虎麻プロジェクトにビジネスを学ぶ 2022.03.22

立体パズルを

解き明かせ!

プレキャスト化

01 プロジェクト課題

徹底したPCa化を追求

工場であらかじめ製造したコンクリート部材をプレキャストコンクリート(PCa)と呼ぶが、B-2街区タワーのPCa化率は高く、6割を超える。設計本部の戸澤は「B-2街区は施工難易度が非常に高い街区です。その理由の一つは、主用途となる集合住宅とホテルの居住性を確保するため、鉄筋コンクリート(RC)造が採用されていることです。鉄骨造に比べRC造は施工手間がかかることから、大手建設各社はPCa化を推進し施工の効率化を競っています。」と語る。ポイントは柱梁接合部のフルPCa化だ。柱梁接合部というのは文字通り柱と梁が交わる部分。ここをPCa化すれば、床コンクリート打設前に上階の柱PCa部材の建込みが可能になり、工期を短縮できる。「平面図から想像し、工程を念頭に置いて組み立て時の問題を明らかにする。そうすると柱梁接合部のフルPCa化という答えが見えてきました」とB-2街区 副所長の實松。
高さが200mを超えるB-2街区では超高層ビルの剛性を高めるため、すべての柱を連結するように大梁が計画されている。つまり、内周部に位置する柱には四方に梁が取り付いている。四方に鉄筋が伸びた柱梁接合部の全面的なPCa化は、シミズとして初めての試みだった。

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02 ブレークスルー

4Dシミュレーション、モックアップで検証

たくさんの鉄筋が入り組む中で、どういう手順で組み合わせれば全て納められるのか。一か所でも間違えると完成しない立体パズルに最も頭を悩ませた。全員で問題を共有できるよう、まずはイメージを手書きで書き起こし(図1)、その後データ化を進め、2Dでミリ単位の納まりを検証(図2)。さらに3Dモデルでの検証を行い(図3)、時間軸を加えた4Dシミュレーション(図4)で、工程を進めながら検証していった。
「部材の割り付けを検討し、新たなPCa部材の組立方法なども考案しました。鉄筋の業者さんにも入ってもらって本当に組み立てられるのか、一つひとつ確認していきました。実際に工場でモックアップをつくり、取り付けに何分かかるかを検証しました。」と戸澤。
「全体的な視野を持って詳細を見る力が必要だった」と實松が言うように、2Dから4Dを想像し、現実に向けてパズルを組み立てていった。シミズとしても初めての取り組み。計画の検討にも施工の検討にも多くの人的コストをかけたが、PCa化率を高めることができた。

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03 仕事の流儀

現場で調整しながら工程管理を徹底

「期日までに部材が現場に入らないと工事を進められない。PCa化において大事になるのが工程管理です」と實松。納品日から逆算し、製作期間、図面をまとめる期間、設計者と協議する期間、を決め、進捗を管理していく。予定通りに進捗しない場合は人手を追加した。「現場は暑い日も寒い日もあり、雨が降り風も吹く。工事を進められる時に進めて、無理をしたら危ない時は止めるという判断をしています。こういった画面で見ると簡単そうに見えますが、過酷な環境の中、20トン近いコンクリートを吊り上げて作業しているわけで、当初はなかなか計画通りには進まず調整の連続でした」と實松は現場の苦労を語る。しかも今回は組み立て順序も複雑。「順番を間違えると組み上がらなくなってしまうので、しっかり管理しながら進めています」。

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04 まとめ

PCa化で広がる建設の未来

苦労しながら取り組んだPCa化。そこにはどんな思いがあったのだろうか?「私が今回、PCa化に取り組んだ理由の一つに、後世に残るものをつくりたい、技術を伝承したいという思いがありました。PCa工法による躯体の組み立ては今後さらに進化していくと思いますが、ここで実現できたこと、今回課題となったことを次の現場で活かしていきたい」と戸澤。實松は「この現場をきっかけに工法がより良い方向に変わっていってほしいと思っています。構造物はPCa化し、外装材は3Dプリンタで作成し、現場で取り付ける。そうなれば施工が一層効率化し、建設はもっとサステナブルになれると思っています」と夢を語る。
PCa化という立体パズルを解き明かした先に、建設の明るい未来が広がっている。

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Profile

戸澤 正美

設計本部 構造設計部3部

副部長

入社年:1989年

主な業務:RC造系の構造設計

Profile

實松 剛生

東京支店 虎ノ門・麻布台プロジェクトB-2街区建設所

工事長

入社年:1992年

主な業務:施工計画・施工管理