2022年12月15日
Vol.72 国立西洋美術館 丸柱型枠でコンクリート円柱を再現
東京木工場第四工場の2階に展示されている実物大の国立西洋美術館丸柱型枠および丸柱の一部は、1959年の創建時と同じ施工方法で2016年9月に東京木工場で再現したものです。
再現時に作業を担当した塚田さんに型枠の特徴や苦労した点を聞きました。
国立西洋美術館 丸柱型枠でコンクリート円柱を再現
東京木工場 製作グループ
塚田 和男さん
国立西洋美術館のピロティで使われている打放しのコンクリート円柱は、コンクリート施工の名人とうたわれた当社の森丘四郎と共に、深川工作所(現・東京木工場)が製作したものです。コンクリート円柱の表面には型枠で使われた姫小松の木の模様が転写されています。型枠は、板材の側面に溝を作り、その溝に木片を差し込んで接合する「雇い実矧」と呼ばれる方法を用いて手作業で作られました。
東京木工場に展示されている円柱は、1959年の創建時と同じ施工法で2016年9月に再現したものです。再現にあたり、実物と同じ直径60cm、高さは4分の1の1mに設定しました。型枠は姫小松が入手困難であったことから米松を使用しています。
型枠は48枚の細い板を組み合わせています。図面上、円形を48分割にするのは簡単ですが、木板は少しでも大きさや角度がずれていると直径がずれてしまうため、実際に組み合わせることが非常に難しいと分かりました。
まず、型枠の内側になる部分を1本ずつ曲面に削り、両側面を7.5度の傾斜をつけて削ります。加工前と加工後をご覧いただくと、わずかに角度が付いていることが見て取れると思います。次に隣の面との接合用に溝を切っていき、その溝に細い木をはめ込んで板を組み合わせます。手作業で48枚の板を底板にはめて円形上に組んでいくと、型枠の完成です。型枠の中にコンクリートを打設し、型枠を外すと綺麗に木の表面が転写されます。
今ほど精密な加工機械や計算のためのコンピュータなどがない時代に、これらを手作業で行っていたことに深い感慨を覚えました。当時の技術の粋を集めたコンクリート円柱をぜひ間近でご覧ください。