木の可能性を探る

木の可能性を探る Vol.73 東京木工場で新年拝賀式、初午祭を行いました

2023年3月14日

Vol.73  東京木工場で新年拝賀式、(はつ)(うま)(さい)を行いました

東京木工場は1884(明治17)年に清水組の木材加工場として江東区木場に開設され、以来、関東大震災や戦火での焼失を乗り越えて工場設備を拡充してきました。

東京木工場の施設群は、いずれも築50年以上を経過していることから、順に解体し、「木の文化・技術・魅力」の発信拠点として、全面建て替えプロジェクトが進められています。

建て替え前の東京木工場で今年も伝統行事の「検尺式」と「初午祭」が執り行われました。

安全と品質向上を祈念する「検尺式」

2023年1月4日に、東京木工場の新年拝賀式において、協力会社の会である清木会とともに、「検尺式」が行われました。

検尺式とは、年始に検尺棒と呼ばれる、長さを測るための基準となる物差しをつくり、祀ることで、その年の安全と品質向上を祈念する行事です。検尺式は検尺の儀とも呼ばれています。

現在の検尺式では、検尺棒となる2本の(ひのき)材に(かんな)をかけて表面を整え、墨つぼと墨さしを用いて検尺の基準となる線を引きます。最後に2本の検尺棒を水引で束ね、末広(扇)を取り付けて壁に立てかけます。

検尺式の手順

検尺材である木材に鉋をかけて表面を整える
(1)検尺材である木材に鉋をかけて表面を整える
鉋くずはできるだけ薄く、途中で途切れないようにする
(2)鉋くずはできるだけ薄く、途中で途切れないように削り出す
検尺材に線を引く墨掛け。墨つぼにつけた墨さしを使う
(3)検尺材に線を引く墨掛け。墨つぼにつけた墨さしを使う
L字型の指矩を使って検尺材の長辺に対して直角の線を引く
(4)L字型の(さし)(がね)を使って検尺材の長辺に対して直角の線を引く
水引で2本の検尺材を束ねる
(5)水引で2本の検尺材を束ねる
最後に末広(扇)をつける
(6)最後に末広(扇)をつけて検尺式を終了する

商売繁盛、災難除けを祈願する「初午祭」

2月最初の午の日である2月7日に、東京木工場の事務所棟屋上にある兼喜稲荷大明神で商売繁盛、災難除けを祈願する初午祭を行いました。

鯛や野菜をはじめとした供物を捧げ、神職による祝詞を奏上する
鯛や野菜をはじめとした供物を捧げ、神職による祝詞を奏上する
玉串奉奠(たまぐしほうてん)の様子
(たま)(ぐし)(ほう)(てん)の様子
事務所棟が建てられてから、台風など自然災害で被害を受ける都度、東京木工場の従業員によって修理し大切に守られてきた兼喜稲荷大明神。事務所棟を解体した後は、敷地内奥に稲荷神社を移設する
事務所棟が建てられてから、台風など自然災害で被害を受ける都度、東京木工場の従業員によって修理し大切に守られてきた兼喜稲荷大明神。事務所棟を解体した後は、敷地内奥に稲荷神社を移設する

検尺式の歴史

本社で行われる手斧始め(ちょうなはじめ)の儀式にならい、戦前から行われていた検尺をつくる仕事始めの一連の作業を、「検尺の儀」として木工場での新年拝賀式の中に正式に取り入れたのは、1965(昭和40)年からです。

当初、検尺棒を仕上げていく所作には20名ほどが携わる大規模な儀式でしたが、時代に合わせ1972(昭和47)年以降は現在の形式に簡略化。儀式では、法被を着用するようになり、さらに参加人数も「末広がり」の吉言から8名となりました。以来今日まで検尺の儀として継承しています。