土壌汚染対策法

土壌汚染対策法とは

土壌汚染対策法とは、土壌汚染による健康被害の防止、土壌汚染の状況を把握することを目的として、平成14年に成立し平成15年に施行された法律です。土壌汚染を引き起こす可能性がある事業所や、大規模な土地での工事等で土壌調査・届出の契機が定められています。

年月日 主な内容、改正内容
2003年2月15日(平成15年) 土壌汚染対策法施行 有害物質使用特定施設廃止時の調査義務
2010年4月1日(平成22年) 改正法施行 3000m²以上の形質変更時の届出義務
2018年4月1日(平成30年) 2回目の改正法一部施行 手続きの迅速化(自主調査結果の活用)
2019年4月1日(平成31年) 2回目の改正法施行 900m²以上の形質変更時の届出義務(調査猶予中の土地、有害物質使用特定施設設置事業所)

調査の契機・フロー

特定有害物質の種類・基準値

土壌汚染対策法では、表に示す物質が「特定有害物質」として指定され、基準値が定められています。

特定有害物質 土壌溶出量基準(㎎/L) 土壌含有量基準(㎎/kg) 地下水基準(㎎/L) 第二溶出量基準(㎎/L)
第一種特定有害物質
(揮発性有機化合物)
クロロエチレン 0.002以下 - 0.002以下 0.02以下
四塩化炭素 0.002以下 - 0.002以下 0.02以下
1,2-ジクロロエタン 0.004以下 - 0.004以下 0.04以下
1,1-ジクロロエチレン 0.1以下 - 0.1以下 1以下
1,2-ジクロロエチレン 0.04以下 - 0.04以下 0.4以下
1,3-ジクロロプロペン 0.002以下 - 0.002以下 0.02以下
ジクロロメタン 0.02以下 - 0.02以下 0.2以下
テトラクロロエチレン 0.01以下 - 0.01以下 0.1以下
トリクロロエチレン 0.01以下 - 0.01以下 0.1以下
1,1,1-トリクロロエタン 1以下 - 1以下 3以下
1,1,2-トリクロロエタン 0.006以下 - 0.006以下 0.06以下
ベンゼン 0.01以下 - 0.01以下 0.1以下
第二種特定有害物質
(重金属類)
カドミウム及びその化合物 0.003以下 45以下 0.003以下 0.09以下
六価クロム化合物 0.05以下 250以下 0.05以下 1.5以下
シアン化合物 検出されないこと 50以下 検出されないこと 1.0以下
水銀及びその化合物 0.0005以下かつ
アルキル水銀が検出されないこと
15以下 0.0005以下かつ
アルキル水銀が検出されないこと
0.005以下かつ
アルキル水銀が検出されないこと
セレン及びその化合物 0.01以下 150以下 0.01以下 0.3以下
鉛及びその化合物 0.01以下 150以下 0.01以下 0.3以下
砒素及びその化合物 0.01以下 150以下 0.01以下 0.3以下
ふっ素及びその化合物 0.8以下 4,000以下 0.8以下 24以下
ほう素及びその化合物 1以下 4,000以下 1以下 30以下
第三種特定有害物質
(農薬等)
シマジン 0.003以下 - 0.003以下 0.03以下
チオベンカルブ 0.02以下 - 0.02以下 0.2以下
チウラム 0.006以下 - 0.006以下 0.06以下
ポリ塩化ビフェニル 検出されないこと - 検出されないこと 0.003以下
有機りん化合物 検出されないこと - 検出されないこと 1以下

調査方法

1 地歴調査(汚染の可能性の調査)

登記簿、空中写真、住宅地図等の一般的に公表されている資料や、土地の使用者が保管している有害物質の使用履歴に関する記録等の私的な資料を調査し、対象地の利用方法の変遷、汚染のおそれを評価します。

2 土壌汚染状況調査(平面範囲の調査)

地歴調査で評価した汚染のおそれに応じて、調査地点を設定します。土壌中から気化するガスや、土壌に有害物質が存在するか調査します。

3 詳細調査(深度方向の調査)

表層で確認された汚染が、深さ方向にどこまで存在するか確認をするために、ボーリングマシンを使用して、深度10mまでの土壌を採取し分析します。必要に応じて、ボーリング孔を利用して地下水を採取します。

区域指定

土壌調査の結果、土壌汚染が確認された場合は、土壌汚染による健康被害が生じるおそれに応じて、都道府県知事から区域が指定されます。指定されると、その区域の種類に応じた対応が求められます。 

1 要措置区域

近隣に飲用井戸が存在する等、土壌汚染によって健康被害が生じるおそれがあると都道府県知事が判断した土地。 健康被害の防止のため、対策工事等の措置が都道府県知事から指示される。

2 形質変更時要届出区域

土壌汚染による健康被害が生じるおそれがないと都道府県知事が判断した土地。措置は指示されないが、形質変更を行う際は、届出が必要となり、工事は汚染を拡散させない方法を選定する必要がある。

措置の種類

汚染が確認された特定有害物質の種類等に応じて、措置の方法は異なります。主な措置の種類は以下の通りです。

直接摂取リスクの観点からの措置(含有量基準超過の場合)

措置の
種類
具体的措置 シミズの対策技術 措置対象物質 油分
揮発性
有機化合物
重金属 農薬等
立入禁止

通常の立入禁止措置

     
舗装 通常の舗装工事で対応      
盛土(覆土) 通常の土工事で対応      
土壌
入れ替え
規制対象区域外
土壌入れ替え
土壌洗浄システム      
規制対象区域内
土壌入れ替え
山留掘削工法      
土壌汚染
の除去
掘削除去 掘削浄化
埋め戻し
土壌洗浄システム      
オンサイト型低温加熱法      
未汚染土
埋め戻し
山留掘削工法      
原位置浄化 ソイルフラッシング      

地下水等の摂取リスクの観点からの措置(溶出量基準超過の場合)

措置の
種類
具体的措置 シミズの対策技術 措置対象物質 油分
揮発性
有機化合物
重金属 農薬等
汚染濃度 (第二溶出量基準との関係) 基準
以下
基準
超過
基準
以下
基準
超過
基準
以下
基準
超過
 
封じ込め 原位置封じ込め 鋼矢板工法  
地中連続壁工法  
遮水工封じ込め 通常の遮水工事で対応  
遮断工封じ込め 地中連続壁工法    
地下水汚染の
拡大の防止
揚水施設
透過性地下水浄化壁
不溶化等 原位置不溶化 表層不溶化法            
深層不溶化法            
不溶化埋め戻し 掘削汚染土壌不溶化法            
土壌汚染
の除去
掘削
除去
掘削浄化
埋め戻し
土壌洗浄システム    
オンサイト型低温加熱法    
バイオパイル        
バイオファーミング        
生石灰混合揮散法          
未汚染土
埋め戻し
山留掘削工法
原位置
浄化
原位置分解法 フェントン処理        
バイオスクリーン処理        
バイオショックロード処理          
バイオバブルクリーン処理        
原位置還元法(鉄粉法)          
原位置抽出法 ハイブリット型エアスパージング法          
高圧洗浄法          
土壌ガス吸引法          
地下水揚水曝気法          
ソイルフラッシング          

△…不溶化または原位置浄化により第二溶出量基準以下にしたものに限る