2011年10月14日
Vol.8 次代のものづくりに向け、若き職人の養成を支援
製造業や建設業など日本のものづくりにおいて、若手技能者の育成と確保が大きな課題となっています。こうした中、ものつくり大学では、ものづくりの技と心をあわせもつ人材の育成に向けて、カリキュラムにインターンシップの制度を取り入れています。清水建設 東京木工場では、このインターンシップに協力し、2006年度から毎年、同大学の学生を研修に受け入れ、若手技能者の育成を支援しています。
ものつくり大学のインターンシップ 《仕事の意味と自分の適性を確認し、将来像をつくりあげる》
ものつくり大学のカリキュラムにあるインターンシップの期間は40日間です。この長期間のインターンシップは、実学を重視する同大学ならではのもの。製造学科では3年次と4年次に、建設学科では2年次と4年次にそれぞれ実施し、毎年350名を超える学生がインターンシップを履修しています。
このインターンシップは、学生が自らの専門分野に関連する企業などで就業研修をすることにより、日頃、大学で学んだ知識や技術、技能と、仕事をする意味や自分の適性を確認、認識することが目的。その上で、大学での学習内容を適切に選択しながら、自分の将来像をつくりあげていくことを目指しています。
学生の受け入れ先は、先進的な技術を扱う製造業や建設業などから、宮大工のような伝統的分野まで幅広く、その数は延べ3,000社を超えます。毎年300~400社の企業や団体が協力するのは、若手人材の確保の見極めや、地域・社会貢献といった受け入れる側の理由だけでなく、学生の学ぶ意欲と研修に真剣に取り組む姿勢が高く評価されてのこと。実際、受け入れ先に行ったアンケートでは、ほぼ全てが 「今後も学生を受け入れたいと思う」と回答しています。また、インターンシップ先に就職した卒業生もおり、清水建設 東京木工場では2008年度に、その前年度に研修で訪れた学生を1名採用しています。
東京木工場での研修内容 《木工職人を間近で見て、学び、技と心を磨く》
2011年度の東京木工場インターンシップ研修は、6月20日から8月11日までの日程で行い、ものつくり大学・建設学科に所属する2名の4年次生が、ものづくりの現場の“今”を学びました。
研修では、はじめに、木工場の作業の流れを把握すべく、工場内を見学します。木材の乾燥や木取(丸太や大形の木材から必要な寸法の材料を切り取ること)、加工、塗装など、木材を扱う上での基礎知識についても、実際の作業を見て、職人に説明を受けながら、一つひとつ学んでいきます。さらに、学生が普段なかなか見ることのない単板について学ぶ機会を設け、単板の検収と選別作業を実体験します。
研修の大半を占めるのが「ものをつくる」実習です。化粧合板の製作や各種造作の実習では、実際に進行中の作業に入り、職人から指導・指示を受けながら製作を手伝います。その中で、学生は技術だけでなく、作業の段取りや安全管理を学び、職人の仕事へのこだわりや心意気にも触れていきます。 一方、インターンシップ期間中には、東京木工場が社内外から参加者を募り開催する、夏休み親子ものづくり体験教室のアシスト作業にも参加。企業の社会貢献活動に携わるという貴重な経験を得ます。
研修の仕上げは、修了課題の家具製作。製作にあたっては、職人のアドバイスを受けながらも、図面の描き起こしから木取、加工、組み立てなど、完成までの段取りと作業をすべて自力で進めなければなりません。大学で学んできたこと、東京木工場で新たに学んだことをどこまで形にできるのか。この課題をクリアした学生は、一回りも二回りもたくましくなって大学へ戻るといいます。40日間、ひたむきに過ごした今年の学生2名の課題作品は、研修最終日前日、見事に完成しました。
製作に携わった建具の取付を見たときは喜びが倍増
ものつくり大学 技能工芸学部 建設学科
4年次生 朝田 芳一さん
研修が始まってまもなく、実際に進行中のプロジェクトにおける建具の製作に携わりました。タイミングよく製作工程の最初から作業に参加し、研修期間中に完成まで見届けることができたので、その達成感はとても大きなものになりました。しかも、研修終了前には、その建具の現場への取付を見学することもでき、「つくりあげた!」という喜びが倍増しました。
東京木工場の職人さんたちは、頼もしくて楽しいの一言。仕事中は厳しく真剣に作業に取り組む一方で、休憩や仕事が終わると和気あいあい。そのおかげで、日々の研修はもとより課題製作時も、たくさんのコミュニケーションを取りながら、ものづくりのおもしろさや奥深さ、実際の仕事の大変さ、やりがいを感じられる時間を過ごせました。
段取りの良さ、手際の良さに圧倒されました
ものつくり大学 技能工芸学部 建設学科
4年次生 栗田 徹さん
一番勉強になったのは、職人さんの段取りの良さ、手際の良さでした。全体の作業を見渡し、いかに効率よく作業を進めていくかが常に頭の中にあって、そのとおりに体を動かせる。研修当初は、その姿にただただ圧倒されました。そして、職人さんたちと一緒に作業を重ねるうち、それは、木の性質に関する豊富な知識、重要な作業ポイントを瞬時に見抜く目、要求される精度を実現する技術があってこそできることなんだと実感。課題作品の製作では、職人さんの段取りを自分なりに見習い、実践するよう努めました。 夏休み親子ものづくり体験教室も、貴重な思い出になりました。木とふれ合い、喜びはしゃぐ子どもたちの姿を見て、こちらも楽しくなり、ものづくりの仕事に携わっていきたいという気持ちが一層強くなりました。
東京木工場の職人さんたちは、頼もしくて楽しいの一言。仕事中は厳しく真剣に作業に取り組む一方で、休憩や仕事が終わると和気あいあい。そのおかげで、日々の研修はもとより課題製作時も、たくさんのコミュニケーションを取りながら、ものづくりのおもしろさや奥深さ、実際の仕事の大変さ、やりがいを感じられる時間を過ごせました。
サイエンスキャンプとは
埼玉県行田市で平成13 年4月に開学。技能工芸学部に、製造学科と建設学科がある。両学科の1年次生から4年次生を合わせて、約1,000人の学生が在籍(2011年4月1日現在)。大学院には、ものつくり学研究科(修士課程)がある。
ものつくり大学は、基本的技能と「ものつくり魂」を基盤とし、科学・技術の知識とマネジメント能力を加え、新時代を切り拓く感性と倫理観を備えた人材の育成を目指している。このため、従来の理工科系大学とは異なり、カリキュラムでは実学を重視し、多くの実習科目と長期間のインターンシップを設けている。
関連リンク
インターンシップ研修中、8月4日の学生2名の東京木工場での様子
8:00 出社
8:20 ラジオ体操
8:40 朝礼
9:00 課題作品制作
12:00 昼食
13:00 課題作品制作
17:10 終業
研修終了まであと一週間とあって、この日は午前も午後も課題作品の製作に終始。東京木工場のベテラン職人に積極的に相談し、アドバイスを受けながら、加工作業に懸命に取り組んでいました。