生産施設の被災状況分析
シミズのしごとトップページはじめに
2011年東北地方太平洋沖地震は、東北から関東にかけての太平洋側の広域に大津波や大きな揺れをもたらした。
本レポートは、今回の大地震を貴重な教訓とし、今後の事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)や地震防災の参考となる資料の提供を目的として、企業の被災状況についての公開情報に基づいて、今までは行われていない生産施設の被災状況と立地地点における震度階との一般的な関係分析を行い、結果をとりまとめたものである。なお、特定の企業だけを対象とした分析は行っていない。また、生産施設の復旧状況について考察を加えるために、生産施設の津波被害の有無に触れているが、津波被害に対する定量的な分析は行っていない。
情報収集の対象とした生産施設数と生産施設の産業別の構成を図1.1に示す。これらの情報は、東京証券取引所の適時開示情報、新聞記事、各社のHPなどから収集を行ったものである。収集したデータは上場している製造業293社の546生産施設であり、内訳は、電機・情報(135)、素材・エネルギー(134)、自動車・機械(80)、生活・医療(197)である。
情報収集の対象とした生産施設数と産業別の構成
影響が公表された主な生産施設と震度階との関係
2011年東北地方太平洋沖地震による被害状況や影響が公表された企業では、多くの生産施設の立地地点における震度階が5強から6強以上となっている。
情報収集した企業の産業別生産施設数と震度階との関係
影響が公表された主な生産施設の所在地
今回の大地震による影響が公表された生産施設は、東北から関東の沿岸地域と東北自動車道周辺の内陸部に位置しているものが多い。産業別に見ると、素材・エネルギーと生活・医療の生産施設は、他産業に比べて沿岸部に位置しているものが多い。
(独)産業技術総合研究所のQuiQuakeによる計測震度相当値分布図と情報収集した生産施設の所在地との関係
建屋が被害を受けた割合
天井や間仕切壁を含めた建屋が被害を受けた割合は、震度階が高くなるにつれ大きくなる明瞭な傾向が見られる。産業別に見ると、電機・情報の生産施設が他産業の生産施設よりも建屋被害を受けた割合が高くなっている。震度5強以下では、軽微な被害事例が多く、震度6弱以上では天井や壁の落下など生産に影響を及ぼす被害事例が比較的多い。なお、震度6弱以上でも主要構造体の被害事例は少ない。
生産施設の建屋が被害を受けた割合と震度階との関係
設備が被害を受けた割合
震度階が高くなるにつれ設備が被害を受けた生産施設の割合が高くなる傾向が見られる。設備被害は建屋被害より多く生じており、震度5強以上では60%以上の生産施設で何らかの設備被害が生じている。産業の違いによる設備被害の割合については、大きな違いは見られない。
生産施設の設備が被害を受けた割合と震度階との関係
津波被害を受けた割合
津波被害を受けた生産施設の割合は震度6強以上で高くなっており、地震による強い揺れと津波被害の両方に見舞われた事業所が多いことがわかる。生産施設の種類では、石油精製、製紙、セメントなどの素材・エネルギー関係や飲料などを製造している生活関係が多く、沿岸部に位置していることから津波被害を受けた割合が高くなっている。
生産施設が津波被害を受けた割合と震度階との関係
産業別の復旧状況
生産再開における障害について
企業から公表された情報に基づいて、生産施設の生産再開に向けた復旧活動において、自社施設の建屋や設備などの復旧以外に障害となった事象を以下に示す。
- 1)インフラの被害
- 電力や工業用水などのインフラの被害、および燃料不足や人手不足による復旧作業の遅れが生じた事例が見られた。
- 2)部品や原材料の入手困難
- 自動車産業では、特定の部品の供給が途絶えたことによる操業停止や減産となる事例が見られた。
- 3)計画停電
- 計画停電の実施期間中は工場の連続稼働ができないため、生産を再開できない事例が見られた。
- 4)余震の影響
- 余震による停電や被害発生のため、生産再開となっていた生産施設が再び生産停止となった事例が見られた。
生産再開に向けた対応について
被災した生産施設が生産再開に向けて取った対応例を以下に示す。
- 1)国内の他施設での代替生産
- 同じ製品が原材料を生産している国内の他施設で代替生産を開始し、事業継続がスムーズに達成された事例が見られた。
- 2)代替製品の調達
- 今回の大地震で被災を免れた山形県や新潟県の工場から代替製品を調達する動きが見られた。
- 3)事業所の移転検討
- 津波により壊滅的な被害を受けた企業では、内陸部や海外への事業所移転を検討する事例が見られた。
- 4)被災した事業所の復旧支援
- 特定の部品を製造している工場へは、取引先企業からの応援により、復旧作業がスピーディに進んだ例が見られた。
今後のBCPに向けての提案と当社の技術の紹介
より強固なBCPを構築するためには、対象とする施設の範囲に応じて、複数の施設や街区レベルでの対策と個別施設における対策が必要となる。また、各種対策については、ハード面の対策とソフト面の対策を併せて講じることが重要である。以下では、個別施設に対する対策、複数施設と街区レベルに対する対策、および広域被害に対する対策と当社の関連技術を紹介する。
個別施設に対する対策
今回の大地震により震度5強の揺れを受けた生産施設の60%以上で設備に何らかの被害が生じたことが明らかとなっている。また、天井落下や壁崩落などの事例も生じている。このため、各種耐震対策を実施する必要がある。
1)各種耐震対策の実施
構造物の耐震対策
旧耐震基準で設計された建物の耐震補強を促進する必要がある。
当社では、建物を使用しながらの補強技術、工事中の騒音・振動・粉じんを大幅に削減する補強技術、デザイン性を重視した補強技術などを開発し、これまでに1,700棟を超える様々な用途の耐震補強を実施している。
http://www.shimz.co.jp/theme/
bcp/normal.html

建物を外側から補強する技術の例(外付けフレーム工法)
設備機器の耐震対策
床置き機器のアンカーボルトによる強固な固定などのハード面の対策と重要機器の設置階の検討とバックアップ手段の確保などのソフト面の対策が重要となる。
非構造部材の耐震対策
天井や間仕切壁などの非構造部材の耐震対策を実施する必要がある。当社では、家具・什器・機器の移動・転倒可能性などを事前に簡易判定するシステムを提供しており、室内の安全性評価や対策による効果の評価が可能である。
http://www.shimz.co.jp/theme/
bcp/analysis.html

室内の家具転倒可能性評価の一例
2)免震構造技術
免震構造は、建物の機能性を維持し、事業継続を可能にするものである。当社の技術研究所においては、柱頭免震を採用した本館やマルチステップ免震を採用したモックアップクリーンルームなどがあり、今回の大地震においても揺れの大きさを低減する効果が確認されている。
http://www.shimz.co.jp/theme/
earthquake/effect.html

柱頭免震(当社技術研究所本館)
3)様々なリスクに対する備え
「シミズ総合BCP診断」では、建物を取り巻く様々なリスクに対する簡易な総合診断を行う。問題となるリスクがあれば更に詳細な診断を行い、災害の発生する前にリスクの低減(減災)を図る。
シミズ総合BCP診断
複数施設や街区レベルに対する対策
対象とする施設が工場や学校などの施設群の場合には、複数施設や街区レベルに対する対策の検討を行う必要がある。以下の対策技術は、個別施設に加えて、複数施設や街区レベルに対しても適用可能である。
液状化対策
液状化の発生が予想される地盤においては、液状化対策を行う必要がある。当社では、液状化解析システムの評価により、建物に応じた種々の地盤改良・補強方法の提案が可能である。
http://www.shimz.co.jp/tw/tech_sheet/
rn0111/rn0111.html

三次元液状化解析による液状化対策効果の確認例
津波に対する対策
津波に対しては、防潮堤や防波堤の設置などのハード面の対策と避難場所の確保と避難訓練の実施などのソフト面の対策が重要となる。 当社の津波避難シミュレーションシステムは、地震後の避難者の動きと津波遡上の状況をCGによりビジュアルに表示することができるため、避難計画の立案に活用できる。
http://www.shimz.co.jp/tw/tech_sheet/
rn0035/rn0035.html
避難シミュレーションのイメージ図
停電に対する対策
BCPや計画停電への対策として、停電への備えが重要と考えられる。当社の「シミズ・スマートBEMS」は、基幹システムなどのダウンを防止できるので、地震発生直後の緊急対策業務に貢献できる。
http://www.shimz.co.jp/tw/tech_sheet/
rn0245/rn0245.html
シミズ・スマートBEMS
広域被害に対する対策
今回の地震では多くの企業が被災しており、生産再開における障害として部品や原材料の入手困難も公表されている。また、被災した企業が生産再開に向けて取った対応として、国内の他施設での代替生産や事業所の移転検討が挙げられている。
当社の地震リスク診断システムでは、複数の拠点施設と部品や原材料のサプライチェーンを考慮した地震被害予測を行うことができるため、広域被害に対するBCP策定の支援が可能である。
http://www.shimz.co.jp/tw/tech_sheet/
rn0282/rn0282.html
東京湾北部地震に対する被害予測例
おわりに
個別施設や複数施設、あるいは広域被害を対象としたBCPにおいては、今回の地震による被害状況を考慮して、今後のBCPを策定・運用することが重要となる。当社では、今回の地震による被害データのより詳細な分析を行い、お客様へのご提案に活用して行く予定である。


















