コロナにも大地震にも強いオフィスビルが誕生

~清水建設東北支店新社屋~

  • 建築
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  • 耐震

2021.03.01

清水建設(株)<社長 井上和幸>の企画・設計・施工により、感染症対策に有効な空調システムや大地震に強い免震システムをはじめ、各種の先端技術を備えた最新のオフィスビル「清水建設東北支店新社屋(仙台市青葉区)」が明日3月2日に竣工します。この新社屋は、1971(昭和46)年に建設した旧社屋の老朽化に伴い計画したもので、「省エネ」「事業継続」「快適性」を主テーマに設計を進め、旧社屋の解体を終えた2019(令和元)年11月に着工しました。規模は地下1階、地上6階、延床面積5,588m2です。

新社屋の外観南面は、仙台七夕祭りの吹き流しをモチーフに、12枚のガラススクリーンを連続的に配置することで周辺の街並みや空などを映し込み、一体感を醸成しています。また、自然通風が可能な大きな窓開口や、屋外テラス、個別制御が可能な照明・空調、多様な執務スペースなどにより、社屋内に五感に響く豊かな快適空間を創出しています。

省エネの核となる技術は「床吹き出し空調システム」「地中熱利用システム」「躯体蓄熱放射システム」です。この3つのシステムが連携し、他の省エネ技術と併せて75%超の省エネ「Nearly ZEB(Zero Energy Building)」を実現します。システム連携とは、新社屋下の地中と建物の床躯体(コンクリート)の中に走らせた直径13㎜の導水管内に水を巡回させ、夏場は地中で冷却された水が床躯体を冷却、冬場は地中で加熱された水が床躯体を加熱し、地中に戻ります。一方、循環水により床躯体の温度は年間を通じて24℃に保たれ、その熱で床躯体と二重床(OAフロア)の間の空気の温度を調整し、空調に利用します。最終的には床面全体から空調空気が居室内に供給される仕組みです。

この床吹き出し空調システムの特徴は、特殊加工したフロアカーペット全体から秒速1㎝以下で供給される空調空気が床面から徐々に貯まっていき、最終的には天井面から排気されることです。一方向の気流しか発生しないため、例えば新型コロナウイルスの感染ルートの一つと見られているマイクロ飛沫などは効率良く排気されます。感染制御の第一人者である順天堂大学の ( ほり ) ( さとし ) 教授から、「人体からのマイクロ飛沫は体温で温められて上昇する傾向にあり、床から天井へ向けて空調空気を押し上げ、上部で排気する考え方は理にかなっている。上向きの気流によりマイクロ飛沫を人の呼吸域から速やかに除去することができ、感染リスクの低減が期待できる。」との評価をいただいています。

一方、仙台は繰り返し大きな地震に見舞われている地域でもあり、2階フロア下に12基の免震装置を設置しています。建設地では最大震度5強の地震が想定されていますが、免震効果により執務階の揺れを震度階で2段階以上低減できるので、確実に事業継続性が高まります。また、太陽光発電と自家発電設備を連携させることで館内での非常時対応に必要な電力を72時間供給でき、かつ約2千人日分の水と食料、仮設資材などの備蓄を充実させるなど、建設会社の使命である震災対策活動に備え万全を期しています。

当社は今後、東北支店新社屋を東北地方における先端的なオフィスのショールームとして活用していくとともに、取得済の社屋の省エネ性能を証する「Nearly ZEB(BELS認証)」に加え、環境性能については「LEED認証プラチナ」、居住環境性能については「WELL認証プラチナ」の各認証取得を目指します。

以上

≪参 考≫

東北支店新社屋の計画概要

建設地 仙台市青葉区木町通一丁目4-7
規 模 地下1階、地上6階、建築面積894m2、延床面積5,588m2、敷地面積1,229m2
構 造 混構造(鉄骨造、鉄筋コンクリート造、一部鉄骨鉄筋コンクリート造)、柱頭免震構造
工 期 2019年11月27日~2021年2月12日
企画・設計・施工 清水建設(株)東北支店

( ほり ) ( さとし ) 教授(1966年生まれ)

  • 博士 (医学)
  • 順天堂大学医学部大学院医学研究科感染制御科学 教授
  • 専門分野‐感染制御、感染対策、医療関連感染症
  • ※受賞学術賞
  • 2004年~2008年 文部科学省21世紀Center of Excellence Program採択
  • 2004年 英国Infection Control Team of The Year 審査員奨励賞受賞
  • 2011年 英国Hospital Infection Society学会賞(Lowbury Lecture)受賞
  • 2011年 日本環境感染学会学会賞(優秀論文賞)
  • 2018年 空気調和・衛生工学会 学会賞(技術賞)
  • 2018年 ノルウェーInternational Federation of Hospital Engineering,International Building Award (Runner-up)
  • コロナ対策

    床吹き出し空調システムの他、自然通風を用いた各階毎の換気、自動水栓やドアレス化による接触機会の削減、接触箇所への抗菌フィルムの設置、Web会議を促進するブースの設置などにより、感染症対策に取り組みます。

    床吹き出し空調システム

    OAフロアと床躯体の間に供給する空調空気が不織布製のフロアカーペット全面から居室内に染み出し室内に貯まっていく。人間の居住空間(背丈相当)に 限った空調が可能で、しかも空調空気は人やパソコンなどの発熱体が発生する上昇気流に吸い寄せられ、空調が必要な場所に空調空気が集中する仕組みになっている。

    地中熱利用システム

    地中の温度は年間通じて一定であり、地中に走らせた導水管内に水を循環させることで、地中熱を水の加熱・冷却に活用する。東北支店新社屋の場合、夏場は20℃の水温を15℃に、冬場は10℃の水が15℃にしたうえで、機械的に温度調整し、躯体内を走る導水管に提供する。

    躯体蓄熱放射システム

    建物の構造体であるコンクリートは蓄熱性能に優れている反面、夏場は熱、冬場は冷熱が籠るので空調の妨げになる。その特性を利用して、東北支店新社屋では地中熱利用システムにより年間を通じて床躯体の温度を24℃程度に保ち、空調に役立てる。

    タスク&アンビエント(参考)

    自然光と天井照明の照度調整により、通常の机上の明るさを300lux(パソコン操作に最適)程度に保ち(アンビエント)、図面チェックのような小さな文字を読む際に机上のLEDライトを点灯することで(タスク)、700lux(通常のオフィスの照度)を確保する。空調についても、床吹き出し空調システムで室内全体の温度を一定に保ち(アンビエント)、足元の個別吹き出し口から個人の好みに合わせた温度設定が可能(タスク)。

    Nearly ZEB(計75%の削減)への寄与度

    躯体蓄熱放射空調45%、LEDタスク&アンビエント照明23%、地中熱利用15%、建物高断熱11%、太陽光6%(計100%)

    東北支店新社屋

    新社屋全景(外観南面)
    新社屋全景(外観南面)
    1階エントランス
    1階エントランス
    6階食堂
    6階食堂
    4階の執務室(空調空気が床全面から供給される)
    4階の執務室(空調空気が床全面から供給される)

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