CASE 02

ANA インターコンチネンタル
別府リゾート&スパ

世界のBEPPU
一翼を担う五つ星ラグジュアリーホテル

日本を代表する温泉地である別府に、世界各国からのエリートトラベラーを迎え入れるに当たり、「グローバルリゾートとしての設え」と「別府温泉らしさ」の融合を意識した設計としました。ここではデジタルデザインにより実現した露天風呂傘についてご紹介します。

計画地
: 大分県別府市
延床面積
: 14,357㎡
階数
: 地下1階 地上4階
構造
: RC造, S造
段階
: 竣工(2019年)

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コンピュテーショナルデザインで
視線制御と風情を併せ持つ
「傘」を実現

インテリアデザイナーから提示された「林立する傘」を用いて、上部客室から露天風呂への視線を有効に遮蔽する必要があったことから、コンピュテーショナルデザインによるアプローチを行いました。

見せずに見せる
露天風呂

露天風呂1

景色と視線のトレードオフ

絶景を望む野趣あふれる露天風呂内に、客室等からの視線を遮蔽する圧迫感の少ない「傘群」を計画するため、多方向からの視線が露天風呂内にどの程度到達しているのか定量的に評価できる視線検証プログラムをGrasshopperで開発しました。

検証用Rhinoモデル

客室群(視点)と露天風呂(対象点)を結ぶ多量の視線(下図マゼンタ線)を自動生成。この約1,000万本にも及ぶ視線群の総当たり検証を実施し、傘の配置や形状を調整することでプライバシーの保護と空への抜け感の最大確保を図りました。

Rhino+Grasshopperを用いた視線検証過程

3次元的にどの位置から見えるか見られるかが確認可能

客室から見た露天風呂の眺め
(杉ルーバー製の傘群が視線を遮る)

デザインに呼応する
構造解析

露天風呂2

傘のカタチと力の流れ

周辺からの視線を気にすることなく、まるで自然の中でリラックスしているかのような空間を実現するため、傘の形状は「樹木」を連想するものとしました。この木々に見立てた傘状の工作物は、上記した景色と視線のトレードオフにより導き出された配置のもと、形状の微調整を繰り返す必要がありました。そこで、力学的アプローチを用いて個々の傘形状を決定するGrasshopperツールを作成しました。

露天風呂傘・構成ダイアグラム

想定する外力として地震と風を設定し、力の流れと部材の変形量を確認しながらデザインを行い、露天風呂利用者の景観への眺望を極力遮らない最小部材サイズの選定を目標としました。
この目標を達成するため、意匠設計者自身が傘形状に変更を加えるのと同時にリアルタイムで応力・変位量の算定、評価および可視化を行い、構造部材の最適化を図るツールを作成しました。
このツールを構造解析プラグイン(Karamba3D)と連動させることで、同時に鉄骨径の最小化を図ることができます。

傘形状の検討過程

それぞれの傘の変形量をもとに干渉機能チェックを付加。干渉する傘を特定した後に再度意匠計画と調整し、傘の高さを決定します。

変位量と隣接傘の干渉確認前

変位量と隣接傘の干渉確認後(干渉している傘を赤色で表示)

干渉確認前
干渉確認後

変位量と隣接傘の干渉確認(干渉している傘を赤色で表示)

意匠設計

丸山 亮介

意匠設計

元木 智也

構造設計

安達 一喜

プライバシーを確保する一方で開放感を最大確保するという相反する命題に対し、コンピュテーショナルデザインの導入は大変有効でした。木々のスレンダーなプロポーションの実現にも寄与しただけでなく、多方面からの視線や多数対多数の干渉判定という膨大なデータの可視化も関係者の合意形成に大きく貢献しました。コンピュテーショナルデザインを用いて唯一無二の風景を創るアプローチの有効性を実感できたように思います。

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