ダム建設最前線

イノベーションでダムづくりの未来を変える

泰阜ダム(1936年竣工・長野県)

泰阜ダム(1936年竣工・長野県)

ダム建設最前線イノベーションでダムづくりの未来を変える

1936年に完成した長野県の泰阜(やすおか)ダムに始まる、シミズのダム建設。
以来、いくつものダムをつくり上げてきた日々は、
移り変わる時代ごとの課題に挑み続けた歴史でもあります。
そして今、私たちは群馬県の八ッ場(やんば)の地を舞台に、新たな挑戦をしています。

八ッ場ダムを歴史の転換点に

八ッ場ダムの建設地は、利根川水系吾妻川中流の急峻な地形に位置します。ダム建設が計画されたきっかけは、1947年のカスリーン台風。利根川が決壊し、甚大な被害をもたらしたことから、利根川の改修計画の一環として調査が始められました。
八ッ場ダムは、洪水調節や流水の正常な機能維持、都市用水の供給、発電を主な目的として建設が進められています。

八ッ場ダム地図

当社初、100m超の堤高 急峻地で難工事に挑む

八ッ場ダムは、堤高116m、堤頂長290.8m、堤体積約100万m3の重力式コンクリートダムです。総貯水量は1億750万m3、流域面積は711km2にも及びます。当社では初めての堤高100m超のダム建設となります。
計画から65年もの歳月を経て工事が進む八ッ場ダムは、シミズにとってもエポックメイキングなプロジェクトです。

八ッ場ダム工事現場

八ッ場ダム概要

八ッ場ダム空撮
出典:国土交通省
ダム型式 重力式コンクリートダム
堤高 116m
堤頂長 290.8m
堤体積 約100万m3
総貯水量 1億750万m3
設計図
完成CG

出典:国土交通省(平成27年2月現在)

最新技術でダムづくりを変える ーさまざまなICT、新技術を積極的に導入ー

八ッ場ダム建設工事では、ICT※1の積極的な活用やさまざまな技術開発など、国土交通省が推奨するi-Construction※2を積極的に導入し、品質の確保や生産性の向上を図っています。
例えば、3Dスキャナ測量で岩盤形状を詳細に計測、施工するコンクリートの数量を簡単に精度良く算出できます。また、ダム基礎部分はドローンで撮影した3D画像と岩盤のスケッチを合成してダム基礎岩盤情報の高度化を図ったり、ダム三次元モデルとドローン撮影三次元地形データ等を合成し、さまざまな管理に活用しています。

  1. ※1ICT(Information and Communication Technology):情報通信技術
  2. ※2i-Construction:「ICTの全面的な活用(ICT土工)」等の施策を建設現場に導入することによって、建設生産システム全体の生産性向上を図り、魅力ある建設現場を目指す国土交通省の取り組み
CIM:各システムからの情報・属性を付与、統合管理
3Dスキャナ測量で、岩盤形状を詳細に測量
3Dスキャナ測量で、岩盤形状を詳細に測量
3Dスキャナ測量で、岩盤形状を詳細に測量

3Dスキャナ測量で、岩盤形状を詳細に測量 ⇒ 測量精度向上により、コンクリート打設量ロスを低減

ダム三次元モデルとドローン撮影三次元地形データ等を合成
ダム三次元モデルとドローン撮影三次元地形データ等を合成
ダム三次元モデルとドローン撮影三次元地形データ等を合成

ダム三次元モデルとドローン撮影三次元地形データ等を合成

大量のコンクリートを高速で打設

ダム本体となる堤体部は、約100万m3のコンクリートを施工します。ここでは一般財団法人ダム技術センターが開発し、国内で5例目となる「巡航RCD※3工法」 を採用。巡航RCD工法とは、内部のRCDコンクリートを先行して打ち込み、外部のコンクリートを後追いで施工することでコンクリート作業の効率化、高速化を実現する工法です。数量の多い内部コンクリートを大量に施工することができ、作業効率が向上します。

  1. ※3RCD( Roller Compacted Dam Concrete ):重力式コンクリートダムの合理化施工法。セメント量を少なくした超硬練りのコンクリートを   ブルドーザで敷均し、振動ローラーで締固める工法
巡航RCD工法
巡航RCD工法
ケーブルクレーン、バケット
ケーブルクレーン、バケット

さらに、コンクリートを連続して大量に搬送するため、18t固定ケーブルクレーン2基を設置するほか、運搬能力の向上を図るバケットやコンクリート連続搬送設備を採用し、急速施工に努めています。
また、コンクリートの締固め管理には、3Dスキャナと油圧センサーを用いて締固め完了の判定を見える化する、情報化バイバック(バイブレーター付きバックホウ)や、マシンガイダンス※4(MG)を活用したブルドーザー敷均しと振動ローラーによる転圧を行う、RCD締固め管理システムを採用しています。

  1. ※4マシンガイダンス:情報化施工の技術。TS(トータルステーション:測量機器の一つ)、GNSS(全球測位衛星システム)の計測技術を用いて、施工機械の位置情報や、現場状況(施工状況)と設計値(三次元設計データ)との差異を車載モニタを通じてオペレータに提供し、操作をサポートする技術
施工状況全景(平成29年4月撮影)
施工状況全景(平成29年4月撮影)
情報化バイバック(平瀬ダム事例)
情報化バイバック(平瀬ダム事例)
運転席モニタ(バイバック位置情報、締固め管理情報)
運転席モニタ(バイバック位置情報、締固め管理情報)

江ノ電と同じ距離をベルトコンベヤで

コンクリート用の骨材は、近接する原石山を供給源とし、ベルトコンベヤを用いて1時間当たり約800tを運搬しています。その距離は約10kmで、鎌倉・藤沢間を走る江ノ電の路線距離とほぼ同じです。ベルトコンベヤのルートは移設された旧吾妻線の線路跡を有効活用しています。これにより、1日平均で25tダンプカー220台の走行を削減することができます。
また、ベルトコンベヤには運搬される骨材の粒径を3Dスキャナを使い判別する、骨材粒径判別システムを備えています。

旧 吾妻線跡
旧 吾妻線跡
ベルトコンベヤ
ベルトコンベヤ

プレキャストの積極活用

ダムの監査廊、エレベーターシャフトに加えて、放流設備、張出し部等にはプレキャスト※5を積極的に活用し、工程の短縮や品質の確保を図りながら、省力化、生産性の向上に努めています。

※5プレキャスト:工場であらかじめ製作したものを現地で組み立てること

プレキャスト

時代の課題に挑み続けた、シミズのダムづくり

各地のダムを表した日本地図
  • 美利河(ぴりか)ダム
  • 新中野(しんなかの)ダム
  • 鷹生(たこう)ダム
  • 黒又川(くろまたがわ)第二ダム
  • 泰阜(やすおか)ダム
  • 尾原(おばら)ダム
  • 平瀬(ひらせ)ダム
  • 鹿野川(かのがわ)ダム
  • 美利河(ぴりか)ダム

    (1992年竣工・北海道)

    北海道初の複合型式ダム

    北海道初の重力式コンクリートダムと中央遮水壁型ロックフィルの複合型式のダム。堤体基礎に箱型地下連続壁を採用。コンクリートダム部のコンクリートを堤頂部までダンプトラック直送によるRCD工法で施工しています。

  • 新中野(しんなかの)ダム

    (1984年竣工・北海道)

    当社初の再開発(ダム嵩上げ)工事

    当社初の再開発工事で、53mの堤高を旧堤体の上流面を延ばす形で21.9m嵩上げされました。減勢工水叩基礎には、国内初の粗骨材最大寸法150mmのRCDコンクリートが採用されました。

  • 鷹生(たこう)ダム

    (2006年竣工・岩手県)

    当社開発のライジングタワーを初採用

    大船渡市の五葉山に源を発する盛川水系鷹生川に、多目的ダムとして建設された堤高77mの重力式ダムです。コンクリートの運搬設備として当社が開発したライジングタワー(鉛直昇降式クレーン)を初めて採用しました。

  • 黒又川(くろまたがわ)第二ダム

    (1964年竣工・新潟県)

    わずか3年の工期で完成

    信濃川水系の黒又川に建設された黒又川第一ダム完成の6年後、直上流に完成した堤高82.5mのアーチ式コンクリートダムです。

  • 泰阜(やすおか)ダム

    (1936年竣工・長野県)

    清水建設が初めて挑んだダム工事

    当社にとって初の本格的ダム工事。天竜川にかかる堤高50mの重力式コンクリートダムで、発電所の出力、規模ともに国内屈指。難工事中の難工事と言われた工事に、威信をかけて挑みました。

  • 尾原(おばら)ダム

    (2012年竣工・島根県)

    県下最大の総貯水量を実現

    簸川平野を流れる一級河川斐伊川の上流部に、治水対策などを目的として建設されました。
    堤高90.0m、堤頂長440.8m、総貯水容量6,080万m3重力式コンクリートダムです。運搬設備のひとつに、ライジングタワーを採用しました。

  • 平瀬(ひらせ)ダム

    (2021年竣工予定・山口県)

    生産性向上により約2,500人の省人化目指す

    平成33年完成予定の平瀬ダムは、西日本最大級の規模を誇る多目的重力式コンクリートダムです。生産性を向上させる地道な技術の積み重ねにより、堤体工事終了までに総労働力の5%にあたる約2,500人の省人化を達成する見込みです。

  • 鹿野川(かのがわ)ダム

    (1959年竣工・トンネル洪水吐新設工事施工中・愛媛県)

    稼働中のダムに放水路を新設

    鹿野川ダムは1959年に清水建設が竣工した多目的重力式コンクリートダム。このダムに、洪水調節容量の増強を目的としたトンネル方式の放水路「トンネル洪水吐き」を国内の再開発工事で初めて新設しています。洪水吐の完成により、下流域での洪水被害の軽減が見込まれています。

※クリックで詳細が開きます。

シミズが見据える、ダムづくりの未来

高齢化が急速に進みつつある日本。建設業でも今後10年のうちに128万人が離職すると予測され、新たな担い手や女性の活躍を見込んでも35万人の労働者不足が見込まれており、それを補うための生産性向上は喫緊の課題となっています。
現在施工中の八ッ場ダムをはじめとする稼働中のダム現場では、国土交通省や日建連が推進するICT化、プレキャスト化などの生産性向上技術の導入を積極的に進めています。
ダムをつくるのではなく、ダム建設の未来をつくる。
私たちは、そんな想いを胸に、八ッ場ダムをはじめとしたすべてのダム建設に挑んでいます。
時代ごとに異なる課題への挑戦を積み重ね、ダム建設の常識を変えるイノベーションを起こす。
それがシミズのダムづくりです。

トンネル洪水吐き
鹿野川ダムでは、洪水調節容量の増強を目的としたトンネル方式の放水路「トンネル洪水吐き」を国内のダム再開発工事で初めて施工しています
鹿野川ダム(1959年竣工、トンネル洪水吐新設工事施工中・愛媛県)
鹿野川ダム

Column

八ッ場ダムがカレーに!?

現場近くにある、道の駅「八ッ場ふるさと館」のレストラン「八ッ場食堂」では、地元で採れた野菜を使った「八ッ場ダムカレー」が提供されています。一般的なダムカレーは、ごはんでダムの形を作りますが、こちらは陶器製のダムに、やや辛口のカレーが盛り付けられています。陶器とお皿はお土産店で購入も可能です。

八ッ場ダムカレー
八ッ場ダムカレー

盛り上がりをみせるインフラツーリズム

近年はさまざまなインフラの意義を広く伝えようとするツアーが開催されています。ここ、八ッ場ダムでも夜間の作業を見学するツアーが密かな人気を集めています。
道の駅「八ッ場ふるさと館」の中には情報コーナー「やんば館」で模型展示や工事概要を見ることができるほか、こちらを集合場所にした「ダム本体工事見学会」も行われており、参加するとダムカードをもらうことができます。
また、同じく現場にほど近い、「なるほど!やんば資料館」(国土交通省 八ッ場ダム工事事務所と当社JVの共同運営)では、JV職員のPepperが館内のコンシェルジュとして案内してくれます。
今まさにつくられているダムを、間近で見学できるまたとないチャンスです。ぜひ一度、八ッ場を訪れてみてはいかがでしょうか。

道の駅 「八ッ場ふるさと館」
道の駅 「八ッ場ふるさと館」
「なるほど!やんば資料館」のコンシェルジュ、Pepper
「なるほど!やんば資料館」のコンシェルジュ、Pepper
問い合わせ案内等
ダムカード

[お問い合わせ先]

■ 道の駅 八ッ場ふるさと館 (長野原町林)

2013年4月にオープン。手作りパンや地元の野菜、果物などを販売。食事処、八ッ場食堂では「八ッ場ダムカレー」が食べられるほか、外には不動大橋を眺めながら入れる足湯もあります。
(TEL 0279-83-8088)

■ なるほど!やんば資料館 (長野原町川原湯)

開館時間 午前9時~午後5時(Pepperは日曜休み)※入場無料休館日  無休(年末・年始は休館)
(TEL 0279-82-2311)

記載している情報は、2017年9月1日現在のものです。
ご覧になった時点で内容が変更になっている可能性がございますので、あらかじめご了承ください。

関連コンテンツ

おすすめ事業トピックス