虎麻プロジェクトにビジネスを学ぶ 2023.01.16

職長会活動が織り成す

現場の輪

職長会

01 プロジェクト課題

制限下で結束する難しさ

各職の職長が集まる職長会。A街区、B-2街区それぞれに職長会が存在し、作業員が安全かつ快適に作業できるように様々な活動を行っている。A街区 職長会会長である株式会社オクジューの乘田(のりた)職長は「A街区の職長会は『チームTA330』と名付けて、安全、環境、衛生、休憩所、女性活躍、広報をテーマとする6つの委員会を立ち上げ活動しています。例えば、毎週行う職長会のメンバーによる現場パトロール、毎回テーマを変えて行う月次の勉強会。関係者全員が学び成長するように努めています」と職長会の活動を語る。
最盛期にはA街区で約5,000人、B-2街区で2,000人弱の作業員が入場する。いわばひとつの町であり、職長会は町内会のようなものだ。B-2街区工事長の遠藤は「これだけの人数が集まると、職長会が町内会のように自立した組織となって引っ張っていき、それに対して我々がサポートしていく形がベストだと思っています」と語る。そこで課題になるのは、これだけの協力会社数と作業員数をどのように束ねていくかだ。「内装業だけでも10社、A街区 職長会のメンバーだけで200人近くになります。その上、施工が終わると職長も入れ替わっていきます。安全や衛生への正しいアプローチに慣れてきた人たちが卒業して、また新たな人たちが入ってくる。その中で同じレベルを維持していかなければならないのが難しいところです。」と乘田職長。しかもコロナ禍にある現場。これまでは結束力を高めるために、現場で懇親会などを開催することもあったが、同じようにコミュニケーションを取ることが難しい状況だった。

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02 ブレークスルー

創意工夫で
コミュニケーションを活性化

そこでB-2街区では、まず職長同士の結束を高めるために、組織の名称『桜虎会』にちなんだロゴを作成し、団体旗をつくった。B-2街区 職長会会長の佐々木架設株式会社の大堀職長は「毎朝、団体旗を見てみんなのベクトルを統一できるように、朝礼会場に飾らせていただきました。」と語る。
そして、コロナ禍でのコミュニケーションを活性化する方法を模索。やり方を変えることで、懇親会も開催した。「換気のいい場所に送風機を設置し、密にならないように気を配り、ケータリングという方法で食事を振る舞いました。個々にお弁当を取りに来てもらう際に、一人ひとりと会話をしてコミュニケーションを図りました。イベント前にはチラシを貼り出してお知らせし、施主を含めいろんな方にご来場いただきました」。
ハロウィンの時期には仮装写真を募集し、フォトコンテストを開催。人気投票を行い、優秀者に景品を贈呈した。「QRコードを読み込んで誰でも写真をアップできるようにして、人が集まらなくても開催できようにしました」と大堀職長。A街区でも、A街区タワーのフォトコンテストを開催。羽田空港から見たA街区、A街区のカーテンウォールに映り込んだ東京タワーといった写真が寄せられた。現場に関わる作業員や建設所の所員だけでなく、設計者、監理者を含めた皆が創意工夫によって楽しくイベントに参加できた。

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03 仕事の流儀

橋渡し役となり現場を改善

こうした職長会の活動によって、現場のコミュニケーションが活性化。「良いコミュニケーションが生まれれば現場が活発になり、声かけもしやすくなる。『そこ危ないぞ』といった具合に職人同士で声をかけ合うようになります。結果として良いものづくりにつながるので、現場の雰囲気の良さはとても大事です」と乘田職長。
土木工区には職長会という組織こそないが、各協力会社の職長同士で定期的に会合を行い、合同パトロールを定期的に実施したり、持ち回りで清掃を行ったりしている。その中で挙がってきた現場の声をシミズ側に届けるのも会合の役割のひとつだ。「作業員が増えてきたら休憩所を増設してもらい、最近では土工事で泥だらけになるので現場にシャワー室をつくってもらいました」と土木工区 職長の株式会社石井組 西村職長。
同じようにA街区では、高層棟での移動時間のロスやエレベーターの混雑緩和を図るために、職長会からシミズに要望を出して休憩所の申請制度を導入した。「申請を行うことで、各社が管理する休憩所を任意のフロアに設置しても良いことになりました。休憩用の机と椅子、表示類を貸し出してもらい、一定のルールに基づき休憩所を運用しています」と乘田職長。職長会には現場の声を汲み取って働き方を改善するという重要な役割があり、皆の意見を聞くために投書箱を設けている。オンラインで投稿できる仕組みもある。こうした現場の声が元になり、移動式の女性専用更衣室もできた。シミズと職長会、協力会社の3者が日頃からコミュニケーションを取り、良い関係が築かれている証だろう。

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04 まとめ

現場に笑顔は不可欠

職長会は、業務外活動にあたる。職長として現場を指揮し、多忙を極める傍ら、こうした活動に奔走するのには、どのような想いがあるのだろうか。
「我々職長は、職人がいてこそ職長なので、職人のためという意識が一番のモチベーションです。ただ委員会活動に時間を費やしすぎると負担になるので、週に1回30分程度の会議と緊急時の対応と決めています」と乘田職長。会議を効率よく回していくのもリーダーの腕の見せどころだ。「費やした時間以上のものが現場に還ってくると考えています。職長の役割にはこうした活動も含まれているという認識です」と西村職長。
大堀職長は「会長になって改めて考えてみたのですが、自分がこの仕事を長年続けてられたのは、現場が面白かったからです。だからどんなに忙しくても、現場の雰囲気を良くしていきたい。この規模の工事は作業員も大変です。長期に及ぶ工期を走り抜けるには、時に笑顔が欠かせません。コロナ禍でもイベントを開催できたのは、工事長が職長会の想いを汲み取り、各所と調整いただいたおかげです」と語る。調整に走り回った遠藤工事長は「ものづくりをしている人間は、みんなで何かをやるのが好きな人が多い。私自身もそうです。調整事は大変ですが、忙しいからこそ、みんなで一つになる機会を大事にしたい」と返す。
この現場の良いところは「圧倒的なデジタル化」と乘田職長。「毎朝顔認証の入退場ゲートを通って、担当フロアに設置されているShimz Smart Station®で分散朝礼を受け、チャットでスピーディーに情報共有する。この規模の建設現場でWi-Fiが使えるのはすごいと思います。スピードと情報共有の質が、他の現場とは圧倒的に違うと思います」。他方で大堀職長は「清水建設の社員の人柄」を特長に挙げる。「他の現場では工期や品質を求めるがゆえに、ときには元請け、職長会、協力会社の3者で意見が食い違うこともあるのですが、この現場は3者がこの大規模プロジェクトを成功させようと、同じ方向を向いていてとても働き甲斐があります」。

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とりわけ本プロジェクトにおける職長会の役割は大きい。「コロナの問題、労働力不足、いろいろな問題を抱えている中でプロジェクトを成功させるには、職長会の存在は欠かせない。残りの工期も、シミズ、職長会、協力会社が一体となって完遂させたい」と遠藤は力強く語った。

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Profile

遠藤 裕輔

虎ノ門・麻布台プロジェクト

B-2街区 工事長

入社年:1997年

主な業務:施工管理

Profile

乘田 宗史

虎ノ門・麻布台プロジェクト

A街区 職長会会長

所属:株式会社オクジュー 有限会社のりた屋

主な業務:内装工事

Profile

大堀 勝利

虎ノ門・麻布台プロジェクト

B-2街区 職長会会長

所属:佐々木架設株式会社

主な業務:躯体工事(鳶)

Profile

西村 聡太

虎ノ門・麻布台プロジェクト

土木工区 職長

所属:株式会社 石井組

主な業務:土木工事