vol69
41/49

和光本館WAKO BUILDING「短工期であっても決して妥協はしない」はじめに云われた言葉である。それは、建築の文化的・歴史的価値の次代への継承と現代の建築に比しても卓越した実用性を備えることであり、昭和7年の建築の延命化を図る、現行法規に準拠するという消極的かつ受身の姿勢ではなくまた創建時の有様を博物的に復元・保存するのではなく、創建時がそうであった様に、今後の永きに亘る建物の価値を見据え、新旧を超えた再構築を行うことであった。300日の限られた工期のなか、建物を骨格の状態に戻し、建立の哲学と渡邊仁の意匠そして建物に潜在している力を理解し、現代の創造性と技術を惜しみなく投入した。事業者、清水建設を中心とする協力メーカー、業者を含めた全ての協働者が、「和光」であること、「銀座」にあることを常に意識し、妥協することのない現代の仕事を徹底的に追求した。創建時から70年以上経た現在においても優れた実用建築であることは、絶えることのない入念なメンテナンスと創建時の建築の潜在能力の高さにあり、先人の思い、創建時の姿、過去の改修をなぞりながらの道程であった。定久 岳大39vol.69

元のページ 

page 41

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です