虎麻プロジェクトにビジネスを学ぶ 2021.11.10

この大規模現場は

若手の成長量も桁違い。

シミズの現場力

01 プロジェクト課題

大規模現場ならではの
管理の難しさ

ここでは、全国の支店から集まったシミズの施工管理者が数多く活躍している。経験豊富なベテランから若手、女性、外国籍の現場管理者まで、実に多様なメンバーで構成され、一人ひとりが役割を全うしながらこの難工事に挑んでいる。扱う物量も、工法・材料の種類も、職人の数も、すべてが桁違いの現場で、若手はどんなことを吸収しているのだろうか。そこにシミズの現場力の真髄があった。
A街区タワーの基礎には、超高層の荷重を支えるため約5mという極厚のマットスラブが施工されている。マットスラブとは、基礎部分に板状のコンクリートを打って平面全体で建物を支える方式だ。今回はゆうにビルの1フロアがコンクリートで埋まるほどの分厚さ。これをどういう手順、方法で施工するのか、足場をどのように組むのか、高層地下の施工計画を担う久保田は大いに悩まされた。さらに大変厳しい工期を厳守するため、地上と地下の同時施工実現に向けて、床のない空中で先行床を打設する方法を検討したり、10mを超える組立足場の支保工計画を立案。久保田はこれまでの知識と経験を総動員しながら専門家に意見を聞き、施工方法を見いだし、計画に落とし込んだ。
高層地下の躯体工事の計画を終えてからは内装工事の計画を行い、今は実際にそれを施工している。「主任として現場を管理する上で難しいのは、どこまで部下に任せていいのかという線引きです。予定外のことが起こる現場で、フォローしなければ前に進まないし、反対にフォローしすぎたら部下は育たない。私たちの場合は持ち場が変われば部下も変わるので、どういう施工経験があり、どのような知識を持っているのか把握することが肝心だと思います」と語る。

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02 ブレークスルー

チャットによる情報共有

久保田と同期で、入社9年目の有坂は、B-2街区の東棟後行工区、商業棟の地下工事を担当。工事が進むにつれ部下が増え、いまや7人の係員の上に立つ。鉄筋、コンクリート、仮設工事などを担当する部下を取りまとめ、隣接する3つの他街区との調整を含め、東棟全体の施工調整を行っている。「主任として7人もの部下に指示を出すというのは、非常に大きな経験になると思います。自分が直接担当できない歯痒さだったり、指示が意図したように伝わっていなかったり、苦労することも多いですが、毎日が勉強です」と有坂。
ここでの指示に役立っているのがグループチャットだ。「部下の仕事量を見ながら仕事を割り振ることが、上司として非常に大事な役割だと思っています。工事の担当、役割分担が曖昧であると、計画や問題への対応が遅れ、工事が遅れる原因になることもある。グループチャットで指示を出せば、その人が責任を持って仕事に取り組めるし、誰が何の仕事をやっているか、チームで情報共有できます」と有坂。こうした気配りが、部下がのびのび活躍できる環境をつくっている。
A街区では圧倒的な物量と特殊な作業をこなすため、多くの職人が必要で、鳶職だけで4社が競合している。課題となるのは、各社の品質レベルを確保することだ。久保田は「グループチャットで1社に作業手順や安全設備の不備を指摘すれば、他の会社もそれを見て気を付けてくれる。あの監督はこういうところを良く視ていると思わせることが大事。良い意味で競い合わせることで、全体のレベルを引き上げられるように努めています」とチャット活用法を語る。

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03 現場のいま

若手がぐんぐん成長中

韓国出身の金はマレーシアでの現場経験を経て、2020年12月よりA街区のCFT柱の施工管理を担当している。鋼管にコンクリートを打ち込んで柱にするCFTは常に時間との戦いだ。工場から生コンが出荷されてから120分以内に柱一本打ち終わらなければいけない。コンクリートが途中で固まってしまっては取り返しがつかないからだ。地上のポンプ車からコンクリートを鋼管柱に圧送・圧入し、規定のスピードでコンクリートが充填されているかをチェックするのが金の仕事。毎日打設計画書を作成し、コンクリートの仕様や機器・人員を配置し、品質検査を行い、報告書にまとめる。通常の現場であれば数日で終わる工程だが、15か月間ほぼ毎日これを繰り返すというから驚きだ。
「現在15階から19階までの柱にコンクリートを打設しています。日中は現場を離れることができず、事務作業は朝と夕方に行っています。時間との戦いなのでプレッシャーもありますが、ルーティンを守り続けています」と金。特に事前の準備を大切しているという金は、「最初に作業するときは現地を自分の目で確認してから進め、職人さんへの指示は図面や場所の写真を添付して正確に伝わるようにしています」と心構えを話す。
 2019年入社の藤原は、この現場にたくさん来ている実習生の1人だ。職種は構造設計で、研修の一貫として2021年7月にB-2街区の現業グループに着任。研修とはいえ、コンクリートの打上検査や配筋検査の実務にあたっている。「現場のスピードがとても早く、能動的に動くことを意識していないと出遅れてしまいます。だから、昼礼会議や予定表で翌日の現場の流れを把握し、自分が役立てることを考えて動くようにしています」と藤原。「担当以外の会議でも、オンライン会議であれば参加がしやすいため、実務が学べてとても勉強になっています。またこの前、初めて職人さんに指示を出させていただきました。職人さんと話すのが初めてだったので緊張しましたが、良い経験になりました」と目を輝かす。

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04 未来に向けて

それぞれの
自分史上最高の仕事

「せっかく施工会社の設計部にいるので、現場が分かる設計者になりたい」と藤原は夢を語る。「このくらいのスパンなら、継手は1か所で鉄筋はこれくらいの長さだろう、などと今までは設計していましたが、実際持ってみたら持ち上がらないとか、そういう生の経験ができるのは有難い。こんな設計したら現場は困るだろうなということが分かる設計者になっていきたい」。そう語る藤原の言葉に、シミズの現場力の真髄が隠されている。シミズでは“三現主義”に基づき、若い係員が現場の最前線に出ることが推奨される。若い頃に職人と一緒に動いた経験が、計画を考えて実行する際に血となり生きてくる。泥臭い部分を含めて現場のことを深く理解していること。それがシミズの強さの源だ。
「ここは、自分史上最高の現場です」とみんなが口を揃える。「マレーシアから戻ってきた最初の現場がここでした。日本一の建物をつくるため、責任を持って一生懸命にやりきりたい」と金。久保田は「鉄骨の建て方を対角で進めていたり、今まで知らなかったことがあちこちで行われているので、見回すだけで勉強になります。今後の案件に生かせることばかりです」と語る。工事全体の施工調整を行う有坂は「自社や他社も含め、これだけ様々な立場の人とコミュニケーションをとる現場は他になく、交渉や調整をするスキルが日々磨かれています。ここで培った人との繋がりは、今後の財産となるはず」と未来に目を向ける。
それぞれの“自分史上最高の仕事”。そこで培われた経験や人脈、磨かれた技術は、未来の清水建設の礎になっていくに違いない。

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Profile

久保田 理人

東京支店 虎ノ門・麻布台プロジェクトA街区建設所

入社年:2013年

主な業務:施工計画・施工管理

Profile

有坂 徹

東京支店 虎ノ門・麻布台プロジェクトB-2街区建設所

入社年:2013年

主な業務:施工計画・施工管理

Profile

金 孝仁

東京支店 虎ノ門・麻布台プロジェクトA街区建設所

入社年:2014年

主な業務:施工計画・施工管理

Profile

藤原 有希

設計本部 構造設計部2部

入社年:2019年

主な業務:検査業務