2023年11月24日、遂に麻布台ヒルズが開業した。
都心の大規模再開発プロジェクトをリアルタイムで追った「ヒトワザ 麻布台ヒルズ篇」は、今回が最終回。締めくくりを飾るにふさわしく、森ビルの設計監理の責任者、そして清水建設の3所長に“開業を迎えた想い”を語ってもらった。

今回の撮影にあたっては、所長たちと完成した現場を歩きながら、これまでの取材の想い出を噛み締めた…。

ヒトワザ!編集部

左近 恵理彌

新たな息吹を街に吹き込む 森ビル株式会社 設計部 設計監理部
専門部長 左近 恵理彌

事業を推進している再開発組合の多くの組合員の皆様と共に、長い時間を掛けて「街づくり」のヴィジョンを描き、2019年8月に起工式を執り行いました。工事着工後には、コロナ禍の影響により、ヒト・モノが足りなくなるなど厳しい環境が待ち受けていましたが、過日、無事に開業を迎えることができ感無量です。
施工の経過を振り返ると、建築と土木・インフラを一体で創り上げていく、大変難易度の高いプロジェクトだったと思います。それゆえ、今までに経験したことの無い出来事を数多く経験しました。
例えば、コロナ禍によりコミュニケーションの取り方が変化し、対面からリモート会議になり、モニター越しに図面や仕様などについて、協議や打合せをすることもありました。また、海外でのロックダウンにより外装カーテンウォールの入荷が遅れたり、地下の掘削工事で苦労したり、地下鉄接続工事で未確認の埋設物に遭遇したりと、様々な事象が発生しました。そうした中、清水建設はもとより、多くの関係者と一丸となり試行錯誤を繰り返しながらも、創意工夫により一つひとつ課題を解決し、A街区・B-2街区と公共施設工事を共に進めることが出来たことに感謝いたします。
私たちは、お引き渡しを受けた施設が、人々の集う場所となり、多くの方々から愛される街となるよう、新たな息吹を吹き込んでまいります。10年、20年、50年と経過するにつれて、より魅力的な「街」になる様に、引き続き街づくりに邁進してまいります。開業後の「麻布台ヒルズ」を、ぜひ楽しみにしていてください。

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井上 愼介

最高の仲間と創った
日本一の建物 A街区建設所長 井上 愼介

麻布台ヒルズが開業しました。いろいろな想いが募りますが、正直に言って「やっと終わった」というのが一番です。私がこのプロジェクトに携わってから、すでに7年以上の歳月が流れています。
高さや規模はもちろん、デザインの複雑さ、要求品質の高さなど過去に経験したことがない難しい工事でした。それに追い打ちをかけるように、新型コロナの感染防止を図る緊急事態宣言の発令などにより、現場を取り巻く環境が激変し、手探りの対応も続きました。
そのような中でも、愚直に真摯にモノづくりに取り組んでくれた現場の所員、そして作業員の皆さんがいたからこそ、今日の開業を迎えることができたと感謝しています。社内スタッフの皆さんにも、受注前から並走していただき、いろいろな場面で助けていただきました。まさに当社の総合力を発揮したプロジェクトです。このプロジェクトに携わっていただいた全ての皆様に感謝の意を表します。本当にありがとうございました。
私の好きな言葉に「神は細部に宿る」というものがあります。その意味は、こだわり抜いたものこそ美しく、だからこそ妥協せずやり遂げなければならい、と解釈しています。麻布台ヒルズに神を宿したとはおこがましくて言えませんが、ヒルズ誕生の一翼を担ったことは間違いないと思います。
若手の皆さんは、ここでの経験が必ず糧になるので自信をもってください。これだけ厳しい仕事はなかったと思いますが、だからこそ見えてきたものがあるはずですし、それを大事にしてください。
最後になりますが、未熟な私の舵取りについてきてくれた皆さんに、改めて私の気持ちを伝えます。「最高の仲間と日本一の建物を創れて、本当に楽しかった、ありがとう!」。

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飯塚 実

チャレンジこそが
エンジニアの喜び B-2街区建設所長 飯塚 実

建設所長を拝命したのは、新築着工後2年半を経過した2021年4月のことでした。「えっ自分が?」と思ったものの、戸惑いよりこのビックプロジェクトに携わる事が出来る感謝の思いが強かったです。多くの方と出会う、ものづくりの醍醐味を味わう、最後は皆と喜び合う、という期待を胸にプロジェクトを進めてきましたが、すべて期待を上回る結果となりました。
高さ約240mの超高層RC、大深度地下、大空間、曲線形状の鉄骨及び内外装、幹線道路と接しない敷地条件等々、課題を挙げたら切りがなく、しかも難題ばかりでした。お客様、設計はもとより、内・外勤問わず当社の関係部門部署が一体となって課題を一つひとつ解決していくことで、厳しい工期を乗り切り、無事竣工引渡しまで辿り着くことができました。無理難題の解決に一緒になって取り組んでいただいた優秀な協力業者の皆様のおかげでもあります。改めて感謝申し上げます。
建設所員、職長会、作業員全員が、辛く厳しい道のりを誰一人として諦めることなく、笑って乗り切れた(と、勝手に思っていてすみません)ことは、各々の財産になったと思います。また、皆さんは“虎麻”で培った経験を活かし未来を切り開いてください。「チャレンジこそがエンジニアの喜び」。それがよくわかるプロジェクトだったと思います。皆さん一人ひとりがここでの経験を周囲の人に伝えていくことが技術の伝承につながるのです。
施工期間中は、開発組合様にご心配をお掛けすることが数多くありました。都度、寛容なご対応をいただき、感謝申し上げます。ありがとうございました。無事に街びらきの日を迎えることができ、安堵しております。ただ、四季を通じた建物運用を経てから、お客様との本当のお付き合いが始まると思っていますので、今後ともよろしくお願いいたします。そして、皆さんの思いが詰まった建物が、街並が、笑顔あふれる空間に育っていくことを祈念しています。

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上 隆義

細心の注意を払いつつ、
一気呵成に 土木工区所長 上 隆義

ひとつの街を一気呵成に造り上げたという感があります。通常なら、インフラ整備、道路整備、そして建築工事の手順を踏むことになりますが、すべてが同時進行でした。それゆえ、工事間で想定以上の取り合いが発生し、綿密な調整業務に多くの時間を費やしました。多忙な日々が続きましたが、国内最大の再開発プロジェクトに関与できたことはとても光栄であり、末永く愛される、最高級の街づくりに貢献できたと自負しています。
建設時においては、再開発組合様が掲げられた目標「地域に愛される街づくり」を踏まえ、工事に対して地元住民の皆様のご理解が得られるように努めました。常に住民目線で物事を考え、皆様の長年の思いを感じながら、細心の注意を払い、作業一つひとつを慎重に進めてきたつもりでいます。ただ、技術的にも工期的にも難工事であり、日々、関係者が議論し、現場を駆け回り、諸課題の解決に努めてきました。その苦労の分だけ長きにわたり、この街並みが地域の皆様に愛され続けることを願っています。そして、このプロジェクトに関わった工事関係者は、後世まで語り継がれる街づくりに参画したことに誇りをもち、そして自信をもって次なる街づくりに挑んでいただきたいと思います。
愛される街を実感できるのは10年後、20年後になるかもしれませんが、「人と人をつなぐ『広場』のような街」となり、人々が自然と調和しながら、心身ともに健康で豊かに生きることができる街になることを心待ちにしています。

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