人と技術のいい関係2022.01.13

このまちの未来に
想いを馳せて

虎ノ門・麻布台プロジェクト
土木工区所長

上 隆義

Profile

制約の多い都市土木

A街区、B-2街区の2つのタワーに加えてシミズが三井住友建設とのJVで施工を担当するのが、土木工区だ。A街区、B-1街区、B-2街区、C街区施設建築物新設工事に伴う公共施設の整備であり、虎ノ門・麻布台プロジェクトの新たなまちづくりの基礎となる。都市の真ん中で行う土木工事の難しさを土木工区所長の上は、次のように表現する。
「人々が生活する街中で工事を行う、いわゆる都市土木には、様々な制約があります。ひとつは時間。道路工事では交通量の少ない夜間に工事を行い、地下鉄各駅との接続通路工事は、終電から始発までの限られた時間内に行わなければいけません。もうひとつは場所。借りられる作業ヤードはとても狭く、機械を使用することができないため、すべて人力で行う作業もあります。もちろん近隣の皆さまの了承を得ながら振動や音にも十分配慮しなければなりません」。都市土木は、都市機能を活かしながら周辺施設への配慮が求められる慎重な仕事だ。
その中でも虎ノ門・麻布台プロジェクトは「多様な工種と関係者間の調整事項の多さ」が際立っている。土木工区は、六本木一丁目、神谷町、各駅との接続通路工事や道路工事、歩行者デッキ工事、下水道工事、電線共同溝工事など、工種が多岐に渡り、それぞれのエキスパートが現場に集まっている。狭いヤードで作業を行うため、工事ごとに調整が必要だ。また場外での作業が多く、道路を管理する国、東京都、港区、および東京メトロや埋設企業者などとの調整も必要になる。「人の土地を借りて工事をするため、それぞれの作業ルールに則り一つひとつ許可を取りながら進めていく必要があります。それゆえきちんとした工事計画を立てて、工事が円滑に進むように協議を重ねてきました。」

topicks記事画像1 topicks記事画像1

工期を短縮するため工夫を凝らす

制約が多い条件下で粛々と工事を進めているが、納期に間に合わせることが最大の課題となる。そこで工期を短縮するため、様々な工夫を凝らしている。
道路を掘り起こす開削工事は車線規制が必要になるため、夜間にしか作業を行えない。中でも車が行き交う交差点の開削工事は夜間でも規制が難しく、確保できる作業ヤードは局所的だ。「交差点で開削工事を行うと多くの制約を受けるので工期が長くなります。そこで地上から道路を開削するのではなく、横から掘削を進める『非開削工法』を採用し地下で工事を完結することで、工期を短縮する工夫をしています。」
その他にも歩行者デッキを国道に架ける際、場内で組み立てたものを一晩で架設する計画とし、短時間で施工することで通行車両への影響を最小限に抑える。国道道路上での作業日数を少なくすることで、工期短縮に繋がっている。

topicks記事画像2 topicks記事画像2
topicks記事画像2 topicks記事画像2

「三現主義」に基づく人と
デジタルの融合

人目につかない地下工事、安全性や作業品質はどのように確保しているのだろうか。「現場には各工種それぞれ専門の人間が集まっていますが、同じ土木工区の仲間です。現場パトロールの際には、自分の仕事だけでなく、他の工種の仕事を見ることを大切にしています。違った視点で見ることで不具合に気づくこともあり、声を掛け合うことが大きなトラブルの予防につながります」。愛のある声がけが現場の一体感を作り出している。
こうした人の目に加えて、ウェアラブルカメラも試験的に活用している。「固定カメラと合わせて現場職員がウェアラブルカメラを身につけることで、現場の状況が事務所にいる私たちにもリアルタイムに把握できるようになります。私たちは、「現場で」「現物を」「現実的にみる」“三現主義”に基づいて仕事をしています。昼夜を問わず連続で行う作業では、工事の記録として現場で現物を現実的にみる手助けをしてくれるウェアラブルカメラは、非常に有効な手段になると考えています。」

topicks記事画像4 topicks記事画像4

完成時に想いを馳せて

土木工区の工事が本格化するのはこれからだ。現在繁忙期を迎えている地下通路接続工事の次は、場内のインフラ整備や道路整備が待っている。「こうした工事は非常に地味ではありますが、まちに根付くもの。このまちで暮らす人々に末長く安心してお使いいただける施設をつくりたいと常々考えています。リスクと隣り合わせで非常に神経を使う仕事ですが、その分、完成したときの達成感は何倍にもなると思います。ここには高さ300m超の超高層ビルができるので都心ならどこからでも目にすることができますし、この建物を見るたびに良い仕事をしたなと思える現場にしていきたいです。」
近い将来、桜田通りに新しい歩行者デッキが架けられる予定だ。「美しいデザインのデッキが綺麗な形で後世に残るように、質の高い施工を心がけていきたいと思います」と上。一晩で橋がかかるその日が今から待ち遠しい。

topicks記事画像5 topicks記事画像5
topicks記事画像6 topicks記事画像6