人と技術のいい関係2022.08.30

地域と共に歩む、まちづくり。

虎ノ門・麻布台プロジェクトの公共施設整備等工事(土木工区)では、新たなまちづくりに向けて複数の工事が同時並行で進められている。既設のインフラを止めず、工期を遵守するために、地面の下で古今東西のさまざまな工法を駆使。現在進行中の工事について3名のキーマンに話を聞いた。

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―担当している工事について教えてください。

高橋:私は六本木一丁目駅接続通路工事を担当しています。駅と新しいまちをつなぐ約130mの地下通路をつくるのに、現場打ちの鉄筋コンクリート(RC)造のほか、プレキャストコンクリート(PCa)工法、非開削(URT)工法という工法を採用しています。URT工法は箱型中空の金属製エレメントを地中に貫入し、そのエレメント内を人力で掘っていく工法です。上部を開削せずに工事を進められるというメリットがあります。

河内:私はこのエリアの下水道の新設工事と、A街区西側、B-2街区北側の幹線道路工事を担当しています。下水道管を圧入する推進工事の一部は、ミリングモール工法という特殊な工法で施工しました。

上嶋:私は基本的に土木工区全ての工事に携わっています。土留めや路面覆工をはじめとした仮設構造物の設計や施工計画の立案、各種関係先との協議や資料作成など、現場が工事をスムーズに進めるためのフォローを行っています。

―六本木一丁目駅接続通路工事で採用した
工法について教えてください。

高橋:道路下を走る約130mの通路の構築に3つの工法を併用しています。まずはURT工法を採用した理由についてご説明します。この区間は、交差点の下に位置しており、上には首都高が走っていて、かなりの交通量があります。仮に開削工法で通路を構築すると、車線規制が必要になる上、ガス管や水道管などの重要な埋設管の移設作業も必要になります。そこで、交通規制時間や各所との調整期間の短縮、近隣住民への影響低減など様々な観点から総合的に判断し、開削せずに工事を進められるURT工法を採用することになりました。

―URT工法は人力で掘り進めるクラシカルな
工法だと伺いました。

上嶋:はい。大きさ約1m四方の鋼製のボックス(エレメント)の中に人が入り、少しずつ手作業で土を掘り進めていく地道な作業です。エレメントをジャッキで約30㎝地中に貫入させて、その後地山を慎重に掘り出すという、作業を繰り返します。勾配のある地下通路となっており、エレメントを押し出すたびに測量し、計画線に対して±20mmの精度で施工を管理しています。

高橋:通路は両端の現場打ちコンクリートから工事を始め、URT工法が終わった後、残りの部分にPCa工法を適用します。URT工法の設備を撤去した後に鉄筋を組んでコンクリートを打つと時間がかかってしまうため、プレキャストボックスをクレーンで吊り降ろす、この工法を採用しました。PCa工法はこれから始まりますが、狭い場所でどのようにパーツを動かしていくか、3Dモデルを作成して検討する予定です。

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―下水道工事でも特殊な工法を
採用されたそうですね。

上嶋:ミリングモール工法は、下水道管を地中に圧入しながら推進機の先端のカッターで障害物を切削できる特殊な工法です。通常の推進工法では線形上に障害物がある場合、交通規制をしながら地上から掘削して障害物を取り除かないと工事が進められません。ミリングモール工法なら推進をしながら障害物の切削が可能なため、地上での交通規制などが不要になります。切崩時には1分間に0.1~1.0mmという推進スピードとなるため、通常の推進作業よりも時間はかかりますが、メリットが大きいと考えました。

河内:国道1号線の真下に下水管を通すのですが、今回の施工延長は約260mあります。ミリングモール工法を採用することで、発進立杭と到達立杭を敷地内に掘るだけで、道路上に作業帯を出さずに施工することができ、周りに与える影響が非常に小さくなります。

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―近隣住民への影響を最大限に配慮されていますね。

河内:そうですね。近隣への影響が少ない工法を選択することがまずは大切で、その他にも現場で防音対策を行っています。新設幹線道路工事も担当していますが、すぐ隣が住宅街となっている箇所があります。このため、移動式の防音ゲートの設置や、地表面をドーム型の覆いで囲うことにより、極力周囲に音が漏れないように配慮しています。

上嶋:都市部では多くの方が生活されている中でご理解を得て工事を行っていること、周辺のインフラ機能に影響を及ぼしてはならないことを忘れてはいけません。その中で周囲への影響をできるだけ小さくする工法や設備を採用して工事を進めています。

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―本プロジェクトが
他とは違うところはどんなところですか?

上嶋:これだけ大規模な土木工事が複数ある再開発事業は、なかなかありません。六本木一丁目駅接続通路工事、下水道新設工事、神谷町駅接続通路工事、歩行者デッキ新設工事、斜面整備工事、地下鉄換気口移設工事と、一つだけでも大きな工事なのに、これらを同時並行で進めています。完成後も長く安心して利用者に使っていただけるように、我々のところに上がってきた施工上の課題点を一つひとつ解決していきます。

河内:隣接工区との調整は通常、1社、2社が相手ですが、これだけ多くの街区が協力し合って工程をつくり、施工を進めていく体制は他とは違うと感じています。検討事項がここまで多い現場は初めてです。道路工事は各街区と工程を調整しながら進めています。また、近隣住民へのご迷惑がなるべく少なくなるように、再開発組合様と一緒になって工法を検討し、騒音・振動対策などを実施しています。

高橋:1つの通路で3つの工法を併用する経験ができたのも、このビッグプロジェクトだからこそですし、その難しさも分かりました。まちづくりにはインフラが欠かせないため、普通の現場以上に土木の重要性や、やりがいを感じることができています。

河内:この場所は将来、観光スポットになっていくと思います。世界中から人々が訪れる、注目を集める場所です。道路や街路樹も見た目よく仕上げていくことはもちろん、その過程にも気を配り、地域と共にまちづくりを進めていきたいと思います。

多くの関係者と調整を行いながら、特殊な工法を駆使する公共施設整備等工事。ここでの経験や苦労は、未来の大型プロジェクトに活かされていくに違いない。

Profile

高橋 伸知

虎ノ門・麻布台プロジェクト 土木工区

工事長

入社年:2001年

主な業務:六本木一丁目駅連絡通路設置工事

Profile

河内 寛之

虎ノ門・麻布台プロジェクト 土木工区

工事長

入社年:1998年

主な業務:公共施設整備等工事

Profile

上嶋 靖治

土木技術本部 技術計画部

主査

入社年:2007年

主な業務:仮設計画・設計・施工計画