虎麻プロジェクトにビジネスを学ぶ 2021.09.28

組織を越えた 組織を越えたコラボレーションを

コラボレーションを

どのように どのように実現しているのか。

実現しているのか。

BIM 

01 プロジェクト課題

数多くの会社が参加する
組織の壁

プロジェクトの規模が大きくなればなるほど、ハードルとなるのが社内外の組織の壁だ。この障壁をいかにして取り払い、スムーズに連携できるかがプロジェクトの成否を握るといっても過言ではない。A街区で最盛期には1日あたりの現場作業員が約5,000人になる。多くの会社が参画するこの巨大な建設プロジェクトでは、組織の壁をどのように飛び越えているのだろうか。
ここで大いに役立っているのがBIMだ。BIMとはBuilding Information Modelingの略で、現実の建物の3次元モデルをコンピュータ上で構成し、より良い建物づくりに活用しようというもの。単なる3次元モデルではなく、構成パーツには各種建材のサイズや素材、組み立てる工程、設備機器の品番やメーカー、価格など、あらゆる情報を付加できる。しかも、あらゆるデータが連動しているので、ひとつ修正を行えば、平面図、立面図、断面図、屋根伏図、パース、面積表、数量表などに反映され、手戻り時間を圧倒的に削減することができる。近年、建設現場ではBIMの導入が進んでおり、デジタル施工に取り組む虎麻プロジェクトでももちろん活用されている。

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02 ブレークスルー

BIMを共通言語に
各部門がひとつに

BIMの活用は、プロジェクトがスタートする以前までさかのぼる。受注提案時からBIMエンジニアとしてプロジェクトに関わる濱﨑は「発注者の要望や設計者の思想はそのままに、工期短縮とコストダウンを実現するためにはどうすれば良いか。BIMを活用して考え、合理化するのが私の仕事です」と語る。発注者の要望や設計者の思想に応えながら、より合理的な提案を行うためには、建築だけでなく設備も含めて建物全体で検討することが求められた。
そこで企画段階の図面をもとに、建築、設備、その他備品のデータを統合したBIMを作成し、どのような設備配置にすべきなのかをシミズの各部門と検討した。「各部門がバラバラに検討するのではなく、ひとまとめに検討することが重要です。建物躯体に及ぶ大がかりな変更提案では特に、その提案が意匠・構造・設備のすべてにおいて合理的に納まっていることの裏付けを示すことが必要になります。これにはBIMが不可欠でした」と濱﨑。BIMという共通言語のもと各部門が一緒に検討することで、地下フロアの天井内ダクトの位置をドラスティックに変更し、最適な階高を提案することに成功。結果的にプロジェクトの全体コストと工期の削減に貢献することができた。

03 何が変わったか

関係者の理解と問題解決が
スピードアップ

これまでの建設プロジェクトとの違いを物語る一つに、図面の枚数がある。A街区のメインタワーは各フロアで少しずつプランが異なる上、1フロアだけ見ても一般的なオフィスビルに比べ4倍近くの図面が必要だ。その分、設備ボリュームも増大し、膨大な図面の改訂に効率よく対応するためには、BIMによる関係者間での情報共有と共同作業が必須だ。
まさに今、設計変更に伴う設備の納まりを確認するため、電気・空調・衛生の各協力会社のリーダーが集まり、画面に映されたBIMを見ながら話し合いを行われている。「天井を上げたい」「形状をもっと改良したい」といった設計者の要望を反映したBIMを使って協議する。中心となるのは工務担当の粟野だ。粟野はBIMエンジニアではないが、その場で簡単に操作しながら検討を深められる。
「BIMソフトを操作しながら設備を納められるかを検討。話し合った結果を設計者に戻し、変更しなければならない理由を明確に伝えられることで、速やかな決定を促すことができます」と粟野。また、BIMによって複数の課題を一度に協議することも可能になっている。「今まではひとつの議題を話し合い、宿題を持ち帰って検討していたのが、同時に複数のテーマを議論できるようになり、意思決定が格段に早くなりました」(粟野)
BIMがまさにプロジェクトの共通言語となり、問題解決のスピードアップに寄与している。
現在、A街区では鉄骨の建方が進み、日ごとに躯体の階層が上がっている。鉄骨梁にはスリーブと呼ばれる設備配管を通す穴が開けられており、現場で鉄骨が組み立てられる1年前には工場に発注しなければならない。工期を順守するためにも入念に検討することができるBIMは大いに役立っている。

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04 未来を見据えて

さらなるコミュニケーション・
コラボレーションツールへ

濱﨑が受注提案に携わってから3年が経つ。自分が携わったプロジェクトのBIMモデルが日に日に現実の建物として出来上がってくるのを見て、徐々に実感が湧いてきたという。「シミズを代表する建物になるので、このプロジェクトに関われて嬉しい。この経験を後輩にも伝えていきたい」とのこと。
粟野は今まで出会わなかった人とコミュニケーションを取れるのが楽しいという。「このプロジェクトに参加していなければ、出会えなかった人たちが沢山います。規模が大きくなれば出会う人の数も増える。そのコミュニケーションを円滑にするのがBIMであり、もっと活用していい街をつくっていきたい」と粟野。
濱﨑は、あらゆる情報を取り込めるBIMの可能性について次のように語る。「建物のサインや人・車の動線などの情報を入力してのシミュレーション、VRに展開してのテナント誘致活動など、アイデア次第で今後も様々な活用方法が見込めます。会社を超えていろいろな人と一緒に使うことができるのが、BIMの面白さだと思っています」と、未来に思いを馳せる。

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Profile

粟野 梨実菜

東京支店 施工図センター 第1施設グループ

入社年:2007年

主な業務:工務(総合図担当)

Profile

濱﨑 早紀

建築総本部 設備本部 設備生産計画部 施工計画グループ

入社年:2012年

主な業務:BIM全般、生産計画、施工合理化