徹底した木材管理と高度な規矩術と
仕口を採用した伝統木造建築
長明寺 本堂の工事の様子をご紹介いたします。
既存長明寺の本堂は、建立して約180年になりますが、老朽化が進み、開山四百年記念報恩事業として、今回本堂の建て替えを行うことになりました。
工事前の御本堂
伝統木造建築において木材の選定が大切な作業となります。また木材の乾燥には多くの時間が必要なため、設計図を元に素性の良い欠点の少ない木を工程の早い時点で調達します。
木材の選定 2009年11月
山から選び出された原木の皮をむき、荒挽きをかけた状態でしばらく自然乾燥します。
屋内での自然乾燥
荒挽きから最終仕上りの手前の寸法で製材した状態で木材検査を行います。具体的には乾燥状態・曲り・割れ・傷・節、使用部位によっては木目の流れや木肌の美しさまで検査します。
木材検査
木材の準備と並行して設計図を元に伝統木造建築の意匠上重要なポイントである軒廻りを現寸で作図し、御施主様と設計者にご確認をいただきます。
現寸図は、実際の木材加工においての型板作成に活用されます。
屋根の軒先現寸図の掲示
地鎮式の様子
ご住職が催事を執り行い、檀家様・設計者・施工業者が式典に参列しました。
地鎮式 2011年3月26日
大切な御本堂を支える基礎躯体工事です。200年耐久コンクリートを採用して耐久性を向上しています。
近隣の皆様のご迷惑とならないよう、車両誘導や騒音に気を配りながら作業を行いました。
基礎コンクリートの打設状況
立柱式の様子
上棟式に並んで大切な式典で、建物の柱の根元を固めて建物の永遠堅固を願う儀式です。
立柱式 2011年5月30日
予め加工場で仮組みを終えた部材を現場へ搬入し、仮組みシュミレーション時に確認した手順どおりに組み立てます。
木材の仕口にも伝統木造建築ならではの工夫が施されています。
軸組の様子
2012.7.2更新
改良本瓦葺の施工状況です。
軒先周りから従来の平瓦二枚と素丸瓦一枚の計三枚の瓦を一体成型した改良本瓦を、軒先から横桟と縦桟でロックされた状態で、葺き上げていきます。
上棟式の状況です。
建物の中心となる棟木(むなぎ)を取り付けた頃に行う式典で、写真は曳綱の儀を執り行っている場面です。
左手前で右手に扇子を持っている工匠長が指揮を行い、右奥に両手で振幣(ふりへい)を持つ工匠の発声を合図に、棟木に結ばれた綱を参列者が軽く3回引く一連の所作を3回繰り返します。
散餅・散銭の儀の状況です。
槌打の儀の後に執り行われ、ステージ上からお寺関係者により、一般のお集り頂いた方へ紅白の餅や、散銭を撒きます。
屋根の上には、破魔弓,破魔矢、弊串が見えます。
外壁漆喰下塗の施工状況です。
古くから防火性と耐久性に優れた材料の漆喰を木摺下地(隙間の空いた板の下地)の隙間に食い込むように、鏝(コテ)を強めに押し当てながら塗り込んでいきます。
屋根瓦の施工状況です。
屋根面中央部は本瓦葺きの見た目の重厚感を損なうことなく強度を増しつつも軽量化された改良本瓦で他の役物の部分は従来の本瓦で葺き上げて、瓦葺き屋根の美しさを造り上げていきます。
完成後の状況です。
御本堂外周を覆っていた足場が解体され、建物の外観が現れて来ました。
しなやかで美しい軒反が確認できます。
完成後の外観
開山400年記念報恩事業として建て替えられた本堂は、伝統木造建築として日本の伝統美を継承するデザインで、境内東側の庭園部分をゆったりと確保した荘厳な建物として完成いたしました。
完成後の内観
施工データ
名 称 | / | 日照山長明寺開山四百年記念報恩事業 |
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所在地 | / | 東京都台東区 |
設 計 | / | 清水建設 |
規 模 | / | 延床面積 260 m2 地上1階 |
構 造 | / | 木造 |
竣 工 | / | 2012年3月 |