品目 創作和菓子、洋菓子
阿蘇西原工場の生産品目
  • 誉の陣太鼓
  • 武者がえし
  • 特製陣太鼓
  • 特製陣太鼓抹茶
  • どら焼
  • 肥後五十四万石
  • 銘菓本丸
  • ザビエルの誉
  • 加勢以多(かせいた)
  • あかねさす
  • やぶれ饅頭
お客様のご紹介
阿蘇山麓の自然

昭和24年に創業されたお菓子の香梅様は文化都市・熊本にしっかりと根を張り 全国のお客様に親しまれています。特許取得の「紙缶詰製法」をはじめ、 独自の機械・製法により、「誉の陣太鼓」「武者がえし」を代表とする他社 にはまねできない製品を生み出しています。お菓子の香梅の阿蘇西原工場は、 阿蘇山麓の自然に抱かれた地にあり、きれいな空気と、日本屈指の名水で ある阿蘇の豊富な伏流水に恵まれ、厳選した素材の風味を生かした美味しい お菓子を送り出しています。
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お客様と二人三脚で乗り越えた熊本地震

1996年2月、阿蘇西原工場の増築棟が清水建設のフルタンキープロジェクトとして竣工しました。
以後、お客様は定期的なシミズとの交流を継続しながら、生産設備の入れ替え、新製品の対応など、時代の流れに沿って工場を運用されていました。順調に生産を続けていたなか、2016年4月、震度7が2回発生した熊本地震により、阿蘇西原工場が被災します。製餡設備の架台がゆがみ、生産工場の天井が崩壊。重さ20トンの釜は倒れ、全長11メートルのオーブンが数メートル動いていました。工場は大規模半壊状態となり稼働停止を余儀なくされました。

2016年熊本地震

シミズは余震が続く中、被災状況確認のため工場へ急行し、応急対応を実施しました。
まずは工場の被災状況をくまなく調査し、損壊の程度や復旧対策案をリストアップし、対応の優先順位を決めることから始めました。そして寸断されてしまった全てのユーティリティを復旧させ、一つ一つ安全を確認しながら機械の稼働を確認し、お客様と膝を突き合わせ工場再開に向けて奔走しました。「とにかく1日でも早く生産を再開したい」というお客様の想いを受けて、お客様・建築・エンジニアリングの三位一体で生産再開にこぎつけました。

トータルエンジニアリングでお客様の想いを実現

2016年8月、被災した工場の横に新工場を建設するプロジェクトが始まりました。
新工場建設においては、単なる再建に留まらず、これまでお客様が悩まれていたいくつもの課題を解決することに挑戦しました。
その一つに、釜洗浄の排水問題がありました。
和菓子の命である「餡」。阿蘇西原工場では巨大な釜で煮詰めて製造します。
出来上がった餡を次の工程へと送り出したあと、巨大な釜は反転して洗浄します。
そのため、既存工場では大量の水が床面に排水されていました。食品衛生の観点から次の想いが伝えられました。

「床面に水を撒くことなく排水したい」
「清掃性が悪く、虫発生源になりやすい排水溝は避けたい」
「高温多湿の作業環境を、作業者に快適な空間に変えたい」


お客様の想いをシミズは設計・施工の一貫対応で応えました。

生産設備と建築取合、徹底した設計検討

異なる形状の釜に合わせた排水桝設計と、実機運用の様子

「反転した釜から排水される位置に排水桝を設置する」非常にシンプルな解決策が採用されましたが、実現するには非常に多くの調整が必要です。生産設備を設置する前に施行してしまう排水桝の位置・サイズを決める必要があります。
シミズは大きさ・サイズが異なる釜の排水条件をすべて検討し、適切な桝条件を設定しました。
ただし生産設備から想定した桝条件は、大きさが不揃いで見栄えが悪くなります。そのため、桝サイズを統合することにしました。

お客様の想いを再現し、確認する

排水桝の位置を決めるだけであっても、調整する関係者は多岐にわたります。
お客様、機械メーカーをはじめ意匠設計、設備設計、施工担当、設備施工関係会社などに、
食品衛生改善の意図と運用を考えた正確な情報を共有する必要があります。

関係各所と調整・確認を繰り返し、食品品質を遵守するお客様の想いと、
シミズが知見として持つ使い勝手の良さの両立を追求し、図面に落とし込んでいきました。

三現主義(現場・現物・現実)

完成時には実際に釜を反転排水して試運転を行い、お客様と共に 洗浄の作業性や排水桝の状況確認を行い、長年追求してきた衛生的 な作業環境の実現を一緒に喜びました。
これからもシミズは三現主義(現場・現物・現実)を重視し、 設計施工でお客様の思いを実現していきます。

お客様の声

2019年5月、阿蘇西原工場が竣工しました。
従来工場と同等の生産能力を確保しながら、生産性、製品品質、そして環境性能を向上した工場になりました。
この新工場は震災復興のシンボルとして地域に貢献するとともに、全国のお客様に「くつろぎのごちそう」を届けています。

経営を支える主力工場を復活させることは私達にとって失敗の許されない重大な仕事でした。
そのような状況でシミズさんからいただく提案は経験や実績に基づき、我々の要望も取り入れ た説得力の高い設計プランでした。工期を守る力に圧倒され、我々の立場を理解されていることがひしひしと伝わってきました。震災から復旧・復興と3年間を共にし、人との関わりを大切にするシミズスタイルは我々「ものづくり」の世界で働く者として大変勉強になりました。 これからも工場を維持管理していくうえで頼りにしています。本当にありがとうございました。
株式会社お菓子の香梅
取締役 製造部長
角谷 亮司 様