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清水建設の社寺建築・伝統建築


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市民の憩いの場に伝統建築工法による城郭復元
平成23年度 都公 第4号 駿府公園坤櫓(ひつじさるやぐら)建築工事をご紹介いたします。

静岡市民の悲願でもある駿府城復元工事。

徳川家康築城時のデザインに復元し、後世に残る誇れる品質の建物を建築します。

工事前の城郭跡

伝統木造建築において木材の選定も大切な作業となります。また木材の乾燥には多くの時間が必要なため、設計図を元に素性の良い欠点の少ない木を工期の早い時点で調達します。

木材の選定

荒挽きから最終仕上りの1歩手前の寸法近くまで製材した状態で木材検査を行います。

具体的には乾燥状態・曲り・割れ・傷・節、使用部位によっては木目の流れや美しさまで検査します。

木材検査

木材の準備と並行して設計図を元に伝統木造建築の意匠上重要なポイントである軒廻り等の図を現寸で作図し、設計者に御確認をいただきます。

現寸図は、実際の木材加工においての型板作成に活用されます。

現寸図の作図

静岡まつりでの木曳の様子

木遣り衆を先頭に御用木を建設地まで曳く儀式を執り行いました。

木曳の儀式 2012年4月8日

御堀の中に立つ建物のため計画建物外周に作業用構台を設置します。

後に素屋根を受ける構造体になります。

堀側作業構台の設置

大切な城郭を支える基礎躯体工事です。

公園来場者のご迷惑とならないよう、車両誘導や騒音に気を配りながら作業を行いました。

基礎コンクリートの打設状況

荒壁土つくりの様子

荒壁土とは土壁用の左官材料で粘土質の土に稲藁を50mm~60mmに裁断したものを水で混ぜ合わせ、半年ほど寝かせてつくります。

荒壁土つくりの様子

城郭の柱を受ける礎石を土台固定用のアンカーボルトと共に設置しました。

石の材質は安山岩で山形で採取し、玉石上下を平らに切断加工しました。

礎石の設置


2013.3.6更新

礎石の上に土台を据えた所です。

土台は基礎コンクリートと特注のステンレスアンカーボルトにて緊結されています。

土台に使用されている桧材は太いもので1尺角(約30cm角)もあります。

土台の据付が完了すると、木造軸組の建方となります。

先行して外周ステージ足場をせり上げます。

クレーンにて上部より柱・梁を1本ずつ吊り込み、組立を行います。

柱と梁の接合部には金物を一切使用しない伝統工法による継手仕口を用いています。

三層床松梁組立の様子です。

島根県壱岐産の松丸太を仕上げにしています。

曲がった材を建物の形状に合わせて組むのはとてもむずかしい作業です。

何度も加工場にて仮組をして納まりを確認しました。

木造軸組建方が完了し、建設中の建物を雨風より守る素屋根を架けます。

素屋根架設中は雨養生の為、建物全体をシートにて覆います。

素屋根架設内の屋根小屋組み状況です。

木造軸組建方は約2週間の短期間で行いました。

使用木材の約6割が静岡県内産です。

またすべての木材は国産材というこだわりです。

素屋根外観の状況です。

坤(ひつじさる 江戸時代の方位)の櫓(やぐら)で、二ノ丸南西隅に建っています。

2面が堀に面しているので通常より大変な工事です。

上棟式の様子です。

古式にならい、工匠たちによる曳綱(ひきつな)の儀槌打(つちうち)の儀を執り行いました。


2013.5.29更新

木造建方後、屋根は垂木・軒付を取付して野地板を張ります。

軒裏には当時、耐火目的の為に土が塗られていたので、野地板を張る前に屋根上から土を塗りこみます。

屋根上に載る青銅鋳物製の鯱は駿府城公園内より発掘調査にて発見された鯱を複製します。

今回、新たな試みとして3Dスキャナーにて既存鯱を測定してデータ化、3Dプリンターで鋳物原形を作成しました。

市民現場見学会を開催しました。

普段見ることが出来ない大規模木造建築の施工途中を間近で見ることができ、参加者から感嘆の声が上がっていました。

屋根瓦は美濃(岐阜県)にて製作しました。オーダーメイドで駿府城坤櫓のための形です。

平瓦だけでも約1万4千枚をプレス機で成形後、職人が丁寧に仕上げます。(写真は軒巴)

外部は敵襲より建物を守る為、屋根以外はすべて土壁漆喰塗(防火壁の役割)となります。

木に土を塗る際「くいつき」を良くする為、割竹に藁縄(建造当初のまま)を巻いたものを釘で取付します。

壁は真竹を格子状に組み、藁縄にて結束します。

使用する竹は9月中旬から翌年の節分頃の水を吸い上げない時期に伐採したものが良いとされています。

小舞の固定方法は柱側面に竹穴を彫り、間渡竹(横竹)を差し込み柱にビス留めを行い、固定します。

軒揚裏は垂木を覆い隠すように波形に塗り込みます。

荒土塗後には、現寸図から写し取られたベニヤ現寸型を打ち付けその型を元に塗り進めます。

外壁竹小舞の施工状況です。

竹と竹との隙間は3寸(約9cm)、縦竹は桁や土台に載っていて壁荷重を建物本体に伝えています。

横竹のジョイントは差し込みで、ジョイント位置が重ならないようにしています。

外壁荒土打ちの準備状況です。

昨年7月に作って熟成させた荒土を10cm~20cmの団子状にしたものを何千個と用意します。

外壁荒土打ちの状況です。

鏝(こて)は使用せず、手で用意した荒土団子を竹小舞に塗りつけます。

大変な重労働ですが、隙間なく塗りつけをしないと後々不具合が生じるので気がぬけない作業です。


2013.8.9更新

鬼瓦は比叡山坂本(滋賀県)にて製作しました。

設計者がデザインした文様をひとつずつ手作業で粘土に刻み込みます。

中央に徳川家紋の三つ葉葵が入ります。

この後、乾燥させ焼成し完成します。

屋根瓦の下葺きとして古来に倣い土居葺きを施工します。

杉丸太を斧で手割して、板を作ります。

厚さ1分(約3mm)になるよう割りますが、熟練した職人による作業となります。

屋根土居葺き施工状況です。

長さ8.3寸 巾3.5~5.0寸に割った板を竹釘にて取付します。

葺足が2寸ですので、4枚重ねになります。

近隣小学校の児童が将来へのメッセージを土居葺き板に書いて、その板を屋根に葺くイベントを開催しました。

実際に板を葺く光景を間近で見られたので、児童からは歓声が上がっていました。

建物の床下には三和土(たたき)を施工しました。

現代で言えば土間コンクリートです。

土、消石灰、にがりを混ぜたものを棍棒などで叩き固めます。

三つの材料を混ぜるので「三和土」と書きます。

軒揚裏は垂木を覆い隠すように波形に仕上ます。

何度も塗り重ねて形を整えます。

土塀の荒壁土打ち状況です。

小舞竹に結びつけた藁縄は次に塗る土に塗り込み、壁土の強度を向上させます。

屋根土居葺きの上に縦桟木[瓦桟]を取り付けます。

今回、古来からの土葺きではなく空葺き工法を採用しました。

土葺きは経年劣化により地震に弱いので建物の高寿命化を図る為、地震に強い空葺き工法としました。

屋根上に載る青銅鋳物製の鯱は駿府城公園内より発掘調査にて発見された鯱を複製します。

今回、新たな試みとして3次元スキャナーにて既存鯱を測定してデータ化、3Dプリンターで鋳物原形を作成しました。

写真左が測定データ図、写真右が復元鋳物原形です。

静岡市民まつり開催にあわせて屋根瓦への記帳イベントを開催しました。

静岡市民約400名の方々が思い思いに将来へのメッセージを記入していました。


2013.10.23更新

内部仕上げ前に屋根に瓦を載せます。

屋根に荷重をかけて柱・梁の継手仕口を落ち着かせます。

これを怠ると後に仕上りに狂いが生じてしまいます。

土塀の土壁(つちかべ)斑直し塗り状況です。

小舞竹に結びつけた藁縄をハの字に開き、さらに横縄を入れ塗り込みます。

土塀軒波型土塗り状況です。

波型に切り取られた型板をあてがい、土を塗り重ねて形を整えます。

復元青銅製鯱の鋳型です。

3D計測データを用いてNC加工機にて原形型を製作してます。

その鋳物原形にゴムを塗付け、固まったところで取外しします。

砂型より精巧に原形を写し採れます。

復元青銅製鯱の蝋型(ロウガタ)です。

今回、より精巧に復元するためにロストワックス製法を採用しました。

鋳型に蝋(ロウ)を塗り、固まったものを組立てます。この蝋型を砂型で覆い固め、蝋(ロウ)を溶かした空間に溶かした青銅を流しこみます。

溶解した青銅を鋳型へ流し込んでいるところです。

約1200度の溶解金属を手作業で柄杓(ひしゃく)を使い流し込んでいます。耐火服を着ての作業です。

この後、砂型枠を解体して仕上磨きをして完成となります。

復元青銅製鋳物鯱完成状況です。

口の開いた(阿(ア))、口の閉じた(吽(ウン))で棟の南北1対となります。

一般的に雄が阿、雌が吽となります。

上層屋根瓦葺き完了状況です。

今回、伝統技術を後世に引き継ぐべく、地元の瓦組合のご協力のもと施工いただきました。

近隣小学校のみなさんに課外授業として現場見学会を催しました。

大人になっても、この建物を見るたびに間近で屋根瓦を見た事を思い出してくれることと思います。

第2回市民現場見学会を開催しました。

約450名の抽選にて当選された市民の方々が見学されました。

屋根瓦を間近で見ることは通常無いのでみなさん喜ばれていました。


2014.2.24更新

復元鋳物鯱の完成状況です。

発掘調査にて発見された鯱の目に金の含有が見られたので、目は金箔押し仕上げとしました。

この後、屋根の上へ納めました。

口を閉じた左が雌、開いた右が雄

海草の、つのまたを煮込んでいる状況です。

漆喰は海藻を煮て漉したもの(つのまた糊)と石灰、すさ(麻を細かく裁断したもの)を混ぜて作ります。

現代の漆喰材料は水を混ぜるだけですぐ使用できるように既に調合されていますが、今回、内・外部の仕上げに使用する漆喰はすべて現場にて調合して作りました。

材料を作ることも技術の伝承です。

軒裏波型漆喰塗り状況です。

漆喰の仕上塗りは1面を1日で仕上げないと継ぎ目が出てしまいます。

そうならないために多人数で一気に塗り上げます。

軒裏波型漆喰仕上塗り完了状況です。

入母屋破風 懸魚(イリモヤハフウ ゲギョ)中塗り状況です。

木型に藁縄を巻いた下地へ、凹凸のある文様をいろいろな形の鏝(コテ)を使い土を塗り重ねて、少しずつ形を整形してゆきます。

入母屋破風 懸魚の漆喰上塗仕上げ状況です。

長い時間をかけ、入念に仕上げました。

外部漆喰塗り完了状況です。

第3回市民現場見学会を開催しました。

今後見る事のできない足場上からの建物を大勢の方々に、見学いただきました。

素屋根解体状況です。

建築中は覆われて外部より見ることが出来なかったので、市民の方々が足を止めて、出現した坤櫓に見入っていました。

工事完成状況です。

静岡市のモニュメントとなる後世に残る誇れる建物です。(一般公開は平成26年4月初旬)

担当:社寺建築・住宅部 高山工事長



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