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子どもたちに誇れるしごと
Achievements 05

ビジネスは大気圏を超えて

―清水建設の宇宙事業―

Project Outline

使い勝手のいい
宇宙輸送サービスの実現を目指す

世界中で民間企業による宇宙活用が急速に進んでいる。インターネット網の構築や気象観測、農地や海水温の監視、都市計画の立案。さまざまな目的で小型衛星が打ち上げられており、今や宇宙は民間ビジネスのフィールドになりつつある。
それに伴い問題となっているのが、小型衛星を打ち上げる小型ロケットの不足だ。大型衛星の打ち上げロケットに相乗りする方法もあるが、その場合、打ち上げスケジュールも打ち上げる軌道も大型衛星が最優先。小型衛星の事業者は好きな時期に、飛ばしたい軌道に打ち上げられない悩みを抱え続けていた。
そのような中、キヤノン電子、IHIエアロスペース、清水建設、日本政策投資銀行の4社共同で、小型衛星”専用”ロケットの開発、打ち上げの事業化の検討が開始された。

# 01

小型ロケットの
打ち上げ事業化に向け
「スペースワン株式会社」が始動

4社の目的は、国内外でさらなる利用拡大が見込まれる小型衛星の打ち上げ需要の獲得だ。その前段階として、そもそも小型衛星専用ロケットの開発、打ち上げが事業として成立するかを検証する必要があった。約1年にわたって入念に検討を重ねた結果、十分に事業性があると判断。2018年7月、小型ロケットによる商業宇宙輸送サービスの提供を目指し、4社の共同出資で「スペースワン株式会社(以下、スペースワン)」が設立された。
スペースワンの強みは、小型衛星を衛星事業者の希望する時期に、希望する軌道にダイレクトに届けられること。“専用の発射場”で、小型ロケットを打ち上げることで、利便性の高い宇宙輸送サービスを提供する。しかし、即応性を強みとする以上、ロケットの組み立てから打ち上げまでを容易かつ、スムーズに行えなければならない。
それに大きく寄与するのが固体燃料の活用だ。液体燃料を用いる場合、ロケットを組み立てた後、打ち上げ直前に燃料を充填する必要がある。しかし、固体燃料を用いれば、燃料を充填した状態で保管が可能。発射場で組み立ててから発射するまで最短で7日という驚異的なスピードを実現できる。

# 02

日本初の民間発射場
「スペースポート紀伊」が竣工

異業種の4社が、それぞれの知見とノウハウを提供、共有して開発に取り組む宇宙事業。小型ロケットの組み立てと打ち上げを行う発射場の建設計画、施工、維持管理において、清水建設は極めて重要な役割を担っている。
発射場建設のためにまず必要なことが、”スペースワン専用発射場”の建設地の確保だ。ロケット発射のためにはいくつもの条件に合致している必要がある。南方に陸地や島がないこと、陸路での輸送に適していること、建設予定地の周辺に人家がないこと、そして、地元住民に歓迎されることだ。そのため、スペースワンの前身となる企画会社の段階から、発射場の候補地について調査を行い、和歌山県、同県串本町および那智勝浦町の3自治体から、誘致の要請を受けた。その後、本州の最南端に位置し発射場の条件に合致するだけでなく、ロケット打ち上げに対する地域全体の熱意が極めて高いことから、串本町田原地区が建設予定地に決定。2019年11月には串本町で起工式を執り行い、発射場は「スペースポート紀伊(SPK)」と命名され、2022年3月から運用が開始された。
清水建設の役割はSPKの施工のみに留まらない。射場施設の維持管理をシミズグループが担っていることに加え、ロケット開発の豊富な知識を有する社員数名がスペースワンに出向し事業運営に大きく貢献している。
また、専用ロケットはKii-based Advanced & Instant ROcket Systemの頭文字を取り「カイロス(KAIROS)」と名付けられた。カイロスとは、ギリシア神話に登場する時間の神の名前であり、「チャンス(好機)」を表すギリシア語でもある。“契約から打ち上げまでを世界最短と世界最高の打ち上げ頻度”を目指すスペースワンの、世界的に増加する小型衛星の打ち上げニーズに即時に対応し、宇宙輸送サービス事業を成功に導くという強い想いを示すこれ以上ない機体名だ。

# 03

清水建設の長年の悲願
宇宙事業の成功に向けて 
~建設事業の枠を超える~

そして迎えた2024年3月、関係者そして地域全体の想いをのせて打ち上げられた初号機は数秒後に自律安全装置が作動し飛行を中断するという結果に終わった。
2024年12月、初号機打ち上げから9か月という驚異的なスピードで2号機の打ち上げに漕ぎつけた。上空の強風による2度の延期を経て12月18日、ついにリフトオフ。宇宙空間といわれる上空110km超まで到達したものの、衛星の軌道投入には至らず再び飛行中断となった。
ロケットの打ち上げは少なからず地域振興にも繋がると期待する。KAIROSのKは紀伊(Kii)の頭文字。地元住民に愛着を持ってほしいとの期待がうかがい知れる。打ち上げの度にパブリックビューイングイベントが開催され、関連グッズもお披露目されるなど、地域全体が「ロケット打ち上げの地」としての町おこしに積極的である。発射場周辺はもともと風光明媚な場所として知られるだけに、ロケット打ち上げをきっかけに訪れる人たちにも、地域の魅力を存分に訴求できるだろう。

清水建設が長い歴史の中で培ってきたノウハウは、今や宇宙という領域にまで及ぶことになった。宇宙事業を未来に向けての“シミズ・ドリーム”の一つとして位置付け、取り組んできた約40年という長い年月。今や“シミズ・ドリーム”は夢物語ではなくなった。リアルな事柄、達成すべきプロジェクトとして、清水建設は現在進行形で宇宙事業にまい進しているのだ。