コンクリート内部にCO2を固定してカーボンネガティブを実現する「バイオ炭コンクリート」

「バイオ炭コンクリート」は、バイオマスを炭化した「バイオ炭」をコンクリートに混和することにより炭素を貯留する、環境配慮型コンクリートです。
貯留した炭素量に応じたCO2固定量でコンクリートのCO2排出量をオフセット可能です。低炭素セメントを使用すれば、コンクリートとしてカーボンネガティブまで実現可能です。

バイオ炭によるCO2固定化のイメージ
バイオ炭によるCO2固定化のイメージ

バイオ炭コンクリートの概要

炭素を固定するバイオ炭

バイオ炭は、バイオマスを炭化したものです。これを粒状もしくは粉状にし、コンクリートの混和材として利用します。

本技術で使用するバイオ炭の原料には、木材の製材時の副産物であるオガ粉を利用します。通常であれば微生物分解や燃焼により、オガ粉が含む炭素はCO2として空気中に放出されてしまいます。一方で、炭化されるとオガ粉が含む炭素は非常に分解されづらい固定炭素に変化して、燃焼されない限りほとんどCO2に変化しなくなります。原料や製造方法によりますが、バイオ炭の乾燥時の固定炭素質量比は高比率のものでは90%に及び、多量の炭素を安定的に固定できる特長があります。

混和するバイオ炭は、粒径1mm以下の粉状と2mm~5mmの粒状の2種類について配合を検討しました。粒径が数mmであることから、細骨材に置換して使用します。

粒径1mm以下の粉状のバイオ炭(左)と2mm~5mmの粒状のバイオ炭(右)
粒径1mm以下の粉状のバイオ炭(左)と2mm~5mmの粒状のバイオ炭(右)

なお、粉状と粒状のバイオ炭のそれぞれの特徴は下記の通りです。

  • 粉状:
    コンクリートの強度に及ぼす影響が小さいが、コンクリートのフレッシュ性状(流動性など)に及ぼす影響が粒状よりも大きい。
  • 粒状:
    混和量によってはコンクリートの強度が若干低下することがあるが、粉状と比較してコンクリートのフレッシュ性状に及ぼす影響が小さい。

カーボンネガティブを実現可能

一般的なコンクリートは普通ポルトランドセメント(以下、Nセメント)を使用しており1m3製造する際に200~300kgほどのCO2を排出します。バイオ炭コンクリートでは、NセメントよりCO2排出量の小さい高炉セメントB種(BBセメント)やC種(BCセメント)※1を使用することで、バイオ炭のCO2固定量で他の材料のCO2排出量をオフセットしてカーボンネガティブを実現できます。

  • 1:普通ポルトランドセメントに製鉄時に生じる副産物である高炉スラグ微粉末を混ぜたもの。混ぜる量の違いで、A種・B種・C種の三種類がある。
W/C=55%,スランプ12cm配合のCO2排出量算定例。黒がN、青がBB、緑がBCセメント配合で、末尾の数値はm3あたりのバイオ炭の混和kg数を示している
W/C=55%,スランプ12cm配合のCO2排出量算定例
黒がN、青がBB、緑がBCセメント配合で、末尾の数値はm3あたりのバイオ炭の混和kg数を示している

一般的なコンクリートと同等の施工性

バイオ炭を混和したコンクリートを用いて写真に示すような圧送試験を実施し、ポンプによる圧送の可否および圧送後のコンクリートのフレッシュ性状を確認しました。結果として、バイオ炭を混和したコンクリートは、バイオ炭無混和の普通コンクリートと同様に圧送することが可能であり、圧送後のフレッシュ性状も良好なまま保持できていることを確認しました。

水平換算距離約150mの条件で圧送試験を実施
水平換算距離約150mの条件で圧送試験を実施
BCセメントを使用し粒状のバイオ炭を60kg/m3混和した配合の圧送前後のフレッシュ性状
BCセメントを使用し粒状のバイオ炭を60kg/m3混和した配合の圧送前後のフレッシュ性状

一般的なコンクリートと同等の圧縮強度

BBセメントを用いたベース配合と
粉状バイオ炭15kgを混和した配合の比較
BCセメントを用いたベース配合と
バイオ炭を15kg~60kg混和した配合の比較

BBセメント配合およびBCセメント配合のいずれにおいても、バイオ炭を混和したコンクリートとバイオ炭を混和していないコンクリートの圧縮強度は概ね同等であることを確認しました。粒状のバイオ炭を混和した場合、一般的な土木構造物に要求される圧縮強度を満たしています。

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