「杭頭絶縁免震」の効果を実地震観測により確認

~従来の杭基礎に比べ加速度を30%低減~

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2014.05.22

清水建設(株)<社長 宮本洋一>は、杭基礎を採用する土木構造物の免震化を目的に、2012年に開発した「杭頭絶縁免震」が実地震に対して構造物の揺れを30%程度低減できることを検証・確認しました。この検証は、千葉大学構内において2012年1月から実施してきたものです。具体的には、14年3月までに観測した107の地震のうち、免震効果が顕著になる概ね震度3以上の地震について構造物モデルに作用した加速度を分析しました。その結果、杭頭絶縁免震モデルでは、応答加速度が概ね30%程度低減されたことが確認されました。

杭頭絶縁免震は、2012年に千葉大学・中井正一教授の指導のもと、当社が開発した免震工法です。特徴は杭頭と構造物の底版を絶縁・分離する、つまり結合しないことであり、従来の杭頭と構造物の底版を一体化(剛結合)する杭基礎とは全く異なります。従来の杭基礎を採用する構造物は、底版と杭頭を一体化しているので、地震力が構造物に直接伝播して構造物が横揺れし、杭頭部分に大きな力がかかります。一方、「杭頭絶縁免震」を採用すれば、構造物に伝播する地震力を大幅に低減できることはもちろん、杭頭部分に作用する力が小さくなるので、杭の断面積と強度も低減できます。また、施工にあたっては、杭頭と底版の複雑な配筋や結合処理が不要になります。こうしたことから、基礎工事費を2/3程度に削減できるとともに工期短縮も可能です。

今回の検証では、実地震に対する免震効果を確認するため、1/10スケールの構造物モデル2体を使って地震時にモデルに作用した加速度を観測・比較しました。2体のモデルはそれぞれ杭頭絶縁免震と杭基礎を模擬したものです。いずれのモデルも構造物の大きさは82cm×82cm×82cm、重量1.3tで、直径10cm×長さ10mの杭4本で支えています。震度3以上を記録した15件の地震に際しては、いずれの場合においても杭頭絶縁免震モデルに作用した加速度は杭基礎モデルに比べて30%程度低減されています。

今後も引続き、千葉大学構内において実地震に対する免震効果のデータ収集を継続するとともに、プラント基礎・地上タンク・橋梁基礎などの実構造物への適用に向けて、本技術の設計手法の確立を目指します。

以上

≪参 考≫

写真は、千葉大学構内に設置した1/10スケールの構造物モデル。
手前から杭頭絶縁免震モデル、直接基礎モデル、杭基礎モデル。
応答加速度の比較は、杭頭絶縁免震モデルと杭基礎モデルを対象に実施。
右のグラフは、2013年9月20日に発生した地震(震源:福島県浜通り、M5.8、千葉大学構内は震度3)に対する免震効果を表す。

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