2025/08/26
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WHY(なぜ、取り組むのか)
建物損壊リスクを低減し、未来へ引き継ぐために。
建設業を生業とする清水建設において、新しいものを生み出すことだけが事業の本質ではありません。
日本の伝統的な建築物や、建築物の中に保管されている文化財を守り、未来へ引き継ぐことも、私たちの重要な使命です。私たちは建物損壊リスクを低減し「今を守る、未来へ引き継げる社会」を目指します。
HOW(どうやって、実現するのか)
建物の特性に合わせて
災害や火災の建物損壊リスクを低減。
2019年の火災により消失する前の首里城正殿(清水建設施工)
日本全国に遺る、伝統的建造物の数々。そのほとんどが木造であり、常に火災や地震、台風といったリスクにさらされています。 記憶に新しいもので言えば、沖縄の首里城、海外ではノートルダム大聖堂など、貴重な建築物が火災によって一瞬で消えてしまう事実は非常に痛ましく、人類にとっての損失です。このような過ちを繰り返さないために、建物の特性に合わせた技術開発、セキュリティ対策が必須です。
WHAT-1(何をするのか)
監視カメラのAI解析で火災を検出、
自動放水により建物の損失リスクを軽減
自動火災検知放水システム「慈雨」
近年、重要な伝統的木造建築の火災の多くは建物外周部から発生しています。「慈雨」は、監視カメラ画像のAI解析で火災を検出し、自動放水によって消火します。火災時は従来のような全体同時放水ではなく、水圧を制御して火災箇所に放水するため、建物の破損リスクを軽減。消火水槽を最小限にします。また、常時濾過された雨水を使用するので、建物の汚染も抑えます。カメラ画像のAI解析は、不審者も検知して防犯と連動できるため、歴史的建造物や街並みの維持・保存への貢献が期待されています。
WHAT-2(何をするのか)
地震に合わせて揺れを吸収する
「部屋免震」によって貴重な資料を保護
部屋免震システム
「部屋免震システム」は床下と天井に免震装置を設置します。床下に設置する傾斜すべり免震装置「安震スライダー※」は、部屋が傾斜したレールを滑ることにより地震時の揺れを吸収します。また、天井に設置された「ばね摩擦ダンパー※」は、摩擦の力を地震の大きさに合わせて変化させ、部屋の揺れを抑えます。装置が小さいため既存建物に後付けすることも可能です。NOVARE Archivesの清水文庫では、部屋免震により貴重な展示物・資料を地震から守っています。(※:特許取得済、もしくは特許申請中)
部屋免震を採用したNOVARE Archivesの清水文庫
WHAT-3(何をするのか)
新築・改修どちらでも木質化と耐震性向上
高靱性CLT耐震壁
「CLT耐震壁」は、木の壁面の4隅に設置された鋼材ダンパーが、地震の揺れのエネルギーを吸収します。CLT耐震壁は内装や間仕切りとしてそのまま使用することができるので、新築・改修に関わらず、木質化と耐震化を同時に実現します。
CLT壁面のダンパー
Hub ディスカバリーエリア
WHAT-4(何をするのか)
通信技術を使った後付けキーシステムを活用
スマートロックセキュリティシステム
近年、Wi-Fiなどの通信技術を使った後付けのスマートロックの登場により、改変時に大きな工事を伴う電気錠を使わずにセキュリティ確保が可能となってきました。NOVAREでは、建物OS「DX-Core」を介して会社全体のセキュリティシステムと連携し、セキュリティゲートの顔認証、会議室予約、来客用QRコードの自動発行など様々なシステムを付加し、今後も適用範囲を拡げる予定です。
セキュリティゲートの顔認証システム
会議室予約・確認用タブレット
工事不要で追加できるスマートロック
WHAT-5(何をするのか)
歴史的建築物保存・耐震性向上
伝統技術を損なわず新技術で守る
NOVAREの庭園内に江東区指定有形文化財「旧渋沢邸」を再築しました。建物意匠、構造形式、材料、工法、技法の復原に努め、その歴史的価値を後世に継承するとともに、保存活用の観点から耐震改修を実施しました。杭基礎による人工地盤の構築や、木造真壁・筋かい壁の部材構成をできるだけ変えずに耐力壁として再構築するなど、現代の技術を付加して安全性を確保しました。
旧渋沢邸:二代清水喜助による「表座敷(明治11年 深川)」が母体の建物で、3度の移築を経て現在地に再築された
TO THE FUTURE
まちなみの多様性を保持していく。
日本全国には127箇所の伝統的建造物群保存地区が存在します。同地区では保存活用と防災対策の両輪でまちづくりが行われる必要があり、「慈雨」などの技術は地区のまちなみ保全にも役立つことが期待されます。
NOVAREはこれからも、建設事業の枠を超えた不断の自己変革と挑戦、多様なパートナーとの共創を通じて、時代を先取りする価値を創造(スマートイノベーション)し、人々が豊かさと幸福を実感できる、持続可能な未来社会の実現に貢献していきます。