バイブレータによるコンクリートの充填状況を事前予測

~高密度配筋箇所にもコンクリートを確実に充填~

  • 土木

2016.07.05

清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、型枠内へのコンクリートの充填状況を、バイブレータによる流動挙動評価を踏まえて事前予測する3次元シミュレーションシステムを開発しました。このシステムは2012年に開発した高流動コンクリート充填シミュレーションシステムをバージョンアップし、バイブレータによるコンクリートの流動挙動の評価機能を付加したものです。高密度配筋となる高架橋などの土木構造物を中心に、3次元シミュレーションを行うことにより、最適なコンクリート材料・配合、施工方法などの組合せを施工計画に反映することが可能になります。

阪神大震災以降、耐震基準の改正により、土木構造物の耐久性・耐震性の向上が求められ、配筋の高密度化が進んでいます。一方、高密度化はコンクリートの充填を阻害するので、バイブレータによる締固めをしっかり行う必要があります。未充填が懸念される場合、実大の配筋・型枠を部分的に作製し、バイブレータをかけながら試験施工して充填性を確認しますが、コストと時間を要します。

そこで当社は、試験施工頼りを改めるため、バイブレータによりコンクリートが液状化して鉄筋の間を流動する現象のモデル化に取り組みました。この結果、バイブレータの径や挿入時間によって、コンクリートが流動する範囲が変わり、バイブレータから離れた位置では流動が停止するといったコンクリートの流動特性を反映したモデルを構築し、コンクリートが鉄筋の間を流動しながら型枠の隅々にまで充填されていく状況を再現することに成功しました。さらに、この機能を既開発の高流動コンクリート充填シミュレーションシステムに付加し、コンクリートの充填状況を事前予測できるシミュレーションシステムを完成させました。

システムの使用手順は、まず、実際の型枠の形状と大きさ、鉄筋径や配筋ピッチなどの配筋状況を3次元モデル化します。続いて、打設するコンクリートのスランプ(軟らかさ)などの性状を入力し、型枠へのコンクリートの打込み位置やバイブレータの挿入位置、時間、挿入間隔を任意に設定します。解析結果は動画処理されアウトプットされるので、一目でバイブレータによる締固め効果を確認できます。このシステムにより、コンクリートの材料・配合、打込み箇所、バイブレータの挿入位置・時間を変えながらシミュレーションを重ねることで、コンクリートが確実に充填される施工計画の立案が可能になります。

なお、7月6日から福岡国際会議場で開催される「コンクリートテクノプラザ2016」に本システムの紹介パネルを出展する予定です。

以上

≪参 考≫

高流動コンクリート充填シミュレーションシステム

高流動コンクリートを均一な粘性流体としてとらえ、鉄筋などの障害物によって粘性流体を構成する粒子間に生じる流速分布などから流動・流動停止を判断、未充填箇所を予測します。型枠内でのコンクリートの流動状況をシミュレーションするだけでなく、流動が配筋密度や型枠形状によって阻害される程度を検証し、未充填箇所の発生を予測する流動解析手法です。この解析手法は流体力学で用いられる粒子法をベースに構築したものです。

コンクリートの充填状況

赤:流動するコンクリート青:流動が停止したコンクリート

投入段階では、コンクリートは鉄筋に阻害され左側部分には流入せず未充填となる。
バイブレータをかけた後は、コンクリートは隅々まで流入し充填される。

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