Interview
学生のアイデアを没入空間で形に。
松山大学情報学部がVR-Commonsで描く次世代の学び
松山大学 情報学部長
檀 裕也様(写真左)
松山大学 情報学部2025年度入学
濱松 麻里亜様(写真中央)、梶原 瑠菜様(写真右)
2025年4月に開設された松山大学情報学部では、教育・研究の中核を担う設備として、清水建設の体感型共同学習システム「VR-Commons」を導入しました。全国で初めてLEDビジョンを採用したVR-Commonsでは、学生が制作したゲームや映像コンテンツを、実際の没入空間で体験しながら学ぶことができます。
今回は、情報学部教授の檀裕也氏と学生のお二人に、LEDビジョン型VR-Commonsを採用した背景や教育・研究における活用方法、学生の反応、今後の展望についてお話を伺いました。
- VR-Commonsの導入には、どのような思いがあったのでしょうか。
-
檀先生:松山大学情報学部は、2025年4月に開設された新しい学部です。設立準備を進める中で、「他大学にはない学びの環境をつくりたい」という構想が生まれ、その候補の一つとしてVR-Commonsを知りました。
以前からヘッドマウントディスプレイ(HMD)を使用したVRコンテンツの開発は進めていましたが、一度に一人しか体験できない点に課題を感じていました。一方でVR-Commonsは、複数人が同じ空間を共有しながら体験できる点に魅力を感じました。
さらに、学生が制作したコンテンツをその場ですぐに表示できる点にも、大きな魅力を感じました。これまで学生の作品はパソコンの画面上で見ることがほとんどでしたが、「VR-Commons」では空間全体を活用して表現できます。学生の発想力や創造性をより引き出せる環境になると考え、導入を決定しました。
- 松山大学では、プロジェクター方式ではなくLEDビジョン方式を採用されています。その理由を教えてください。
-
檀先生:LEDビジョンは、より高い没入感を体感できるところが大きな強みだと思います。
プロジェクター方式では、人が立つとどうしても影が映り込んでしまいます。例えば、学生が床面にキャラクターやエフェクトを配置しても、体験者の影によって隠れてしまうと、没入感が損なわれる可能性があります。
その点、LEDビジョンでは影が映り込みません。学生が細部までこだわって制作したコンテンツを、意図したとおりに表現できます。さらに、床面と壁面の4面に映し出すことで、コンテンツの世界観により深く没入できます。
LEDビジョンは明るく、プロジェクターでは鮮明に表現することが難しい黒色も、くっきりと再現できます。また、耐久性やメンテナンス性に優れている点も特長です。教育現場では、長期間にわたって安定的に使用できることも重要であり、その点でも安心感がありました。
映像を見るだけでなく、「空間全体で体験する」という「VR-Commons」の魅力を最大限に引き出せる点は、LEDビジョン版ならではの大きな強みだと思います。
- 現在はどのような授業や研究で活用されていますか。
-
檀先生:授業では、1年生の基礎ゼミから活用しています。
まずは生成AIを活用してブラウザ上で簡単なアニメーションや映像を制作し、それを「VR-Commons」に映し出します。自分が制作した作品が空間いっぱいに表示される体験は、学生にとって非常にインパクトが大きく、学習へのモチベーション向上にもつながっているようです。
また、3DCGやゲーム制作、360度映像などの授業でも活用しています。学生は、授業で学んだ技術を生かしながら、「VR-Commons」でどのような表現ができるのかを考え、試行錯誤を重ねています。
オープンキャンパスでは体験コンテンツとしても活用しており、高校生だけでなく、保護者の方々からも驚きの声をいただいています。学生が制作した映像をご覧になり、「これを学生が制作したのですか」と驚かれる方も多くいらっしゃいます。
実際に体験していただくことで、情報学部でどのような学びが得られるのかを、より具体的にイメージしていただけるようになったと感じています。
- 学生の皆さんは、VR-Commonsをどのように活用していますか。
-
梶原さん:私は現在、ゲーム制作に取り組んでいます。プログラミングや3Dモデルの制作などを行いながら、一つのコンテンツとして形にしています。
開発の過程では、AIも活用しています。プログラムの設計を考えたり、コードを作成したりする際にAIを活用することで、まだ知識に自信がなくても、やりたいことを表現できます。
自分で制作した3DモデルをLEDビジョンに映し出したときは、とても感動しました。
「もっと細部まで作り込みたい」「もっと面白い演出を加えてみたい」と自然に思うようになり、制作へのモチベーションも高まりました。
今後はゲームだけでなく、360度映像やライブ映像なども取り入れ、「VR-Commons」ならではの没入感を生かしたコンテンツの制作にも挑戦したいと思っています。
濱松さん:私は、ゲームのUIや操作方法について研究しており、身体の動きを認識してゲームを操作できる仕組みの開発に取り組んでいます。
四方を映像に囲まれた空間は、普段なかなか体験できるものではないため、とても新鮮でした。「この空間でゲームを制作したら面白そうだ」と感じました。
一般的なゲームではコントローラーを使って操作しますが、「VR-Commons」では、身体全体を使った遊び方を考えることができます。現在は、日本デジタルゲーム学会で発表するために、空から降ってくるおむすびをキャッチできるゲームのUI部分を開発しています。今後は、剣を振る動きやアクションゲームなど、より体験型のコンテンツ制作にも挑戦したいと思っています。
- VR-Commonsの導入によって、学生の学びにはどのような変化がありましたか。
-
檀先生:最も大きな変化は、学生のモチベーション向上です。
学生は、自分が制作した作品が実際の空間いっぱいに映し出されることで、「もっと良くしたい」「もっと面白くしたい」と自然に考えるようになります。
また、パソコンの画面だけでは気づきにくかった見え方や迫力、空間全体とのバランスなども、その場で確認できます。そのため、「ここを改善しよう」「次はこのような表現にも挑戦してみよう」と考え、作品をブラッシュアップするサイクルが自然と生まれています。
梶原さん:友人同士で作品を見せ合う機会も多くあります。「ここが面白い」「このようにしたら、もっと良くなる」といった意見をもらうことで、自分では思いつかなかったアイデアが生まれることもあります。
作品を制作するだけでなく、実際に体験してもらい、その反応を直接確認できる点も、「VR-Commons」ならではの魅力だと思います。
濱松さん:オープンキャンパスなどで、高校生や来場者の方々が楽しそうに体験している様子を見ると、「もっと面白いものを作りたい」という気持ちが湧いてきます。
自分たちが制作したコンテンツによって誰かが笑顔になったり、驚いたりしてくれることは、とても嬉しいですね。
檀先生:「VR-Commons」は、一人で体験するVRとは異なり、複数人で同じ空間を共有できます。
学生同士で作品について議論したり、アイデアを出し合ったりしながら改良を重ねられるため、新たな発想も生まれやすくなっています。
教育という観点から見ても、この「共有しながら学べる」という点には、創発という観点からも、非常に大きな価値があると感じています。
- 今後、VR-Commonsをどのように発展させていきたいですか。
-
梶原さん:360度映像やライブ映像なども取り入れながら、より没入感のあるコンテンツを制作してみたいと考えています。VR-Commonsだからこそ体験できる作品を、これからも増やしていきたいです。
濱松さん:ボディトラッキングの精度をさらに高めたり、さまざまなセンサーと組み合わせたりすることで、新たなインタラクションの実現にも挑戦したいと考えています。
「VR-Commons」は、自由な発想を形にできる環境です。これからも新たな体験を生み出していきたいと思っています。
檀先生:「VR-Commons」は、完成されたシステムを利用するための設備ではなく、新たな表現や技術を生み出すための環境だと考えています。大学は、企業や自治体から「このような課題がある」という相談を受けることもあって、既存の技術を組み合わせただけでは解決できないことに対して、新しい研究テーマを見出すことがあります。「VR-Commons」を活用し、さまざまな社会課題の解決に貢献していきたいと考えています。
今後は、ゲームや映像にとどまらず、モーションキャプチャや身体動作の解析、AIとの連携など、さまざまな研究分野への活用を広げていきたいと考えています。
また、他大学や他学部とつないだり、離れた場所にいる人同士でグループワークを行ったりするなど、単なるオンライン環境ではなく、「周りに人がいる」状況で学びを深められる場にしていきたいと考えています。
情報技術は日々進化しています。だからこそ、学生にはまず現在の技術を楽しみながら活用してもらい、その先にある新たな価値や表現を自ら考え、社会の課題を解決できる人材へと成長してほしいと願っています。
「VR-Commons」は、そうした挑戦を支える重要な学びの場です。ここから学生たちの自由な発想や新たなアイデアが生まれ、社会に還元されていくことを期待しています。






