切羽前方の地山性状を高精度に予測

~ロックボルト挿入孔の削孔エネルギーを統計処理して活用~

  • 土木

2016.06.06

清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、山岳トンネル施工の一層の効率化と安全性の向上を目的に、切羽前方30~50m先までの地山性状を三次元で予測・見える化するシステム「山岳トンネル三次元前方予測・探査システム」を開発・実用化しました。このシステムの特徴は、トンネル掘削時に広範囲にわたって打設するロックボルトの全挿入孔の削孔エネルギーデータと切羽の地山性状等をベースに切羽前方の地山性状を予測することです。システムを適用した九州新幹線(西九州)、木場トンネルの現場では、優れた予測性能が確認されています。

山岳トンネルの掘削時には、予め切羽前方の地山性状を予測し、その結果に見合った安全な施工計画を立案します。現状でも、探査目的でロックボルト挿入孔を削孔する油圧削岩機で切羽前方を削孔し、その削孔深度と削孔エネルギーとの関係から切羽前方の地山性状を予測することがありますが、削孔部分の線的な確認に留まります。

そこで当社は、切羽前方の地山性状を三次元で精度高く予測する山岳トンネル三次元前方予測・探査システムを開発しました。このシステムは、削孔深度と削孔エネルギーの関係を自動収集する装置、収集したデータ及び掘削の進行に合わせて明らかになる地質状況とトンネル内径の変形量を蓄積する地山データベース、データを解析して切羽前方の地山性状を予測するソフト等から構成されます。

一般に地質の分布にはある程度の連続性があり、同質の層が三次元的に、かつ規則性をもって分布しています。そこで、このシステムは初めに、この規則性を基にして同量の削孔エネルギーを要した削孔深度を統計的な処理をしながら線で結ぶことで周辺地山の硬軟状況を三次元のコンターにして描き、コンターの連続性を以て切羽前方の地山性状を予測します。次に、油圧削岩機で切羽前方の30~50m先まで探査削孔した際に得られる削孔エネルギーデータと先の予測結果を照合することにより、切羽前方の地山性状を総合判定します。併せて、実際の切羽面に出てくる地質状況や内径変形量から推測したトンネル壁面各部に作用する力の分布状況からも周辺地山の性状を予測し、総合判定に生かします。

このシステムにより、切羽前方の地山性状を広範囲にわたり三次元で精度よく予測できるため、より安全な施工計画の立案が可能になります。例えば、切羽前方の1本の探査削孔で地山が硬いと判断される値が出ても、既施工部で評価されたトンネル周辺の柔らかい層が前方へ続くと判断された場合は、しっかりとした補助工法の提案が可能となります。

以上

≪参 考≫

九州新幹線(西九州) 木場トンネル工事概要

  • 工事場所長崎県大村市三城町~岩松町
  • 発注者(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構 九州新幹線建設局
  • 施 行 者清水・青木あすなろ・菱興 特定建設工事共同企業体
  • 工期平成26年2月28日~平成31年2月27日
  • 工事概要トンネル(延長2,885メートル)
    土路盤(延長179メートル)
    橋りょう(延長20メートル)
    高架橋(延長104メートル)
  • 参 考木場トンネル周辺は、全般にわたり軟質な凝灰角礫岩や安山岩が出現する地山であり、断層破砕帯の出現も想定されたため、地山性状を高精度に把握する必要がありました。山岳トンネル三次元前方予測・探査システムを適用した結果、切羽前方地山の細かな変化状況を捉えて、補助工法のタイムリーな提案が可能になっています。

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