人と技術のいい関係2021.09.28

未知への挑戦。
現場を知り尽くした
シミズだからできたこと。

虎ノ門・麻布台プロジェクト

A街区 副所長

竹原 直規

B-2街区 副所長

日比野 兼次

Profile

未知の難易度

虎ノ門・麻布台プロジェクトでシミズが建設を担当している2棟のタワー。高さ約330mのA街区のタワーと、高さ約240mのB-2街区のタワーである。隣り合わせで2つの街区で副所長を務めるのが、竹原と日比野の2人だ。彼らはそれぞれの工事の難しさを次のように語る。
「A街区の南側は外苑東通りに面し、全体街区の動線を確保する役割があります。道路の下には地下鉄日比谷線が走っており、軌道に影響がないように掘削深さ約40mの地下工事を進めなければなりません。北側は谷地で高低差は約12mもあり、さらに約100m以上にわたってB-2街区と地下で接しています。このような難しい条件の中でこれだけの高さ・面積の建築物をどのように施工していくかがテーマでした」とA街区副所長の竹原。
「B-2街区は敷地の中央に位置し、搬入車両動線がない唯一の街区です。しかも高さ約240m、地下約40mのRC造というほとんど前例のない建物。搬入動線の計画と地下工事計画が肝になってくると考えていました」とB-2街区副所長の日比野。
前例がない2棟の大規模タワー建設は、シミズとして大きなチャレンジ。なおかつ、各街区と隣接するため、全体を見据えて整合性の取れた計画にすることが求められていた。

現場主義から勝ち得た案件

そこで、受注提案にあたり全社横断型のワーキンググループを発足。生産技術本部、設計本部、技術研究所、土木技術本部、知的財産部、東京支店から技術部隊が集まり、超高層建築物に関する基幹技術力の強化を進め、様々な側面で議論を重ねた。横との連携をこれほどまでに強化した取り組みは、シミズとしても画期的だった。
「この技術部隊の専門性を活かすも殺すも、すべては我々次第。実務上の課題をよく知る現場発信の明確な課題設定が、効率的な解を出すために欠かせませんでした」と竹原。
当時プロジェクトリーダーであった井上所長が中心となり、ワーキンググループの取りまとめを行い、「超高強度CFT※の施工性確認」「大断面鉄骨の量産化」「大深度山留工法」などをテーマに、早い段階からファブリケーター(鉄骨製作会社)をはじめ、各種専門工事協力会社と連携、技術の検証を推し進めた。
「既往の技術で今回の建設に対応できるのか、またそれは最適解なのか検討すべきです。その上で、不足している技術をピックアップし、技術検証を行い、来るべき戦いに備える必要があります。また、最終的にお客様が困りそうなことを事前に検討し、汗をかくことが大切だと考えています。シミズは現場担当者が提案書を作成することが多いのですが、今回は現場目線と全社の技術が融合したシミズの総合力の勝利でした」と竹原。全体街区を見据えて課題を洗い出し、それを包み隠さずお客様に提示。現場を知るシミズならではの提案が功を奏した結果となった。
※CFT:コンクリート充填鋼管構造
(Concrete Filled Steel Tube)

最後までより良いものを

2019年の着工から2年が経った今、鉄骨の建方が進む現場ではどのような苦労をしているのだろうか。
「他の支店からも人材面で多くの支援を得ていますが、適正が十分把握出来ない中で、役割分担を決定せざるを得ない状況です。業務を進めるうちに、適正が把握出来た場合は思い切って配置転換を行い、常に最適な組織づくりを心掛けています。これは比較的工期の短い建築工事では稀なこと」と竹原。「これだけの規模の現場になると施工管理者数も桁違いに多くなる。日々予定や状況が変わっていく中でコミュニケーションを取ることは非常に難しく、気を使っている部分です」と日比野。
副所長はプロジェクトを円滑に進めるための潤滑油であり、各街区や関係各所との調整に日々走り回っている。「私の週間予定は設計者との打ち合わせが主です。私が取りまとめている工務グループでもさまざまなチームが同時進行で動いており、それぞれの分科会で設計者との打ち合わせがあります。本事業をリードする森ビル様は最後の最後までより良いものをつくるための検討を続けるディベロッパーです。さまざまな検討事項を共に創り上げる気持ちで臨み、信頼関係を積み重ねていきたいと思っています」と竹原。

シミズらしいデジタル施工

コロナ禍も、プロジェクトの進行をより一層難しくしている。問題解決の近道であるコミュケーションが難しくなっているからだ。そこで利用しているのがWeb会議だ。
「毎週決まった時間に各分野別のコアタイムを設けて所内の打ち合わせを行っていますが、できるだけ意見を出しやすい雰囲気づくりを意識し、主任や係員の発言から方針転換することもあります」(竹原)
「基本はWeb会議で行い、重要な会議は対面で行うようにすることで、必要なものの見極めができるようになりました」(日比野)
こうしたWeb会議はもちろん、今回取り入れられたロボットワークやモニタリング、BIM※など、デジタル施工の数々が、現場の人々の大きな助けとなっている。「しごとの進め方は常に進化しています。大切なのは、どうしたら効率を高められるか現場目線を忘れずに考えること。PDCAを回して都内の大型案件で継続的に取り組むことで、シミズらしいデジタル施工を確立していきたい」と竹原。現場を大切にするシミズなら、きっと人と技術のちょうどいい関係を見つけ、新しい現場のカタチを開拓していけるはずだ。
※BIM:Building Information Modeling
(ビルディング インフォメーション モデリング)

topicks記事画像2 topicks記事画像2