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子どもたちに誇れるしごと
Achievements 02

土壌浄化技術でベトナムに安心安全を取り戻す

―ベトナム土壌汚染処理―

Project Outline

世界規模で貢献する
土壌洗浄技術

ベトナムでは、ベトナム戦争時に米軍が散布した枯葉剤による汚染土壌が、市民に今も深刻な健康被害をもたらしている。枯葉剤には、除草剤の一種で猛毒として知られるダイオキシンが高濃度で含まれており、米軍基地として利用されていたダナン、ビエンホアなどの各空港をはじめ、国内に28カ所もの高濃度汚染エリアが存在しているため、大きな社会問題となっている。
清水建設は、ベトナムの土壌汚染問題に、独自に開発した土壌洗浄技術が生かせるのではないかと考え、2014年からベトナム当局との情報交換や現地調査を進めてきた。2019年には同国国防省傘下の研究機関CTET(Center for Technology of Environmental Treatment)と共同で汚染土壌の洗浄実証試験を実施。ベトナム政府が掲げる「2030年までに全土の土壌浄化事業を完了」という目標の実現に、清水建設の技術の貢献が期待されている。

# 01

培った土壌洗浄技術を
ベトナムへ

土壌浄化とは、土壌の汚染を回復、軽減させる工学的な処置法や事業を指す。日本でもかつては鉱山などによる重金属汚染や有機化学物質による汚染が拡大し、土壌浄化の技術開発が進められてきた。清水建設の土壌洗浄技術は、汚染物質の物理的、化学的な性状を利用して、分級、洗浄などにより土中から汚染物質を分離するもの。重金属および油で汚染された土壌の浄化に威力を発揮し、日本国内においても数百万tの処理実績を持っている。
この土壌洗浄技術がベトナムの枯葉剤由来のダイオキシン汚染土壌に適用できないだろうか――。清水建設は国際貢献の観点から、2014年からベトナム当局と連携し、独自に調査を進めてきた。そして、2016年2月にはビエンホア地区で回収したダイオキシン汚染土壌の洗浄実験を実施。土壌浄化が可能なことを確認し、同国国防省や資源環境省、米国開発庁に報告した。さらに、2018年11月にはベトナムの研究機関CTETと共同で、ビエンホア空港内にて、オンサイト型実規模の土壌洗浄プラントの建設に着手。翌2019年1月中旬から4月末までの3カ月半にわたり、ダイオキシン汚染土壌の洗浄実証試験を実施した。
煩雑な手続きやビジネス慣習の違い、インフラの未整備などもあり、プロジェクトは難航したが、2020年12月には洗浄実証試験の成果を発表するに至ったのだ。今後はビエンホア空軍基地で計画されているダイオキシン汚染土壌浄化プロジェクトへの参画を目指す。

# 02

実証実験で示された
高い技術力

ダイオキシン汚染土壌の浄化方法として清水建設が提案したのは、独自の洗浄処理と焼却処理の組み合わせによるダイオキシンの完全無害化だ。
まず、土壌洗浄プラントでダイオキシン汚染土壌をふるい分け、粒子の大きさによって水洗いやすり洗い、泡表面に汚染物質を付着させるなどして除去する。この処理は「フローテーション」と呼ばれ、そのレシピは重要なノウハウとして特許を取得している。細粒分とともに取り除いた有害物質については、別途、熱分解処理を行う。こうした土壌洗浄を行うことにより、汚染土壌をすべて焼却処理する場合と比較して、半分程度のコストで土壌を無害化することに成功した。ビエンホア空港の土壌の場合、細粒分が30~35%含まれているので、65%~70%の土壌を再利用することができるのだ。
実証実験では、例えばダイオキシン濃度3,500pptの土壌については、100ppt以下(除去率95%以上)にすることに成功。この過程で無害化された土は再利用し、汚染物質が付着した濃縮汚染土は焼却処理することで、100%の無害化を実現することができたのだ。

# 03

土壌浄化技術の
さらなる展開に挑む

実証実験で示された清水建設の技術の信頼性、時間当たりの処理量、環境影響、消費エネルギーおよびコストなどは、ベトナム政府からも高く評価された。
この土壌洗浄技術は、今回ベトナムで実証されたダイオキシンだけでなく、重金属や油、放射性物質などの除去にも適用可能だ。清水建設はこれまで培った知見とノウハウを活かし、地球環境の改善に向けた挑戦を続けていく。