
2012年6月25日
Vol.14 清水建設 新本社建設の要所で匠の技を発揮
2012年5月25日、東京・京橋に、清水建設新本社ビルが竣工しました。東京木工場では、その建設において匠の技と経験を活かし、家具や建具などの製作をはじめ、様々な木工事を行いました。中でも、特に苦心し、職人一丸となってつくりあげたのが、コンクリート打設用の木製型枠でした。
寸分違わぬ精度で杉板のコンクリート型枠を製作
新本社の低層部、外部から見えるコンクリートの柱表面やエントランス内の壁には、精巧な木目模様が映し出されています。これは、杉板を用いた型枠にコンクリートを打設し、杉の木目をコンクリートに転写させたもの。
杉板は、木目が正確に転写するよう、表面に浮造り仕上※1を施し、その板を本実加工※2としてパネル加工の後に、型枠に組み上げていきました。一連の工程は、新本社建設における木工事の中でも最も気を使う作業でしたが、東京木工場の職人の手仕事により、寸分違わぬ精度で完遂することができました。
※1 浮造り(うづくり)仕上:木目の柔らかい部分(夏目)を削ることで、固い部分(冬目)を浮き出させ、ツヤを出す仕上げ方法。表面の木目の模様が際立つ。連載企画Vol.3でも紹介しています。
※2 本実(ほんざね)加工:板の側面側などに凸型と凹型の加工を施し、2つの木材を結合すること。今回は5mmの凸凹を設けて木材同士を結合。

製作風景
1.工場内の様子。形や大きさ、模様のパターンの異なる型枠パネル700枚を全て製作 2.型枠に使用した杉板材。側面に凹凸の本実加工が施されている 3.加工材約2万枚を1枚1枚検品し、抜け節がある場合は同じ杉材で穴を埋めたり、ヒビにはやすりをかけるなど、丁寧に仕上げる 4.本実の杉板を、寸分の誤差もないように下地パネルに貼付けていく 5.高さの違う杉板を交互にぴったりと結合し完成 6.現場に搬入された1階の柱の型枠。5×2.3mのパネルを建て込み中 7.鉄筋に触れて傷がつかないように、慎重に杉板パネルの建て込みを行う 8.杉板パネルに囲われた鉄筋にコンクリートを流し込む 9.乾燥後、丁寧に杉板パネルをはがす 10.コンクリート打設が完了!美しい木目が転写されている
1階カフェ
1階ピロティには、日本たばこ産業(株)とのコラボレーションで、内装に木材※3をふんだんに用いた喫茶スペース「はやしの中のカフェ」が設けられています。
材料の加工にあたっては、“スペース内をはやしに見立てる”というテーマのもと、設計者と綿密に打ち合わせ、異なるサイズの木材を一つひとつ丁寧に仕上げていきました。
※3 内装制限により杉材に準不燃処理を施して使用。
木の温かみが伝わるような外観 カフェ内部。柱の一部が排煙ダクトになっており、“空間を仕切らない分煙”がテーマ
1階エントランス
1階エントランスに設置された、長さ約15mの受付カウンターと約10mのベンチ。杉の無垢材(50%圧縮材※4)を使用し、つなぎ目にはウォールナットのちぎり※5を入れています。
※4 木材の組織を軟化させ加工した材料。硬度・強度が増す。
※5 木と木を接合したり、板の割れ止めに埋め込む鼓(つづみ)型の木片
1階エントランスに設置された、木製のベンチと受付 鼓型の木片を埋め込んで木を接合
2階シミズホール
新本社内のホールの壁にも、杉材(不燃木材※6)の本実加工を施しています。
※6 内装制限により杉材に準不燃処理を施して使用。
シミズホール 杉板パネルを慎重に壁に設置 最後の仕上げでは、小さな傷を一つひとつ手作業で補修