虎麻プロジェクトにビジネスを学ぶ 2023.08.04

やり遂げる方法を

見つけ出す。

A街区オフィス内装

01 プロジェクト課題

縦にも横にも広い施工範囲

2023年7月3日。麻布台ヒルズ森JPタワー(A街区タワー)がついに竣工した。今回は工事終盤のハイライト、内装工事の担当者を紹介する。超大規模現場で広範囲に亘った内装工事をどのように乗り切ったのか、聞いてみた。
A街区タワーの7階から52階は、総貸室面積約6万坪の大規模オフィスとなる。
各フロアには開放的な無柱空間が広がっており、自由なオフィスレイアウトが可能となっている。金成は、このオフィススペースの内装工事を担当した。「ナッチ」と呼ばれる半屋外スペースや、エレベータ、トイレなどが集まる共用部の仕上げ工事だ。内装工事は床工事、軽量鉄骨工事、ボード工事、天井工事、塗装工事、建具工事など幅広い。この大規模なオフィスフロアをすべて同じ精度で仕上げるのは決して簡単なことではない。そのうえ、エレベーターシャフトまわりには、強化石膏ボードが5枚重ねで張られている。「これまでは多くても3枚。5枚張りを見たのは初めて」というように、300m級の高層タワーともなると耐火性能も厳しくなる。
内装工事において一番ネックとなったのは、やはり施工範囲の広さだ。7階から52階まで広範囲に分かれて作業をしており、管理が難しい。現場はとにかく広いので効率よく巡回することが重要だ。内装担当者はエレベータを使わず、一番上の階から階段で降りて巡回するといった細かい努力も積み重ねた。エレベータの待ち時間が無駄になるからだ。
A街区タワーは樽型の形状で、基準階の賃室面積は約4,300m2から約4,840m2まで差がある。各階で面積が少しずつ変わるため、まったく同じように施工できないのが難しいところ。床には2万枚ものOAフロアパネルが敷き詰められているが、各階で異なる端部のサイズを現場で調整している。施工の難しさはナッチも同様だ。「ナッチは換気設備やメンテナンス用出入口のための半屋外スペースで非常に狭く、足場をどのように組むのか頭を悩ませました。しかも各階で面積が異なるので同じ仕上げでも納まりが少しずつ異なり、調整が大変でした」と金成。
※OAフロアパネル:配線を収納するための二重床

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02 ブレークスルー

広範囲にわたる管理を
デジタルツールで効率化

内装工事をさらに難しくしたのが、上海ロックダウンの影響だ。カーテンウォールの出荷が数か月遅れ、外装工事が予定通りに進まなかった。通常、外壁ができてから内装工事を行うが、工程に間に合わせるために内装工事を先行することに。全体の工期に影響するエレベーターシャフトの仕上げを最優先し、カーテンウォールが設置されていない階は、中央部をメッシュシートで囲い、周囲への飛散を防止しながら、鉄骨に耐火被覆を施工。その後、内装工事に着手した。内装工事は、下の階から順番に仕上げていくものだが、上階で作業をしていた職人が再び下のフロアに戻って作業することも。職人たちの行き来が増えるイレギュラーな進行となり、管理が大変だったという。

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そこで広範囲にわたる管理を効率化するために、デジタルツールを活用した。この現場では職人も図面の代わりにタブレットを持ち歩き、フロアごとの工程や作業指示を細かく記載した資料を所員と職人たちとの間で随時共有した。
また、広大な面積の内装を施工するのに、施工ロボットの実証も進められた。自動搬送ロボットは優れた搬送能力を発揮しA街区タワーの耐火ボードの一部を搬入した。所員からは「ロボットは今後も実証を重ねていく必要がありますが、ロボットだけでは難しい部分は人とのコラボを前提に進化していくと思います」と、前向きな意見も多い。

03 仕事の流儀

職人に寄り添う

金成は若手の係員であり、職人に一番寄り添える立場にある。「普段から世間話もしますし、要望を伝えやすい立場だと思うので、できる限り彼らの話を聞き、資材の置き場所を確保したり、計画より早く終わって空きができた時は他の工程に回ってもらったり、可能な限り一緒に効率化に努めました」と金成。職人はこうした姿勢に刺激を受け、これまで以上に丁寧な仕事を心掛け、想定外の状況で始まったためタクト化が遅れたが、プロジェクトを通じて大事なことを学ぶことができたという。

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04 まとめ

「やり遂げよう」という熱量

金成は「できないことは何もない」ことを学んだという。「段取りが上手くいかず、このままだと明日の作業がストップしてしまうような時も、工事長が方々に掛け合うなど迅速に問題を解決するよう手助けしてくれました。一生懸命、共に頑張ろうという強い想いを持った先輩、後輩たちがたくさんいることも知ることができましたし、この現場に携われて良かったです」。
本現場のデジタル施工の取り組みに触れ、夢が広がったという。「機械化・自動化が進めば、業務の効率化や精度の均一化につながり、施工管理がより魅力的な仕事になっていくと思います。今後、デジタル施工の開発協力をする機会があれば挑戦したいと思います」と語る。
シミズには、どんな状況下でも納期に間に合わせるという熱い想いがある。その想いが原動力となり、イレギュラーな進行となったA街区の内装工事を乗り切った。麻布台ヒルズの開業は近い。

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Profile

金成 美月

麻布台ヒルズ(虎ノ門・麻布台プロジェクト)

A街区

入社年:2015年

主な業務:施工管理