岡山大学共育共創コモンズ(OUX:オークス)
岡山大学の新工学部の設立を機に、学生が学ぶと共に地域、企業との協働を一層充実させることを目的に「地域の産業活性化のための新たな交流と共創の場」として計画された。利用者にとってウェルネスな空間を実現、カーボンニュートラル・脱炭素社会への貢献や国内森林資源への配慮を通じたSDGs達成の貢献を目指した。これらの目標の実現に向け、岡山県の地域産業であるCLTを活用した木造CLTパネル工法による校舎とした。


所在地 | 岡山県岡山市 |
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竣工年 | 2023年 |
建築主 | 国立大学法人 岡山大学 |
主用途 | 大学 |
階数 | 地上2階 |
主構造/耐火性能 | 木造(CLTパネル工法)/その他構造 |
延床面積 | 約820m2 |
木材使用量/CO2固定量 | 510m3(0.622m3/m2)/300t-CO2 |
監修(基本計画含む) | 岡山大学特別招聘教授 隈研吾氏 |
CLTによる「地域の産業活性化のための新たな交流と共創の場」
建物は約300名収容の講義室と、共同研究拠点としての「共創ラボ」機能からなり、最新のデジタル技術に関する講座やワークショップ、社会人と学生がともにアイデアを競うハッカソンなどの開催をはじめ、オープンな共同プロジェクトから機密性の高い共同研究まで、幅広い利用を想定している。



CLTパネル工法の広範な活用展開に向けた技術の導入
本計画では、CLTパネル工法において大空間の実現、立面パネル配置の自由度の実現、音振動環境・防耐火性能・耐久性の向上に取り組み、技術開発とその実践を通して、CLTパネル工法のより広範な活用展開及び普及に努めることを目指した。

CLT大染ジョイント・メタルレス構法により国内最大級のスパン18mの大空間を形成
CLTの適用拡大に向け、スパン18mの大梁もCLTを活用した。CLTの生産・搬送面での制約を考慮し、3分割した部材を現場で接合してスパン18mのCLT大梁を形成した。部材の接合部に木質系の層材(LVL)と構造ビスを用いた継手(CLT大梁ジョイント・メタルレス構法)を採用することで、金物で構成する従来の継手と比べ、初期剛性の低下を抑制した接合構造を実現。10本のCLT大梁を2階東西面のCLT壁パネルのスリットに差し込み、18m×21.6mの講義室の上部を覆う大屋根を支持させる計画とした。



CLTランダムパネル構法によりパネル配置の自由度を向上
CLTパネル工法の制約の一つとしてパネルの立面的な位置を揃える必要があった。本計画では、2階床に配した鉄筋コンクリート(RC)スラブの一部に梁型を設け、この梁型を介して上層のCLTから下層のCLTへ地震力を伝達させる計画(CLTランダムパネル構法)とした。これにより、壁パネルの立面配置が上下階で異なる構造計画が可能になり、各階の用途構成や外観デザインに応じた自由度の高いパネル配置を実現した。


木質建築の普及・拡大に向けて
学生や市民が岡山県の地域産業であるCLTや木材産業を体感する新たな学び舎を目指し、構造材・仕上材を含めて約510m3の木材を使用(うち、CLTは約450m3)し、約300tのCO2を固定化して高い環境効果をもたらしている。本計画に適用した新技術が今後のCLT建築プロジェクトに展開されることで、木質建築の普及・拡大に真献することを期待している。




JIA優秀建築選 2024 第16回JIA中国建築大賞2024/特別賞 照明施設賞 2024 グッドデザイン賞 2023 第57回日本サインデザイン賞(2023)/中国地区デザイン賞 令和5年度木材利用優良施設等コンクール(2023)/内閣総理大臣賞 第27回木材活用コンクール(2023)/林野庁長官賞 ウッドデザイン賞 2023 日本空間デザイン賞2023/サステナブル空間賞 令和5年岡山市景観まちづくり賞 令和3年度サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)採択