タフネスコートの本格的な実証実験がスタート

~壊れても崩壊しません!~

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2014.04.08

清水建設(株)<社長 宮本洋一>と三井化学産資(株)<社長 山田昌和>は防衛大学校<大野友則教授、藤掛一典教授>の指導を得て、コンクリート構造物の衝撃に対する抵抗力向上と長寿命化を図る技術「タフネスコート」の本格的な実証実験を開始しました。直近の1年半に及ぶ様々な要素実験により、タフネスコートの衝撃に対する基本性能を確認できたことから本格的な実証実験に着手。その第一弾として、壁式構造物である鉄筋コンクリート製の道路の防護壁に対する車輌の衝突、防波壁・地上タンク防液堤に対する津波漂流物の激突に対する抵抗力の向上効果を検証しました。

タフネスコートの特徴は、コンクリート構造物の表面にポリウレアという樹脂を数mmの厚さで被覆するだけで、構造物の衝撃に対する抵抗力が向上することです。この技術は、抵抗力の向上には耐力補強が不可欠という既成概念を覆すもので、構造物の破壊を許容するものの「粘り強さ(形状)」を維持して抵抗力を向上させる、という全く新しい発想に基づき開発したものです。従来の「壊れず崩壊しない」から「壊れても崩壊しない」に発想を切り替えることにより、耐力補強の1/2程度のコストでコンクリート構造物の抵抗力の向上が図れることは大きなメリットです。

今回の実験に用いた試験体は、実物大の鉄筋コンクリート製防護壁を模擬したもので、高さ100cm、幅60cm、厚さ20cmの壁を基礎に剛結したものです。2種類の試験体を製作し、1種類はタフネスコートを厚さ4mmで被覆し、他方は無被覆とし、衝撃実験により双方の衝撃に対する抵抗力を比較検討しました。

実験では、壁面を水平にして試験体を固定。衝撃力として1tの重錘を異なる高さから壁の中央部に落下させました。最初に1tの重錘を60cmの高さから壁の中央部に落下させ破壊状況を確認。引き続き、5 cmの高さから重錘を繰り返し落下させ、試験体が崩壊するまでの間に加えた衝撃エネルギーを比較しました。落下高さ60cmは40tのトレーラが時速200kmで接触衝突する衝撃力で、道路防護壁の設計荷重の3.5倍に相当し、コンクリート構造物の圧縮破壊後の性状確認のために必要な荷重です。落下高さ5cmは25tのトラックが時速100kmで接触衝突する衝撃力で、道路防護壁の設計荷重に相当します。接触衝突とは、車両が15度の角度で壁に衝突し、20秒間、車両の推進力が作用した状態を意味します。

60cmの高さからの重錘落下実験では、いずれの試験体も、壁のたわみにより圧縮力が加わる壁下面側の根元のコンクリートが破壊して、約14cmの残留変形を記録。無被覆の試験体では根元のコンクリートの剥落が確認されましたが、タフネスコート被覆の試験体ではラッピング効果により剥落が防止されていました。

引き続き実施した重錘落下の繰り返し実験では、無被覆の試験体が3回の重錘落下で鉄筋5本が破断して崩壊したのに対し、タフネスコート被覆の試験体は崩壊までに11回の重錘落下を要し、しかも破断した鉄筋は2本に止まりました。加えた衝撃エネルギーは、それぞれ0.75Mghと1.15Mgh(M:重錘の質量、g:重力加速度、h:落下高さ)となり、タフネスコート被覆により約1.5倍(53%増)になる、つまり衝撃に対する抵抗力が1.5倍になることが判明。これは、タフネスコートのラッピング効果によるもので、圧縮力が加わる部分のコンクリートが破壊後も剥落せずに同じ部位に残り(壊れても崩壊せず)、壁の変形に抵抗することで生じるものと推察されます。

当社は、今回の実証実験により、壁式構造物に対するタフネスコートの適用効果を検証できたと捉えています。例えば、防護壁に適用した場合、自動車の衝突による壁の崩壊やコンクリートの飛散、経年劣化による表層の剥離を防止できる見込みです。引続き、タフネスコートの設計手法の確立に向けたデータ収集、適用用途の拡大に向けた実証実験を継続実施します。

以上

≪参 考≫

1.タフネスコートのラッピング効果比較

タフネスコート無被覆
タフネスコート被覆

重錘落下実験により、タフネスコート無被覆の試験体では圧縮力が作用する側の根元のコンクリートが破壊して剥離。タフネスコート被覆の試験体では剥離が防止された。

2.タフネスコート被覆した試験体の破壊状況

コンクリートに破壊の跡が見られるが、崩壊していない。

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