木の可能性を探る

木の可能性を探る Vol.71 株式会社ヘラルボニーとコラボレーション

2022年8月9日

Vol.71  株式会社ヘラルボニーとコラボレーション

東京木工場は株式会社ヘラルボニーとコラボレーションし、額装品と包装用のシールを制作しました。

コラボレーションにあたり、株式会社ヘラルボニーが抱えるアーティストの約2,000点に及ぶ作品の中からデザインとなる絵画を選出。竣工記念品として、納める絵画を引き立てつつも、作品の一部として見ていただけるような額縁を制作しました。

額縁に作品の一部を焼き付けてあり、目で見るだけでなく、触れても楽しむことができる
額縁に作品の一部を焼き付けてあり、目で見るだけでなく、触れても楽しむことができる

通常、額縁に使われる木材は、絵画を飾るうえで存在感を主張しないよう、木目が目立たない部分を使用します。しかし、本製品ではあえて節や木目がしっかり見え、「木」であることがはっきりわかる部分を使用しています。

強度の問題から家具に使うことができない部分を有効活用することでSDGsへ貢献するとともに、木の多様性とアーティストの多様性が伝わる作品になるようにという願いを込めています。

額縁を彩る

東京木工場 CSR推進グループ
外山 紗江さん

東京木工場CSR推進グループ 外山 紗江さん

額縁には「木」の持つ味を活かすため、木目が均一ではない部材を使用しています。そのため、板から額縁の部材を寸法に削り出すときや面取り加工をする際に、刃物の当て方や動かし方によっては部材が欠けたり、逆目になってしまうこともありました。このように扱いが難しい部材ですが、東京木工場の持つ技術を活かし、細部までなめらかに美しく仕上げました。額縁として存在感があり、アーティストの作品とうまく調和しているのではないかと思います。

額縁に施されているのはレーザー加工で焼き付けた、アーティストの作品の一部です。レーザーは線や塗られた箇所の濃淡で、焼き付けを濃くするか薄くするかを判断します。そのため、高解像度デジタルスキャンしたアートをモノクロに変換し、焼き付ける部分を抽出しました。今回製作したもののうち、園田さんの作品はカラフルな色合いが特長的でしたので、全体を黒く表現せずに、余白をとり明るい雰囲気になるよう焼き付ける部分を選出しています。同時に、色鉛筆で描かれた独特なカスレ具合もレーザーで表現しました。

見るだけでなく、触れることでも「木」を感じていただけたら嬉しいです。

左から時計回りに笠原 鉄平氏、中島 敏也氏、園田 瑞樹氏の作品を額縁に焼き付けたもの。額縁にはウォルナットやアメリカンチェリーが使用されている。
左から時計回りに笠原 鉄平氏、中島 敏也氏、園田 瑞樹氏の作品を額縁に焼き付けたもの。
額縁にはウォルナットやアメリカンチェリーが使用されている。

竣工記念品と並行して、包装紙の代わりとなるアートシールを作成しました。今まで木製品を梱包する箱は、包装紙で包んでお客様へ納品していましたが、梱包用の箱に直接アートシールを貼り付けることで、紙資源の使用を減らし環境への配慮とSDGsへの貢献をしながら、華やかさを加えることができます。

包装紙を削減する代わりに箱を彩るアートシール
包装紙を削減する代わりに箱を彩るアートシール
右下には木工場のブランドロゴである「kino style」と「ヘラルボニー」のロゴが印字されている
右下には木工場のブランドロゴである「kino style」と「ヘラルボニー」のロゴが印字されている

額装品の贈呈式

2022年6月に東京木工場 和田工場長が医療法人清明会きやま鹿()()医院内にある障がい者就労支援施設PICFA(ピクファ)を訪れ、額装品の贈呈式を行いました。

さまざまな色で華やかな作品を描く園田 瑞樹 氏
さまざまな色で華やかな作品を描く園田 瑞樹 氏
細いペンを使い、個性豊かなキャラクターを描く笠原 鉄平 氏
細いペンを使い、個性豊かなキャラクターを描く笠原 鉄平 氏

病院の一部を改装してできたPICFAは、まるでアトリエのよう。利用者はその日に何をするかをスタッフと相談して決め、絵画や刺繍などの創作活動を行うそうです。

色とりどりの色鉛筆を使い、創作活動を行う園田氏
色とりどりの色鉛筆を使い、創作活動を行う園田氏

今回、デザインを使用させていただいた園田氏と笠原氏に額装品を手渡すと、額縁を何度も指でなぞって感触を確かめるなど、とても喜んでくださいました。

PICFA代表・原田氏と額縁に触れる笠原氏
PICFA代表・原田氏と額縁に触れる笠原氏

今後、株式会社ヘラルボニーが提案するデザイン案をもとに、一からの製品開発も検討しています。

左から、PICFA代表・原田 啓之氏、(株)ヘラルボニー ライセンスディレクター / デザイナー・丹野晋太郎氏、笠原 鉄平氏、 東京木工場・和田工場長、園田 瑞樹氏、PICFAスタッフ・川畑氏
左から、PICFA代表・原田 啓之氏、(株)ヘラルボニー ライセンスディレクター / デザイナー・丹野晋太郎氏、笠原 鉄平氏、東京木工場・和田工場長、園田 瑞樹氏、PICFAスタッフ・川畑氏

株式会社ヘラルボニー

「異彩を、放て。」をミッションに、福祉を起点に新たな文化の創出を目指す福祉実験ユニット。日本全国の主に知的障害のある作家とアートライセンス契約を結び、2,000点を超えるアートデータを軸に様々な事業を展開する。HPはこちらから

PICFA(ピクファ)

江戸時代中期より対馬藩典医として開業した鹿()()病院内に創作活動するための施設として2017年7月にオープンした。医院内にできた障がい者就労支援B型事業所としては日本初であり、「アート」を中心とした創作活動をしている。

PICFAはPICTURE(絵画)とWELFARE(福祉)の造語。