CASE 01

東急コミュニティー技術研修センター
NOTIA

建物そのものが「気づきの場」となる研修施設

研修施設としてのコンセプトと最先端の環境コンセプト。その両方を満たすため、デジタルデザインによるソリューションで、NearlyZEB*を実現した事例をご紹介します。

*NearlyZEB:1次エネルギー75%削減を達成した建物(東京都事務所用途で初の達成)

計画地
: 東京都
延床面積
: 2,446.73㎡
階数
: 地下1階 地上5階
構造
: RC+S併用構造
段階
: 竣工(2019年)

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コンピュテーショナルデザインで
3つのテーマにアプローチ

  1. 1. HUBとサポートによる建物構成
  2. 2. コミュニケーションの場づくり
  3. 3. 環境と建築の有り様

研修の中心となる場を「研修HUB」、外部環境と接し、研修HUBを包む場を「サポートスペース」として計画。相互に補完しあう関係をつくることで、複合的な効果が生まれる構成をイメージしました。

中心の「研修HUB」をRC造、「サポートスペース」をS造とし、周囲の光と風を取り込み、内外に様々な関係を創出しています。

研修の中心となる場を「研修HUB」、外部環境と接し、研修HUBを包む場を「サポートスペース」として計画。相互に補完しあう関係をつくることで、複合的な効果が生まれる構成をイメージしました。

中心の「研修HUB」をRC造、「サポートスペース」をS造とし、周囲の光と風を取り込み、内外に様々な関係を創出しています。

法規制から導かれた
建物構成

外観全景

インタラクティブなボリュームスタディ

敷地は複数の用途地域(商業地域・住居系地域)に分かれており、複雑な法規制(斜線制限・日影規制等)をクリアしながらボリュームスタディを行う必要がありました。
3D空間上に法規制を可視化させ、法チェックと建物形状検討のトライ&エラーをインタラクティブに実施*1。直感的な操作で建物モデルを修正しながら、法規制空間の中におさまるボリュームを模索し、「研修HUB」と「サポートスペース」による建物構成を見出しました。

*1:斜線・日影・天空率等のボリュームスタディをシームレスに行うオリジナルツールを開発(開発協力:アルゴリズムデザインラボ、生活産業研究所)

法規制空間内の干渉チェック

日影規制

天空率算定

自然エネルギーの可視化が導く
環境建築

ウィンドキャッチャーを設けた壁面(ウロコ壁)

風を取り込む
ファサードデザイン

周辺に吹く風が建物のどこに当たるかをシミュレーションして、室内に効率的に風を取り込む建物形状および換気窓の計画を行いました。中間期の主風向のシミュレーションから外壁をなめるように風が流れているのがわかります。

主風向(北北西風)による屋外気流シミュレーション

自然換気ポテンシャルマップ

正圧

負圧

風による外壁の圧力を可視化した自然換気ポテンシャルマップ*2を作成。風による圧力差が大きくなる箇所を分析し、換気口の配置計画を行いました。さらに、外壁をウロコ状の壁にすることでウィンドキャッチ効果を高め、自然換気の促進を図っています。このウロコ壁は対面する近隣建物との見合いの低減を図り、居住環境の向上にも役立っています。

*2:全風向(16風向)の外皮圧力を解析し、中間期の風向頻度分布で重みづけしたものを自然換気ポテンシャルマップとしました。期間を通して正圧になりやすい箇所、負圧になりやすい箇所を可視化します。一般に正圧が出ている部分と負圧が出ている部分に換気口を設けると、自然換気が効率的に行われます。

室内環境のシミュレーション

研修HUBは、サポートスペースと外断熱に守られる魔法瓶のような効果が予想されました。これを確認するために、シミュレーションで室内環境の快適性を確認しています。

温熱快適性PMVの評価

ワッフルスラブ*3の輻射効果を予測温冷感申告PMV*4にて評価しました。ワッフルスラブ内部と外周部には適度な環境差がうまれ、研修HUB空間に熱が閉じ込められて快適な環境になることを確認できます。

*3 ワッフルスラブ:鉛直荷重に対するたわみを小さくするために格子状に梁型を設けたスラブ
*4 PMV:室温、平均放射温度、相対湿度、風速、着衣量、代謝量により、人間が暖かいと感じるか、寒いと感じるかを表す温冷感の指標。-0.5~0.5が推奨範囲。

3F研修HUB

研修HUBは3.2m×3.2mのワッフルスラブを単位とし、空調・照明エネルギーの大幅な削減と快適性を追求しています。放射空調スポットファンによる気流の対流シミュレーションを行い、技術研究所での実験で実証。デジタルとアナログの両面でソリューションを提供しています。

対流シミュレーション

気流の可視化実験

フィンによりコントロールされた
出会いの結節点

北面ファサード

光環境と視線制御の最適化

コミュニケーションの場を明るく保ちながら日射を遮りつつ、近隣建物との見合いを低減するという相反する課題を、Grasshopperを用いてバランス良く解決しています。
外部のフィンの角度の値をパラメータとし、室内に入る視線が少なくなるパターンを導き出します。
並行して、年間平均照度シミュレーションを実施。直射光を遮蔽しながら、間接光だけで快適な明るさが確保できることのチェックを同時に行っています。

視線と日射を確認しながらフィンの位置・角度を検討 / 視線遮蔽シミュレーション / 年間平均照度シミュレーション視線と日射を確認しながらフィンの位置・角度を検討 / 視線遮蔽シミュレーション / 年間平均照度シミュレーション

柔らかなグラデーションのある
ファサードが生み出す表情

3Dプリンターを活用して複雑なフィン形状のスタディを行い、柔らかなグラデーションを生み出すファサードデザインを追求。これらのデジタルデザイン手法を駆使することで、プライバシーに配慮しながら、自然光を取り入れた明るいコミュニケーションスペースを実現しています。

グラデーションのあるファサード

3Dプリンターで出力しデザイン検討

コミュニケーションスペース

ワッフルスラブの可能性

1Fエントランスホール

設計コンセプトを具現化する構造計画

研修HUB(RC造)の無柱化と、外周部のサポートスペース(S造)による軽快な構造を実現するため、スラブ厚を小さくしつつ梁の性能を活かせるワッフルスラブを採用しました。
構造要素の各諸元をパラメータとして、最適化手法により、コンセプトを実現しうる解を自動探索します。
最適化計算を経るごとに、設計目的を満たすように諸元の値を自動で収束させ、候補となる解を導きます。

解の探索

自動探索により得られた解の候補から、設計者が最も良い案を考察し絞り込み*5、最終決定をします。

解の絞り込み

*5 Shimz Explorer: Brute Force Methodによる最適解の絞り込み*6ツール(開発協力:Thornton Tomasetti / Core Studio、アルゴリズムデザインラボ)
*6 パラメトリックに生成した膨大な案の可能性の中から、複数の目標値を設定して解の絞り込みを行う手法

意匠設計

今井 宏

意匠設計

加登 剛司

現在とこれからの社会にとって、多様性の融合・調和といったコンセプトが重要であると感じています。コンピュテーショナルデザインは、より多様なパラメータがひとつの建築にバランスをとりながら共存する特別なシステムをつくることに役立ちます。さらにそれは建築の構成や表情も変化させ、新たな調和する建築を創造していきます。

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