シミズのエンジニアリング > 情報 > 情報エンジニアリングの仕事 > BCP > 特許取得の解析アルゴリズムで高精度判定!安震モニタリングの魅力とは?

カテゴリー選択

  • BCP

特許取得の解析アルゴリズムで高精度判定!安震モニタリングの魅力とは?

地震大国である日本において、地震発生後の建物の安全性確保は常に重要な課題です。この課題に対し、清水建設が開発した「安震モニタリング」は、特許取得の解析アルゴリズムにより、地震直後の建物の健全性を高精度で自動判定し、迅速な対応を可能にする画期的なシステムとして注目されています。今回は、安震モニタリングの仕組み、導入メリット、そして今後の展望について、その魅力に迫ります。

技術研究所安全安心技術センター
災害レジリエンスグループ
主任研究員

岡田 敬一 さん

『安震モニタリング』とは何ですか?

安震モニタリングとは、地震発生直後に建物の健全性を自動で判定し、その結果を建物の管理者や使用者に通知するシステムです。建物に設置したセンサーで常時揺れを計測しており、震度3程度以上を目安としてデータ処理を行い、判定結果を通知する仕組みになっています。人間が定期的に健康診断を受けるように、建物もこのシステムによって「健康診断」を受けているとイメージしていただけると分かりやすいかと思います。

判定画面イメージ

開発のきっかけや歴史を教えてください。

1995年の阪神・淡路大震災です。当時は建物がどれほど揺れ、どの程度安全なのかをすぐに把握できず、確認に多くの時間と労力がかかりました。こうした経験から、地震直後に建物の状態を迅速かつ客観的に判断できる仕組みの必要性を感じ、研究開発を進めました。
2000年ごろから建物にセンサーを取り付けて、地震の揺れを計測するモニタリングシステムの構築に取り組みました。2011年の東日本大震災を経て、リアルタイムに被災度判定ができる機能を開発し、2012年に製品版をリリースしました。

どのように揺れを感知していますか?

安震モニタリングでは、建物の床など数箇所に設置した加速度センサーで、建物の揺れを記録します。そのデータをコンピューターが解析し、建物がどれくらい変形したか、どこに負担がかかったかなどを推定します。そして、建物ごとにあらかじめ設定した安全の基準値(判定クライテリア)と照らし合わせ、数分以内に健全性を判定します。
判定結果は、パソコンのブラウザで確認できるほか、メールでも通知されます。さらに、クラウドサービスを通じてインターネット経由で、時間や場所を問わず建物の状態を確認できます。

安震モニタリングの構成イメージ

導入のメリットを教えてください。

地震後すぐに建物の安全性を把握できるため、管理者は客観的な判定情報をもとに、避難誘導や立ち入り制限、復旧計画などの判断を迅速に行えます。オフィスであれば従業員の帰館可否、商業施設であれば営業再開の判断を早めることができ、二次災害のリスク低減や事業の早期再開が期待できます。また、安震モニタリングの判定結果を館内放送やサイネージなどで共有することで、入居者やテナントにも状況を速やかに伝えられ、利用者の安心感につながります。
さらに、建物の寿命を延ばすことにも役立ちます。地震による損傷は、目に見える大きなものだけではありません。構造の内部に小さなひび割れなどとして発生することもあります。安震モニタリングは、そうした目に見えにくい小さな損傷も、常時の観測によって早期に捉えることができます。損傷を早期発見して適切な補修を行うことで、損傷が大きくなるのを防ぎ、結果として建物を長く安全に使い続けることにつながります。

安震モニタリングならではの特徴はありますか?

安震モニタリングの大きな特徴は、限られた数のセンサーで建物全体の揺れ(応答)を非常に高い精度で推定できる点です。『ベイズ更新』という独自の技術を用いることで、解析モデルを常に最新の状態に更新し、現実の建物の揺れをさらに高い精度で推定できます。この解析技術は特許を取得しているため、他社にはない強みです。すべての階にセンサーを設置しなくても、建物の各階の状況を詳細に把握できます。
また、弊社がこれまで建物の設計や施工を通じて培ってきた構造の知見と、地震工学の技術を組み合わせることで、精度の高い判定を実現しています。さらに、第三者機関による技術認証を取得しており、お客様に安心してご利用いただくことができます。

どんな建物にも導入できますか?

新築はもちろん、既存の建物にも導入可能です。建物の規模や構造に応じて、最適なセンサーの配置や数をご提案しています。
現在は、BCPへの意識が高い企業や、自社で建物を所有・管理している企業を中心に導入が進んでいます。導入事例としては、オフィスビルが多く、その他に工場やホテルなどもあります。建物の規模を問わず導入可能ですが、利用者が多く影響範囲の大きい超高層ビルでは、特に有効性が高いといえます。

使い勝手について、開発で意識したことはありますか?

専門知識がなくても直感的に状況を把握できるよう、分かりやすいUIを意識しています。
地震後の現場では迅速な判断が求められるため、複雑な解析結果をそのまま表示するのではなく、安全かどうかがひと目で分かる設計にしています。そのため、現場の担当者でもすぐに使えることを重視して開発しました。実際に利用されている方からも「見るべき項目が絞られて分かりやすい」といった声をいただいています。

判定結果画面

建物OS『DX-core』との連携は可能ですか?

はい、可能です。実際に一部の建物では、DX-Coreのダッシュボード上で安震モニタリングの判定結果を表示し、安全・注意・危険といった状況がひと目で分かる形で連携しています。さらに、サイネージに表示して来館者向けにも情報を共有している事例もあり、警告内容を分かりやすく伝える仕組みとして活用されています。

DX-Core画面イメージ

今後のアップデート予定はありますか?

今後は、建物の損傷評価の精度をさらに高める方向で、AI技術の活用を進めていきたいと考えています。ただ、いきなり高度な損傷推定を行うのではなく、まずはセンサーから入力されるデータの精度向上が重要だと考えています。地震ではない揺れ・誤情報をAIで判別し、利用者に「地震ではありません」と通知する機能の追加も検討しています。
また、風害や経年劣化への対応についても視野に入れています。例えば台風通過時には、建物の揺れによる居住性の問題が生じることがありますが、そうした揺れのデータも取得しています。今後はこうしたデータの活用や提供方法を広げていくことも検討しています。

安震モニタリングが普及することで、社会はどのように変わっていくと思いますか?

安震モニタリングが広く普及することで、地震に対する社会全体のレジリエンス(回復力)が格段に向上すると考えています。災害に強い安心できる街づくりが進み、地震後も人々が迅速に日常生活や経済活動に戻れるようになるでしょう。私たちは、このシステムを通じて、より安全で持続可能な社会の実現に貢献していきたいと願っています。