デジタル技術で大本山永平寺の重要文化財群を大解剖!

~精緻な点群測量により社寺建築のデジタルツインを構築~

  • エンジニアリング
  • 建築

2024.04.26

清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、開創から800年近くが経過する曹洞宗の大本山永平寺(福井県吉田郡)と共同で、3次元点群測量により永平寺伽藍内の重要文化財19棟について精緻なデジタルツインを制作、そのデジタルデータを永平寺に納品しました。併せて制作した、伽藍内全棟、大小100余棟を360°写真でウォークスルーできる当社開発アプリ「デジトリ360」を使ったデジタル空間、オンラインで永平寺を巡るデジタル参拝の各コンテンツについては、先行して昨年11月に納品しています。

世界遺産に指定されていた首里城正殿の焼失は記憶に新しいところですが、日本の歴史的建造物は木造ゆえ、これまでも多くが焼失しています。また、地震による損壊も多く、今回の能登半島地震でも輪島市の総持寺祖院が甚大な被害を被っています。大本山永平寺の場合、過去に幾度となく火災に遭遇していますが、都度、関係者の尽力により伽藍が再建されてきました。永平寺はこうした過去の経験を鑑み万一に備えるとともに、当社が提案したデジタルツインにより伽藍内の重要文化財の在り様を確実に後世に残すことができると判断し、昨年7月、デジタルツインの制作に向け当社との共同調査に乗り出したものです。

デジタルツインのベースとなる3次元点群測量は、物体のありのままの姿を精緻に捉えることができるツールであり、伝統木造建築に見られる複雑な架構形式(骨組)や軒廻りの形状、彫刻などの調査に適しています。今回の共同調査では、重要文化財19棟の内外観はもとより、小屋裏や床下、彫刻などあらゆる空間・形状を3次元点群測量で捉え、任意の平面、立面、断面を切り出して表示できるようにデータ加工し、デジタルツインを構築しました。測量にあたっては、デジタル技術に長けた宮大工を擁するT&I 3D(株)<代表取締役 上野拓、福井県吉田郡>の協力を得ています。

国内には、図面類が十分に整備されていない神社仏閣をはじめとする歴史的建造物が数多く存在すると言われています。一方、こうした建造物の図面類は、デジタル技術を用いることで合理的な費用と工期で整備できます。歴史的建造物のリアルな在り様を後世に残すことは、大手建設会社ならではの社会的責務であることから、当社はデジタル技術を用いたアーカイブ化を関係各方面に提案していく考えです。また、点群データの高度利用に向け、データを簡易保存・閲覧するアプリ、3次元モデル及び構造検討に展開するシステムの開発等を推進します。

なお、大本山永平寺において、「大本山永平寺 デジタル伽藍展」と銘打ち、4月27日(土)~5月6日(月)の10日間にわたり、3次元点群データで制作した重要文化財19棟のデジタルツイン(プリント)を展示する展覧会を開催します。

以上

≪参 考≫

デジタルツイン

現実空間に存する対象物のさまざまな情報をデジタル化して取得し、サイバー空間内に現実世界と対になるふたご(ツイン)を構築することを意味する。

3次元点群測量

レーザースキャナーから照射したレーザーが物体に当たって跳ね返ってくる時間を計測することで2点間の距離を算出し、計測点に座標情報(XYZ)を与えた上でデータとしてパソコンに取り込み、3次元的に物体の形状を構成していく測量。1秒間に100万点以上に及ぶポイント計測が可能。

大本山永平寺のコメント(石田純道(しっ)(すい)・伽藍の維持保全担当)

修行の場である永平寺伽藍内の建造物群の姿を確実に後世に残すことが我々の使命であり、3次元点群測量による精緻なデジタルツインの作成は我々のニーズを具現化する手段と評価している。また、2次元の図面から維持保全に必要な情報を得るのは難しいが、デジタルツインのデータからは誰でも必要な情報を容易に検索できるので維持保全業務が効率化する。

仏殿の点群データ(外観と内部を同時に表示)

仏殿の点群データ(外観と内部を同時に表示)

山門の点群データ(外観と内部を同時に表示)

山門の点群データ(外観と内部を同時に表示)
山門の点群データ(外観と内部を同時に表示)

勅使門の点群データ(軒下の見上げ、下・外観写真)

勅使門の点群データ 軒下の見上げ
外観写真

ニュースリリースに記載している情報は、発表日現在のものです。ご覧になった時点で内容が変更になっている可能性がございますので、あらかじめご了承ください。ご不明な場合は、お問い合わせください。