202210 リアルタイムに災害情報を共有「MCP支援
システム」の有効性を防災訓練で検証

2022年5月に人吉医療センターで行われた防災訓練では「水害タイムライン防災計画」の実用性は検証できたものの課題が残りました。その1つが、状況の全体把握に手間と時間がかかっていたことです。この課題を解決するため、清水建設はデジタルを活用してリアルタイムに情報共有を図る「MCP(Medical Continuity Plan)支援システム」を開発。システムのデジタルモックアップを作成し、同年10月に行われた防災訓練でその有効性を検証しました。

災害対策本部の迅速な判断を支援するダッシュボードを新たに設置

院内情報を手書きでホワイトボードへ転記

MCP支援システムを活用してリアルタイムに情報共有

災害対策本部の役割は、防災活動や被災によって増える救急患者への医療提供(タスク)に対し、医師や看護師などの人材や、電気・水といったインフラ、医薬品・診療材料など(リソース)をどのように配分していくかを迅速に判断していくことです。対策本部の高度な判断を支援するというコンセプトの下、清水建設は「MCP支援システム」を開発しました。5月の防災訓練では、院内各所から寄せられた情報をホワイトボードへ手書きで転記していましたが、これをリアルタイムに情報を取得できるよう改善。「MCP支援システム」では、さまざまな情報を対策本部に設置するダッシュボードに一括表示することが可能です。タスクとリソースのバランスを取りながら、災害時においても病院機能としての最大限のパフォーマンスの実現を目指します。

災害対策本部におけるタスクとリソースの
リアルタイムな把握と指示

救急患者および医師・看護師などの人数や名前をリアルタイムに共有

災害対策本部に設置するダッシュボードは、医療提供に必要な基盤情報を可視化します。具体的には「水害タイムライン防災計画」に基づくタスクとその進捗状況、救急患者への医療提供といった災害時に変動する業務量、および病院スタッフの安否確認・参集情報、救急患者数と対応にあたるスタッフ・医療機器の使用可能情報、医療資材(医薬品・診療材料など)の充足度などを表示します。

例えば位置情報による測位技術を活用して、トリアージエリアや赤(重症)、黄(中等症)、緑(軽症)エリアにいる救急患者数、職種別スタッフ数、医師名などを表示できるようにしました。画面上で、各エリアのスタッフ配置の適否が判断でき、搬送されてきた患者の傷病に対応できる医師がどこにいるか、一目で分かります。また、赤エリアに大腿骨骨折の患者が運ばれてきた際には、対応できる整形外科の医師をダッシュボードで探し出し、赤エリアへ行くように指示することができます。人工呼吸器などの救急患者対応に必要な医療機器については、使用中台数や使用可能台数を表示することが可能です。

災害対策本部の判断に必要な情報が一目で分かる「MCP支援システム」のダッシュボード

災害対策本部の判断に必要な情報が一目で分かる「MCP支援システム」のダッシュボード

災害対策本部の判断に必要な情報が一目で分かる「MCP支援システム」のダッシュボード

タスク管理機能によりスタッフの手間と時間を削減

その他、「MCP支援システム」では防災行動業務の確実な実施を支援する機能も充実させました。各部門のスタッフが担うタスクを実施のタイミングに合わせてスタッフ所有のスマートフォンに通知。通知を受けたスタッフは、タスクを実施し完了報告を送信します。対策本部用ダッシュボードでは完了・未完了を一覧で確認できるため、未完了のタスクを見逃さず、手遅れになる前に対処できます。このシステムを使って行った10月の防災訓練では、複数の部署やスタッフの連携を要する防災行動業務の実施時間が大幅に短縮。4人で作業する防水板設置においては、5月の訓練に比べて一連の作業にかかる時間が約3/4に短縮されました。

現場のタスクをスマートフォンでタイムリーに確認。完了後は写真を撮って報告可能に

従来の電話による作業指示が不要となり、一連の作業にかかる時間が23%も短縮された

今回、人吉医療センターの防災訓練における実証において、「MCP支援システム」は迅速かつ的確な防災行動と災害医療提供の判断・実行に対する支援効果を発揮し、その有効性を確認することができました。今後は、「MCP支援システム」をこれからの病院運営を支援するDX技術として、災害時だけではなく平常時の働き方改革にも役立つシステムへと拡張していきます。さらに、地域レベルで情報共有、医療連携ができるシステムとして、地域全体の医療継続を支援することを目指しています。

清水建設 ニュースリリース
医療継続計画支援システムを開発 〜防災訓練で有効性を検証〜

実際の防災訓練でシステムの
有効性を再認識

今回の訓練では、「MCP支援システム」により防災活動や医療提供に必要な情報が随時表示され、災害対策本部のすばやい判断ができました。さらに、スタッフから災害対策本部への報告についても、従来の方法に比べて効率的に行うことができ、スタッフの負担軽減につながったのではないでしょうか。災害時には、必要な情報が多岐にわたるとともに、正確な情報を把握することが困難です。さまざまな情報を一元的に同時共有できたことで災害医療のパフォーマンスが向上できることを実感しました。このシステムを使って地域の医療機関が連携して情報共有を図ることができれば、災害時の地域医療に役立つと思います。今後の展開を期待しています。

人吉医療センター 清水建設
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