©北嶋俊治

CASE 03

清水建設 北陸支店新社屋
−クリエイティブ フィールド−

コミュニケーションと空間のあり方を同時にデザイン

未来につなげる新技術の採用” “金沢の歴史・伝統との融和” “働き方改革、健康増進に資するオフィスづくりの3つをコンセプトとした弊社の支店建替計画です。今回は、執務空間のプランニング初期段階における、検討過程の一例をご紹介します。

計画地
: 石川県金沢市
延床面積
: 約4,100㎡
階数
: 地下1階 地上3階
構造
: RC造, S造
段階
: 竣工(2021年)

> 最高水準のゼロ・エネルギー・ビル、北陸支店新社屋

コンピュテーショナルデザインで
クリエイティブ フィールド*を実現

ワンプレートの中に多様なワークエリアが混在し、より創造的で柔軟な働き方を誘発するオフィス (クリエイティブ フィールド*)を目指しました。そこで、 コンピュテーショナルデザインを用いて、アクティビティの関係性や、空間の特性から、新たなプランニングの可能性を探りました。

* 「クリエイティブ フィールド」「Creative Field」は商標登録出願中です。

緩やかにつながる
多様なワークプレイス

さまざまなワークエリアが混在する執務空間

組織の近接性*1を評価

既存の北陸支店社屋では、いわゆる島型オフィスレイアウトで部署を基本とした固定席運用となっていましたが、建て替えに伴いフリーアドレス(グループアドレス)を導入し、緩やかにつながる多様なワークプレイスの実現を目指しました。
そのために、アンケート調査およびセンシング*2による利用実態や働き方に関する調査を北陸支店勤務の約150名の社員に実施、取得したデータから「社員間」および「チーム間」のコミュニケーションをネットワークグラフとして可視化し、近接性を把握しました。さらにそのグラフをもとに、いくつかのコミュニティ(グループ)に分割し、フロアゾーニングに反映させました。

近接性を可視化するネットワークグラフ

*1 近接性:「コミュニケーションをとる頻度などの人と人の関係の深さ」を近接性としてとらえ、ワーカー間の直接の対面による会話の回数(累積時間)を測定して定量化しました。
*2 センシング:センサー(感知器)などを使用して、さまざまな情報を計測・数値化する技術の総称。本計画ではオフィス内に電波受信機を設置し、社員には個人識別用のID情報を一定周期で発信するビーコンを携帯させ、社員の位置を算出しました。さらに騒音計により計測した音圧情報から会話の有無を判別しました。

部署とアクティビティの関係性を
紐づけて検討

各部署の作業内容を考慮し「2人作業」「情報共有」「対話」など、想定されるアクティビティに合わせた空間や家具を用意し、関連性の深い部署を結びつけていくことで、相関図をダイアグラム化しました。
それぞれのワークプレイスが在籍人数比に応じたバブルの大きさで可視化され、空間サイズと紐づけられた関係性を考慮しながら、配置計画を行っています。

相関関係を考慮したプランニングの検討過程

部署とアクティビティの関係性を3Dで紐づけ

グループアドレスを考慮して
在席率を可視化

部署によっては、外出が多いところや常にデスクワークをしているところなど、在席率に違いが生まれます。
これらを家具の配置や形状に反映させて3Dで可視化。他部署と共有できる場所や、前出のセンシング調査により分類された各コミュニティを基本とするグループアドレス(あるユニットの中でのフリーアドレス)などを考慮して、計画を行いました。

ワークプレイスを分類して
より直感的に計画

各ワークプレイスは、各部署の拠点となる「Main ワークエリア」、作業内容によって共有する「ABW*3エリア」、主に休憩する「Refreshエリア」に分類して色分けをすることで、直感的にイメージしながら配置計画を試行錯誤しています。

相関図をアクティビティの種類で色分け

各アクティビティの種類と家具

*3 ABW:Activity Based Working (アクティビティ・ベースド・ワーキング)の略、時間や場所を自由に選択できる働き方のこと。

ワンプレートの
空間特性

一体が見渡せるワンプレートの執務空間

視線解析を用いて、
空間のポテンシャルを可視化

全部署が見渡せる場所や少し隠れる場所が混在することで、多様な働き方にあった空間のバリエーションが広がります。
コアや壁の配置の計画とともに視線のシミュレーションを行うことで、少し囲まれている場所・シンボルツリーが見える場所など、場所のポテンシャルをデジタルに可視化し、配置計画のガイドとして場所性をコントロールしています。

各部署のメイン動線から
偶発的な出会いをデザイン

各部署におけるメインのワークプレイスと、階段やWCなどの最短ルートを自動的に算出して結ぶことで、日常動線を可視化。
動線が重なる場所は、他部署同士が偶然出会う場所でもあります。これらを媒介性による評価でビジュアライズしながら、意図的にコミュニケーションを誘発する仕掛けとしてデザインしていくことで、活発でより創造的な空間づくりにアプローチしました。

意匠設計

岡崎 真也

ワークプレイス計画

小河 麻衣子


コンピュテーショナル
デザイン

牧 真太朗

コンピュテーショナル
デザイン

天利 竹宏

計画の初期段階において、与条件を綿密に調査しパラメトリックに整理・調整することで、より幅広く、そして精度高くプランニングを検討することができました。また、複数の評価軸で解析をかけ可視化することで、様々な案の特徴や妥当性を同時に判断していくことができ、一度多くの可能性を広げそこからより最適な案を模索していく手助けとなりました。

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