中大規模木造建築の実現 シミズの木質耐火技術「スリム耐火ウッド®

中大規模建築を木造で実現するときに大きな課題となるのが、構造部材の耐火性能です。(あらわし)の木材を構造部材とする場合には、火災時の燃焼により大きく耐力が低下し、建物の荷重を支えることができなくなります。この解決策として、木材に耐火被覆をして熱の伝わりを抑制することで、構造部材の木材の燃焼を防ぎ、火災時にも崩壊しない構造部材とすることができます。

スリム耐火ウッド®の構成
スリム耐火ウッド®の構成

なぜ建築への木材利用が注目されているのか?

戦時中の建築物の焼失などにより、都市の不燃化がすすめられ木造にかわって鉄筋コンクリート造などが台頭し、木造建築は低層の建築物が中心となりました。国内の木材利用が低迷する中、戦後まもなく植林された人工林では、適切な伐採が行われずに木の成長が滞り、森林の持つ土砂災害の防災機能や、地下水貯蔵機能などが損なわれつつあります。

間伐しないと下枝が枯れるが(上)、適度の間伐で太くてしっかりとした木が育つ(下)
間伐しないと下枝が枯れるが(上)、適度の間伐で太くてしっかりとした木が育つ(下)

森林はCO2を吸収し、成長期に多くの炭素を貯蔵します。そして伐採した木材も炭素を貯蔵する機能を保持します。建築物などに木材を利用することで、木が吸収した炭素を空気中に排出させずに固定し続けることが可能となり、地球温暖化防止にもつながります。

また、適正に木材を利用することは、大気中のCO2を減少させるだけでなく、低迷している林業の再生にも繋がります。地方創生のカギとなる林業の活性化と国産木材の利用を促進するため、2010年に公共建築物等の木材利用促進法が施行されたことに加え、近年の建築基準法の改正によって、今まで適用できなかった建物への木材利用が可能となりました。構造部材に木材を採用することで、鉄骨造に比べ、建設時のCO2排出量も削減できます。

さらに、内装に木材を豊富に利用する木質空間は、リラックス効果や疲れにくくするなど、生理的・身体的効果があることが明らかになってきています。SDGs実施方針の中に「木材産業、木造建築の活性化」が明記され、今後、ますます建築への木材利用が予想されます。

当社では、環境への配慮、健康・快適志向を背景として建築への木材利用の積極的な取り組みを進めております。その中で、中大規模木造建築に適用できる耐火性を備え、かつデザイン性・施工性に優れた木質部材スリム耐火ウッド®を開発しました。

概要

その課題に対する画期的なソリューションとなったのが、3眼カメラです。3眼カメラは重さ3kg、幅30cmの機材で、L字に配置された3つのカメラによって撮影します。

まず、L字の角に位置するカメラを基準の画像とし、縦方向、横方向に位置するカメラから撮影した画像と比較することでずれ量を計算します。その結果を元に三角測量の原理を応用して、対象物の縦・横・奥行の3次元情報を算出。次に制御ソフトが画像上の縦・横方向の鉄筋の太さや配筋の平均間隔、本数、重ね継手の長さ、かぶり(コンクリート厚)を計測し、約7秒で検査帳票を自動作成します。一度の撮影で検査できる範囲は1m四方ですが、複数の撮影結果を合成することで、広範囲の検査結果としてまとめることも可能です。

スリム耐火ウッド®の概要

一般的に木質耐火柱は、構造部材である木材の「芯材」、芯材への熱の伝わりを抑制する被覆材の「燃え止まり層」、柱表面の木材の「燃えしろ層」で構成されます。燃え止まり層と燃えしろ層により芯材の温度上昇を抑制し、建物の荷重を支える芯材を火災から守る仕組みになっています。

従来の木質耐火柱では、燃え止まり層が一重で、耐火性能を確保するために被覆層が厚くなる傾向にありました。当社の開発したスリム耐火ウッド®の特徴は、強化石膏ボードと加熱により発泡する耐火シートの異種材料を組み合わせ、燃え止まり層を二重にすることで薄い被覆層で耐火性を確保できることです。

木質耐火柱の断面図比較イメージ
木質耐火柱の断面図比較イメージ

耐火シートは、平常時に2mmと薄いですが、火災時に250度程度に達すると20倍程度に発泡することで気泡を含んだ断熱層を形成し、熱伝導率が小さくなるため部材内部への熱の伝わりを抑制します。さらに、強化石膏ボードの主成分である二水石膏に含まれる結晶水が熱分解による吸熱反応と蒸発潜熱の効果により、長時間温度上昇を抑制します。これらの効果によって、芯材の温度上昇を抑制し、火災時による燃焼・炭化を防いでいます。

スリム耐火ウッド®は耐火シートの断熱と強化石膏ボードの吸熱反応、蒸発潜熱により芯材の温度上昇を抑制
スリム耐火ウッド®は耐火シートの断熱と強化石膏ボードの吸熱反応、蒸発潜熱により芯材の温度上昇を抑制

開発したスリム耐火ウッド®で、性能評価試験に合格し、国土交通大臣より木質耐火柱・梁について1時間、2時間耐火認定を取得しています。さらにRC接合部を用いて、木質柱・木梁架構および木質柱・鉄骨梁架構について実験により耐火性能を実証しています。これにより木造と鉄骨造、RC造を合理的に組み合わせ、多様な木造建築ニーズに対応が可能となりました。

シミズハイウッド(ハイブリッド木質構法)
シミズハイウッド(ハイブリッド木質構法)
木質柱・木質梁・RC接合架構の1時間耐火実験
木質柱・木質梁・RC接合架構の1時間耐火実験

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