分割型PCa覆工システムの施工性を検証

清水建設（株）＜社長 井上和幸＞は本日、山岳トンネルの二次覆工のPCa化推進に向け、（一社）日本建設機械施工協会施工技術総合研究所、（株）IHI建材工業と共同で、シールド工事に用いるセグメントタイプのPCa部材で覆工体を構築する「分割型PCa覆工システム」の施工性の検証に向けた実証実験を実施しました。本システムは国土交通省が推進する「i-Construction」のPCa化に対応するもので、トンネルの新設やリニューアル工事への適用を想定しています。

分割型PCa覆工システムは、馬蹄形の覆工体をシールド工事で実績のあるセグメントを模したPCa部材で構築していく工法です。覆工体1リングは鉄筋コンクリート製PCa部材6ピースで構成します。本システムの実用化を目指し、2019年8月には覆工体が形状を維持して自立すること、2020年7月には覆工体が十分な耐力を備えていることを、実物大の覆工体を用いた実証実験により既に検証しています。

今回の実証実験では、静岡県富士市内にある、（一社）日本建設機械施工協会施工技術総合研究所の実験ヤード内の実寸大の模擬トンネルを使用し、狭隘な作業環境下で施工性を検証しました。具体的には、2車線を想定した幅11.2m・高さ7.1m・内空断面66m²・長さ80mの模擬トンネルを掘削後の地山に見立て、その内側に1リングPCa部材6ピースで構成する覆工体を9リング構築しました。PCa部材1ピースの大きさは、弧長2.8m・幅1.0m・厚さ140mm、重量1.1tです。

施工性については、PCa部材を設置するエレクターと、PCa部材を仮受けして位置調整する形状保持装置を使用して検証しています。いずれも新たに開発した施工機械で、レール上を走行します。組み立て手順は、初めに、エレクターでPCa部材を1ピースずつ把持し所定の位置に配置すると、都度、作業員がシールド工事に用いるセグメント用継手で部材同士を連結します。形状保持装置は連結された部材を1ピースずつ仮受けし、設計通りの馬蹄形を描くように位置調整します。次に、形状保持装置を外しても部材が自重でたわまないように、ボルトを使って部材背面と地山の間のスペースを維持します。今回の実証実験では、平均で1ピースあたり約10分、計60分で覆工体1リングを施工できることを確認しました。なお、実際の施工では、最後に覆工体と地山の間に裏込め材を充填し、構造的に安定させます。

本システムのメリットは、PCa部材の組み立て・接合をシステマチックに行えること、1ピースが小さく運搬・搬入・設置が容易になることから、生産性の大幅な向上が期待されています。本システムを今回の実証実験で使用した模擬トンネルと同規模のトンネルの新設やリニューアル工事に適用した場合、覆工体の構築期間を約7割短縮できます。開発にあたっては、当社がシステムの発案、性能確認、（一社）日本建設機械施工協会施工技術総合研究所が設計指導、（株）IHI建材工業が分割型PCa覆工の設計・製造を担当しました。

当社は今後、分割型PCa覆工システムの提案を積極的に展開し、実案件への早期適用を目指すとともに、引き続き土木工事のPCa化を推進していく考えです。