人と技術のいい関係2022.12.12

地下にひろがる
コンクリートの大空間。

B-2街区東棟に建設中の広大な地下空間。この空間を支えている巨大梁の施工や地下工事の難しさについて、現場担当者に聞いた。

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―B-2街区東棟の地下空間について
教えてください。

双木:B-2街区東棟の地下には広大な空間が広がっています。天井の高さは10mもあり、とても開放感があります。

―地下空間を支える大梁の特徴について
教えてください。

双木:大ホールの頭上には、長さ約27m、高さ3mの大梁が、約5m間隔で14本架かっています。非常に大スパンの大梁であり、上部の大きな荷重に耐えるPC構造です。

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―PC工事について詳しく聞かせてください。

八木:PCは、Prestressed Concrete(プレストレスト コンクリート)の略です。コンクリートは圧縮には強いのですが、引っ張る力には弱いという特徴があります。PC工法は、梁の中にあらかじめセットされた管にPC鋼材を通し、その鋼材を両端からジャッキで引っ張ることでコンクリート部材に圧縮力が掛かった状態にして、強度や耐久性を高めます。今回の工法はポストテンション方式で、建築物などの大スパンの梁に使用されます。大スパンの梁は鉄骨梁が多いので、ここまで大きなPCはとても珍しいですね。

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資料提供:株式会社建研 
https://www.kenken-pc.com/intro/
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―大梁の施工において、難しさがありましたか?

八木:ホールの天井、つまり地下1階の床は二重スラブになっていて、この二重スラブを大梁が支えています。高さ3mという巨大さゆえ、大梁を一気に施工するのは難しい。そこで品質面、安全面を考慮して2段階に分けて施工する計画としました。二重スラブの下段の床と梁を途中までつくってから、PCの管を設置。その後、足場を組み替え、残りの梁と上段の床をつくりました。足場工事、型枠工事、鉄筋工事、コンクリート工事、PC工事とさまざまな業者が入るため、どういう順番でどこまで施工すれば、次の工程が効率よく進められるのかを考え、計画に落とし込みました。「段取り8割」というぐらい施工計画が大事です。
※スラブ:鉄筋コンクリート造(RC造)の平らな床のこと

双木:PC工事で剛材の両端をジャッキで引っ張るためには、作業スペースが必要です。床スラブに一度開口をつくらなければならず、そういった特殊な工程も施工の難易度を上げました。

―地下工事ならではの難しさもあったと
聞きましたが?

八木:一番は資材搬入の問題です。B-2街区は周囲を他街区に囲まれていて、道路と面しておらず、地下に繋がるスロープは完成するまでは、トラックで地下に直接部材を運び込むことはできません。そこで、床スラブに開口を設け、仮設構台からクレーンで資材を吊り下げて搬入しています。開口が狭いので長尺の資材は工夫して降ろさなければなりません。

双木:大梁を施工する以前は、地下空間は土留めのために多くの鉄骨梁が張り巡らされていて、この鉄骨を避けながら資材を降ろさなければいけませんでした。しかも床にコンクリートが打設されていない場所もあり、台車が使えず横移動も大変でした。仮設鋼板を開き資材を降ろすには、他街区との調整が必要です。予定通りに作業を進めるため、クレーンの設置場所や使用時間なども、日々調整を行っています。

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―望月さんは初めての現場だったそうですが、
どのようなお仕事を担当されましたか?

望月:職人さんが、配筋された床や大梁の上でも安全に作業ができるように安全設備を各所に設置しました。また、膨大な数量のアンカーボルトのチェックや、二重スラブの間に設置した配管のチェックを行いました。全数を一つずつチェックするので、大変な作業でした。
※アンカーボルト:構造部材や装置をコンクリートの土台に固定するための部品

双木:我々が躯体・内装をつくり終えた後は、最終仕上げのテナント業者へと引き渡します。オープンに向けて、後工程が詰まっているので、遅らせられないのが最も大変な部分かもしれません。関係者が多く、意見が食い違うことがしばしばある中、合理的かつ経済的な現場運営を追求するのは容易ではありませんが、大変勉強になっています。

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―残り1年となった本工事への
意気込みを聞かせてください。

望月:たくさんの人が使う商業施設に携わりたいと思い入社して、早速希望が叶いました。地下現場、大規模現場の大変さを痛感しながらも、毎日成長できていると感じています。現場は多くの方々が関わってつくり上げていくものだと実感していて、工事を受け渡す内装業者が作業しやすい現場づくりを、先輩方に教わりながら進めていきたいです。

八木:後世に名前が残るような大きな現場を経験したいと思いシミズに入社したので、このプロジェクトに関われたことを誇りに思っています。竣工に向けて関わる協力会社の数とともに調整事も増えるので、これまで以上に大変な時期になります。気が引き締まる思いです。

双木:2人と同じでこのプロジェクトに関われて本当に嬉しく思っていますし、お客様やこのプロジェクトに関わった協力会社の方がみんな笑顔で終われるように、これから頑張っていきたいと思います。世界からも注目される場所であり、たくさんの人が訪れ、学び、生活する場所になるので、完成が楽しみです。

虎ノ門・麻布台に新たに誕生する地下大空間。地下ならではの施工のハードルを乗り越え、竣工に向けて着々と工事が進む。ミュージアム施設に来場する人々が笑顔になることはもちろん、このプロジェクトに関わるすべての関係者が笑顔になれるように、シミズは施工者としての責任を果たしていく。

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Profile

双木 暁彦

虎ノ門・麻布台プロジェクト

B-2街区 工事長

入社年:1999年

主な業務:施工計画・施工管理

Profile

八木 玲

虎ノ門・麻布台プロジェクト

B-2街区

入社年:2016年

主な業務:施工計画・施工管理

Profile

望月 伶香

虎ノ門・麻布台プロジェクト

B-2街区

入社年:2021年

主な業務:施工計画・施工管理